安保法制の捉え方様々 | 悠釣亭のつぶやき

安保法制の捉え方様々

この17日にも参議院で採決が行われようとしている
安保法制であるが、その捉え方は人様々である。
議論の争点を整理してみた。



先ず、この法案を最も忌避する人達は、この法案が
そもそも憲法違反であって、議論に値しない物である
という事。
現憲法は個別的自衛権は認めていると思えるが、集団的
自衛権は明らかに憲法を逸脱しているというもの。
従って、どうしても法案を通そうとするなら、その前に
憲法を改定すべしという。
憲法を変える事を善しとしない人達も多い。


また、存立危機事態って何じゃ、という議論もある。
確かに定義が非常に曖昧で、石油か来なけりゃ存立が
脅かされるから、シーレーンの防衛に携わる米軍等への
支援は当然とするのは如何にもやり過ぎだろう。


戦闘地域から逃げてくる人達が乗った米艦船を防護
するのが何故存立危機なんかも分かり難い。
100人や1,000人死んだとて、国家の存立は
危機ではなかろう。
むしろ、東京にミサイルが1発落ちる方が大きな危機
と言えるかもしれない。


現に戦闘が行われていなけりゃ、軍隊への後方支援
(兵站だわな)を無制限に行える必要がどこにあるん
じゃろう。
武器弾薬はもちろん、必要なら核も運んで良い事に
なっているからねぇ。



この法案を通そうとする人達は、安全保障環境の激変を
言う。
北朝鮮のミサイルや中国の軍拡で、日本国が危機に瀕して
いると説く。
しかし、この法案が通ったからといって、その脅威が
軽減されるとは全く思えない。
北のミサイルは相変わらず飛んでくる恐れはあり、中国の
南沙諸島侵食は相変わらず進むだろう。
やるとなれば、尖閣を犯すことも辞さないだろう。


アメリカの軍事力の庇護の下で、日本の防衛を強化する
のは、今までの安保条約で十分ではないと言うのか。
米軍と一体となって、軍事力で、血で購わねば、同盟が
強化できないと言いたいのか。


抑止力を言う人も居るが、確かにアメリカとの同盟強化は
抑止力を向上する事も有ろうけど、逆に、アメリカの
友達は敵と考える勢力からは明らかに敵対されるし、
敵意が増す事になるだろう。
今までは、ほとんど中立と思われていたとしても。



要するに、安保条約だけでは心許ないということなんだな。
それなら、安保条約をもっと強化する方法は他にいくら
でも有ると思う。
今だって、後方支援はやる事になってるし、合同軍事演習
だってやってるんだからな。


どうしても不安と言うのなら、どこがどのように不安で
何が足りないのかを、もっと細分化して棚卸すべきと
いうだけの話ではないのか。
いきなり、世界のどの紛争地域ででも、友軍が困ってりゃ
助けに行くって言うのは、明らかにやり過ぎ。



確かに、国連の主導するPKOなどは国家としての義務
的な要素も多いから、多少危険でも、参加を模索すべき
だろう。
しかし、支援の仕方は多岐にわたるのであって、後方の
医療支援や戦後復興や難民支援などには積極的に関わる
べきと思う。
自分の身を守る時にのみ武器を使用するのは止むを得ない
のかも知れない。


普通の国家論というのもあったな。
日本は普通じゃないって言う事なんやろが、軍隊を派遣
して、敵と戦かったり、その軍を支援したりするのが
普通の国家って言いたいのん。
もしそうなら、普通の国家なんてもんにはならなくっても
結構だな。
どこにも加担しない、平和のみを追求する、必要なら
双方の仲立ちも辞さない、困っている国は徹底的に
支援するのが異常な国なら、是非とも異常な国になりたい。



何よりもこの法案の意図が不明確なんだな。
だから、双方が様々に、拡大解釈して、世界の隅々まで
戦争に行くだとか、戦争法案だとか、果ては徴兵制度
なんて、滑稽な議論にまで発展する。
何故この法案が必要なのかが全く説明できてない。



一言で言えば、日本国の政治って、国家観が無いんだな。
日本国は世界にあって、どんな国であるべきなんだ。
今は憲法前文がそうなんだろうが、それを死守すりゃ
国家が存続出来るのかを議論すべき時だ。


理想の国を達成するためには何が必要なんだ。
考えられる有事って、一体どんなものが有るんだ。
そのための抑止力や防衛力はどうあるべきなんだ。
今の憲法や法案では何が不足なんだ。


大元の議論が全く無くて、いきなり安保法制が必須です
って言われても、それって憲法に違反してるでしょとか、
そこまでやる必要がどこにあるん?って事になっちまう。


専守防衛だけでは国を守れないって?
米軍との共同が必要だって?
邦人救助が必要だって?
個々の事象を取れば、そんな場合はあるんでしょうよ。
でも、徹底的な外交努力をしたり、じっと我慢して
やり過ごしたり、敵対国の経済の中枢を握ったり、
必要なら、スタンドオフの報復手段を密かに準備したり、
いくらでもやれる事がある。



今やるべきは、小手先の安保法制を作る事ではなくて、
国家観を形成する議論を深める事ではないのかと、
バカ騒ぎの中で強く感じる。