2006年02月26日

ミュンヘン

テーマ:ブログ
 やっと観ました。2月の映画。

 ホテル・ルワンダとどっちにしようか迷ったあげく、まずはミュンヘンから。
 宇宙戦争が自分的にちょっとビミョーだっただけに、こんどは頼むぞ。スピルバーグってな感じで、映画館に突入。

 冒頭、ミュンヘン事件勃発のシーンから。テレビ放送のシーンをうまく使った、緊迫感ある映像展開である。

 ミュンヘン事件とは、1972年9月5日早朝、ミュンヘンオリンピック開催中の西ドイツでおきた、パレスチナゲリラ“ブラック・セプテンバー/黒い九月”によるイスラエル人選手団11人全員死亡の最悪の結末となった人質立てこもり事件である。

 当然だがイスラエルは怒り心頭、機密情報機関“モサド”に犯人グループへの報復“暗殺”を許可する。
 そして、欧州に潜伏する“ブラック・セプテンバー/黒い九月”メンバを暗殺する極秘チームが結成された。メンバはそれぞれ記録を消され"存在しない"人間となって、時間と金がどれだけかかろうが、必ずや任務を遂行するのだ!

 という悲壮感漂う極秘作戦の割には、集められたメンバは…


暗殺チームのリーダー:アヴナー(エリック・バナ)

 トロイのヘクトル王子役といい、矛盾に悩む優等生役が多いね。今回も暗殺チームのリーダーという大役の割には、モサドでのキャリアは(首相の?)警護のみ。手ぬるさを指摘されて逆上し無理な銃撃暗殺計画を実行するなど、ちょっとアブなっかしいぞ。
 でも祖国のためという大義と人殺しという外道のはざ間で悩み苦しむ姿、電話で子供の声を聞いて泣き崩れる姿、逆に狙われる立場になってしまい恐怖にさいなまれる姿、はなかなかどうして応援したくなる。
 殺しを重ねるたびに、凛々しい好青年からどこかくたびれた陰鬱な男に変化していくところも良い演技だと思う。


車輌のスペシャリスト:スティーヴ(ダニエル・クレイグ)

 ニューボンド。どうもこの人は…この映画での役柄、ちょっと横柄な、好戦的なエゴイストが似合うような気がするので、ウェットでクールなボンドを演じるのはどうなんでしょ?
 途中メンバを追って情報屋が確保した隠れ家に到着するも、よりによってパレスチナゲリラグループとダブルブッキングしてしまい、あやうく銃撃戦になりかけるが互いに何とか自重し停戦、仕方なく一緒に一夜を共にするのだが、そのときのラジオチャンネルの取り合いが、ビミョーにチンピラ風のやりとりで笑える。


後処理のスペシャリスト:カール(キアラン・ハインズ)

 洒落た紳士。後処理の場面は前半一回だけ、しかも現場は描かず示唆しただけか?もうちょっとスペシャリストぶりを観たかったのだが…
 暗殺チームのなかでは慎重派で、人間味あふれる言動と立ち振る舞いが印象的。こういう人が早死するんだよね。往々にして。


爆弾のスペシャリスト:ロバート(マチュー・カソヴィッツ)

 あなた監督・脚本家で結構成功してきたでしょ?何でまた役者で出てるの?あ、そうかギャラを自分の映画につっこむためか!
 役柄は味があります。暗殺チームは「銃よりも爆弾で殺す」というテロリスト的信条を掲げているため、毎回仕掛け作りで活躍。ショボーイ爆弾と仕掛けなんだな、これが。でもそれがサスペンスドラマを生み出すのだが。おいおい、暗殺チーム大丈夫か?実は爆弾作りではなくて解体のプロというオチでした。


文書のスペシャリスト:ハンス(ハンス・ジシュラー)

 欧州各国を縦横無尽に闊歩する暗殺チーム、おそらく縁の下でカナリ活躍しているのはこのおっさんでしょう。パスポートをはじめ各種書類の偽装など、この手の活動には必須ですもんね。
 結構肉体派なところもあって、しけた爆弾が作動しないところに業を煮やして手榴弾片手にターゲットが潜伏する部屋に突入、手榴弾爆破を敢行するランボーな一面も。


