霧の中には、すべての恐怖と、すべての可能性が潜んでいる。
とてもひさしぶりの休日、愛車のSL55で御殿場に向かった。
低く唸るAMGエンジン、ハイウェイを高速で這う竜のように彼は走る。
車とともに私は運勢が変わる。
いずれ乗り換える時が来るだろうが、今はこの我儘な白いグリフォンに満足している。
行き道から周りの山には低く雲が垂れこめて、
何度も何度も憑かれたように行ったマチュピチュの
渦巻く濃霧を思い出させる。
自然な成り行きで入った林の中のオーベルジュ・ブランシェは
奇しくもフェラーリ・チームのトレーニング時のオフィシャルホテルであった。
富士の恵みで育った食材で作られた、ヘルシーで美しいディッシュたち。
すっかり陽が落ちた帰り道、霧は晴れるどころかますます濃くなり
私に語りかける。
『私はおまえに幻想を見せよう。』
霧のスクリーンには私のタイムライン上にあるすべてが映し出される。
過去、現在、そして未来。
或いは、或いは、また或いは。
「幽玄な景色だねえ」
とパートナーに語りかけられて
はっと私は気付く。
霧が晴れた時、そこには
まぎれもない、私の選択した数秒先の未来が現れるのだ。
★オーベルジュ
西洋料理を中心に食にこだわった、レストラン機能を伴う宿泊施設。




















