ナンドとダイドコは「ケ」の空間で日常生活を過ごす場でした。それに対し、ニワ、オモテは「ハレ」の空間で、冠婚葬祭を行う非日常の特別な時間を過ごす場所だったのです。冠婚葬祭とは、冠は成人式、婚は結婚式、葬はお葬式、祭は先祖を敬う祭式であり、多くの人が集まることが多いので、続き間の襖を外して部屋を広く使用しました。古民家は非常に可変性に富んだ住まいです。また来客へのおもてなしの場としても「ハレ」の空間を大切にしました。オモテにある玄関は武士などの目上の人が来られた時に使うものであり、家人が日常的にオモテの玄関を使うことはありませんでした。家人が日常的に出入りしたのはダイドコにある出入り口、勝手口を使いました。



おもてなしの文化は日本人の心に染み付いているものであり、毎日を慎ましやかに過ごし、「ハレ」の日を人生の節目として大切にしてきました。おもてなしの心と「ハレ」の日が最近薄れてきてきた気がしています。時代の流れとともに個人主義が浸透し人と人のつながりも希薄になってきている気もします。私は古民家とともにせめてこの考え方だけでも若い人に知ってもらいたいと思います。