 というワケで、役柄はちょっとスペシャリストとは程遠い寄せ集めではあるものの、役者は揃って癖のある面々ですな。
 そのほかにも、モサドの執行官:エフライム(ジェフリー・ラッシュ)はいかにも諜報機関の中間管理職、って感じだし、情報提供者:ルイ(マシュー・アマルリック)、パパ:(ミシェル・ロンズデイル)も胡散臭さと闇っぷりがそれっぽい。

 役者のみならず、さりげなくセットが凄いです。70年代欧州の街並みと車、道行く人々のファッションなど完璧。このあたりが世界一金持ちで力もあるオタク、スピルバーグの面目躍如といったところだ。
 かつてプライベート・ライアンで「本物より本物らしいノルマンディー上陸作戦」と上陸作戦に参加した老兵に言わしめたように、細部のディティール、リアリティにこだわり始めたらこの人の右に出るものはいないだろう。

 さて、テロもので、かつイスラエルVs.パレスチナという最もきわどい対立を描いたこの作品、問題にならないわけがないのだが、正直、島国でこの数十年、国対国、民族対民族、宗教対宗教の流血の抗争なんてないこの日本に住んでいる身では、知識としては知っておくべきですが語るにはおこがましいテーマだ。
 祖国がないことなんて、なかったし、存在を世界から非難されたことだって、ないし。彼らの気持ちは自分には永遠に分からないだろう。

 実際、スピルバーグの提示しようとしたテーマも、どっちかというと組織の論理と個人の想い、そのはざ間で葛藤する人間である。

 自分たちが憎む相手が、かつて自分たちがやってきたことと同じ「何年かかっても祖国を手に入れる」と熱く語ったその時、愛する妻に向かって「帰るべき祖国は君だ」と語ったその時、「祖国のために」暴力、殺人の連鎖を続け死人を見るその時、彼の中で「祖国とは何か?自分の祖国はどこか?」という迷いがぐるぐるとまわる…

 ラスト、ニューヨークで妻や子供と暮らすアヴナーに、エフライムが任務復帰の要請に来る。アヴナーは静かに首を振って「今夜うちで夕食を食べないか。遠来の客はもてなす義務がある」と言った。もう自分の祖国はイスラエルではない。妻と子供の待つ家、そこが彼の祖国なのだ。

 テロと報復というアクション・サスペンスと、祖国をテーマにした社会派ドラマ、このバランスどりはスピルバーグならでは。
 自分的にはもう少し葛藤のエピソードを増やしてほしかったけれども、2時間45分ずっと悩みっぱなしじゃ、流石に観ているほうもおかしくなっちゃうよね。
 でもイスラエル選手団の殺戮シーンは何度もリフレインしなくても良かったと思うぞ。ちょっと不自然。何か言いたかったのかな?これで。
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コメント

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5 ■コメントありがとうございました。

コメントありがとうございました。拙文ですがTB遅らせていただきます。
原作となった『標的は11人』も読みました。まだまだ知識不足の感がいたしますが、改めてもう一度観てみたい、そんな思いがいたします。

4 ■yok さんTB&コメント本当に有難うございます

>記事や皆さんのコメント、感慨深く拝読しました。

m(_ _;)m ぺこり
yok さんTB&コメント本当に有難うございます
本当に『報復の連鎖』の怖いところは、次世代に憎しみを伝える所ですよね
困った事です。終わらせるつもりは無いのでしょうね

3 ■ディープな解説

楽しませていただきました!
ああ、そうなのかぁ!と思うところ多々でした。
映画がお好きなんだなぁーと分かる記事ですね。
また遊びに来ますね!

2 ■淡々と

進む上に長いので、ビデオだとかえってキビシーかも知れませんね。
いろんな誘惑に負けそう。
でもメイキングとかは見てみたいですね~

1 ■詳しいレポに脱帽~

観たい観たいと思ってて未だに観ていないミュンヘン。
とても興味深く読ませていただきました☆

見に行くぞー!って言ってる間にビデオ化しそうだな...

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