中国語で本を読むよ!

中国語の本を気の向くままに読んでます。


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『卡子』(チャーズ)読み終わりました。

昨日の中国語原書会でも紹介させていただきました。(Ayumiさんのブログ

  

 

この本を読もうと思ったきっかけは、神保町の亜東書店のベストセラーコーナーに新聞の書評を添えて強くおすすめされていたからです。

中国で終戦を迎えた日本人の話は、「大地の子」や「あの戦争から遠く離れて 」「流転の王妃・最後の皇弟」など本やドラマ、また画家香月泰男のシベリア抑留の話しなどで何度か触れたことがあるものの、長春包囲戦を経験した日本人の話は初めて。

(著者は後に山崎豊子「大地の子」を盗作として訴えたが敗訴)

 

長くなりますがあらすじをざっと・・メモ

 

著者は遠藤誉と言う日本人です。

満州の製薬会社の社長のお嬢様として生まれました。

父親は心底誠実な人物で日本人はもちろん、従業員の朝鮮人や中国人に父と呼ばれるほど尊敬され慕われていました。

そんな家に生まれた著者、7歳の時に終戦を迎えます。

終戦の少し前から新京(長春)にはロシア兵が度々やってきては重機や薬品、金目の物を強奪していきます。

終戦後は一時人民解放軍に占拠されましたが、すぐに撤退しかわりに国民党軍の支配下になります。

この時期に著者は国民党軍と人民解放軍の市街戦による流れ弾で負傷します。

この間、2回ほど日本に帰国する許可がおりたのですが、薬が必要な政府に保留されたり、家族のうちに伝染病患者が出たりして移動が禁止されてしまいました。

 

終戦から2年後、毛沢東の命令により林彪率いる人民解放軍が長春をバリケードで囲い包囲戦が始まりました。

中に住んでいる日本人はもちろん自国の国民である中国人までも。

ある日突然予告もなしに電気、ガス、水、一切止められ、食料も流通が止まってしまいます。

産まれたばかりの弟も叔父も叔父の子供も餓死。街には餓死者の死体があちこちに。

犬は死体や弱った子供を食べる・・・とうとう市場に人肉市まで出たという噂が。

そこに「人民解放軍は国家に役にたつ技術者は包囲網の外に出す」という話があり、父親は家族と従業員をつれて外に出る決心をします。

封鎖されたバリケードの外に出たら解放区なのだ!と外に出たのですが、そこはまだ解放区ではありませんでした。

なんとその外側にもうひとつ人民解放軍のバリケードがあり、彼らの許可を得た人だけが本当の解放区へ出る許可がおりるのです。

バリケードとバリケードの間の真空地帯。

そこがまさに「卡子」でした。

人民解放軍のバリケードはめったに開かれず、出られる人もほんのひと握り。

 

見渡す限りの餓死者。壁の脇には死体で山ができている。

餓死者の死体の腹は膨らみポンポンと音を出しながらはじけ、内臓が飛び散り、虫がわき・・

赤ん坊は死んだ母親の血をすすり、雨が降れば死体が現れ見開いたままの目が光る・・

ホラー小説のような凄惨さです。でもこれは事実。

死体の上に布団を敷き寝るのですが、夜中になるとまだ息があるのか、それとも苦しんで死んだ無念の声なき声なのか、うめき声の合唱が地の底から湧いて渦巻くように卡子中に響きます。

眠れない著者。その声を聞き、動く死体の手を見たときに、心がシャットダウンしてしまいます。

この後、出ることができ、延吉へ落ち着きますが、著者の心は閉じたまま。

負傷した傷から結核菌が入り、食料もなく餓死寸前の状態で。

話すこともできず、記憶もなく、常に光の中でぼんやりと過ごします。

そのうちに朝鮮戦争が勃発し、そこへ社長をずっと探していた支店の部下と連絡がとれ天津へ移動します。

 

天津の駅に着いた時、そこは別世界でした。

呆然とする餓死寸前の著者たち。

ネオンきらめくクリスマスツリー、きれいに着飾ってお化粧をし、香水の香り漂う美しい女性たち、高級ホテルの部屋、招待されたレストラン。

ボロ切れをまとった著者は、ツリーのネオンを見てようやく現実に戻ってきます。

レストランの水洗トイレで水が流れるのを見て、終戦前の自分の家を思い出し、号泣しながら何度も何度もトイレの水を流して本当に自分たちが解放されたことを感じるのです。

(この後、天津生活でも色々あり日本に戻るところまで。そこは割愛します)

 

読んでいて息ができないくらいの衝撃シーン(しかも本当にあったこと)の連続で、軽々しく感想を述べる事ができません。

事実を知ること。それだけでいいような気がします。

 

長春包囲戦で亡くなった人は33万人。(資料によって人数に変動あり)

罪のない自国の人民を無碍に餓死させてしまったこの内戦は、天安門事件と並びいまだ大陸では語ってはならない出来事になっています。

この本の中訳版は、大陸ではやはり出版できず台湾で出版されました。

 

著者が延吉にいる時に朝鮮戦争が起こり、学校で「反対日本武装!」の歌を毎日のように歌わせられた時の心の叫びが胸を打ちました。

 

“民族是什么?根据什么区分日本人和中国人的呢?日本人是什么样的民族?为什么日本民族发动了侵略战争?为什么要签订「日・美安保条约」这样的军事合约呢?为什么日本要为朝鲜战争生产武器?日本的一个个行动成了一件凶器,对身处异国他乡的女孩,在身体,心灵上都造成了深深的伤害,这一点,日本,你知道吗?”

 

著者が卡子の夢にうなされなくなったのは、この本を書いてからだそうです。

凄惨な場面をあますことなく書ききり、封印された記憶が開放されたのかもしれません。

 

中国語の文章としては、とても歯切れがよく繁体字ではあるものの読みやすかったです。

小説ではありませんが、自然描写や心象風景の表現が絵が浮かぶような鮮やかな表現で美しく、何度か読み返した部分もありました。

この中国語を著者本人が書いたのか翻訳者がいたのかちょっと今調べ中です。

 

遠藤誉さんは、物理学者でもあり、数々の日中関係の団体の顧問などをしており、テレビでもちょこちょこ見かけます。かなり熱い論客でもあります。メラメラ著書も多数。

これから気をつけてみようと思います。

 

 

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