患者の3割は医療従事者にうそをついたことがある--。病院検索サイトを運営する「QLife」(東京都)のアンケート調査で、こんな結果が出た。同社は今年1~2月、インターネットで医療者と患者のコミュニケーションについて調査し、サイト会員など1074人(平均44・2歳)から回答を得た。その結果、「医師や看護師にうそをついたことがあるか」との問いに対し、全体の28%が「ある」と回答。男女別では男性22%、女性34%だった。

 野呂幾久子・東京慈恵会医科大准教授(医療コミュニケーション)は「症状などを言わないでおくことも広い意味でうそに含めれば、割合はもっと増えるのではないか」と推測する。

 調査で明らかになった「うそ」の内容を分類すると、多い順に▽症状(実際よりも重く言う/軽く言う)24%▽服薬状況24%▽生活習慣12%▽数値(体重・体温など)10%▽原因6%▽医療機関の重複受診5%と続く。また、うその理由は、医療費抑制など目的がはっきりした積極的なものと、医療従事者との関係から成り行きで生じた消極的なものに大別された。

 例えば、前者は「薬代が負担になり、良くなっているとうそをついた」(40代女性)▽「翌日の仕事のため」(痛みの程度を軽いと言った50代男性)など。後者は「体重管理ができないと怒られると思った」(体重を過少申告した40代女性)▽「看護師に良く見せたかった」(喫煙を隠した40代男性)などだ。

 野呂准教授は、こうした行為がもたらす弊害を2点指摘する。一つは適切な治療を受けられずに健康に悪影響が生じたり、治療効果が上がらない可能性。もう一つは医療者との関係がこじれ、再検査などで現場の多忙化につながる点だ。そのうえで「正確な診断、適切な治療のためには患者からの正確な情報提供が不可欠。患者も医療に主体的に参加するという意識を強く持つことが必要だ」と説く。

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 うそを減らす鍵は医療従事者と患者の信頼関係にある。幸い、医学教育や医療現場では医師のコミュニケーション能力を重視する機運が高まっている。代表的な例は「問診」に代わり、「医療面接」という言葉が使用され始めた点だ。

 問診は一問一答方式で医師が欲しい情報を得ることが主目的なのに対し、医療面接はそれに加えて患者との信頼関係を重視しながら必要な情報を聞き出し、診断につなげる意図がある。野呂准教授は「多くの患者がまだ医師に『質問しにくい』と感じており、患者がうそをつく背景もこの点にある。医師は批判的に聞こえる言い方を避け、患者の話をよく聞き、それを態度で示すことが重要」と話す。

 一方、「熟練の医師の多くは(患者のうそを)分かっているはずだ」と指摘するのは、医療や法律で専門家と非専門家のコミュニケーションを研究する石崎雅人・東京大教授だ。実際、調査ではうそをついた後のいきさつについても尋ね、12%が「ばれた」と答えた。結果的に「薬代が高くついた」「調子が悪くなった」などの声もあった。

 石崎教授は、うその影響が深刻なものとそうでないものに分けたうえで、「うそも含めて、患者の発言を正面から受け止めるべきだ。影響が深刻でないものであれば見逃し、医師がうまく対処することで信頼関係を築くための材料にもなる」と語る。

 ただ、服薬状況を正確に伝えないと、薬の飲みあわせによって、けいれんや不整脈など、深刻な悪影響が生じる場合もある。石崎教授はこうした問題については「影響が深刻な事例はまとめて患者に周知させることが必要だ」と提言する。【八田浩輔】

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