2011年09月04日

「ナイフ」 重松 清

テーマ:重松 清


You Can Fly-ナイフ


「ナイフ」 重松 清


「ワニとハブとひょうたん池で」
中二で突然クラス全員からハブ(村八分の略)られたミキ。原因は判らないが、サエコが画策してクラスをまとめ上げ、それは突然始まった。
ちょうどその頃、家の近所のひょうたん池にワニが居るという騒動が起きていた。延々と続くイジメ。

ある日この事が教師の耳に入った。ミキは何も言っていないが誰かがチクったのだ。更に責められるミキ。
その夜、ワニが居るという池に立ち寄り、ワニにエサを投げているおばさんに出会う。亭主の爪や毛を混ぜ込んだ肉で味を覚えさせて、いつかワニに亭主を食ってもらうのだという。亭主は浮気をしているのだと言う。
延々と続くハブの末に、例の密告をした者が判った(ホナミ)。


ナイフ
中学二年の真司。両親は学校でのイジメの形跡を見つけるが父親は詳細を知ろうとする妻を止める。父親も背が低く多少のコンプレックスを持ちながら中学時代を過ごした過去があった。
心配のあまり担任教師に相談に行った妻は、逆に部活で下級生にシゴきを入れる真司の行動を告げられる。
会社の帰りに露店で買った貧弱な折り畳み式のサバイバル・ナイフ。
ナイフをポケットに仕込んでいるだけで微妙に意識を強く持てる自分を感じる。
真司は駅前でたむろするバイクの不良グループからも脅迫を受けていた。その連中が真司を暴行した話を聞いてしまう。彼らに向かって行く父親。ポケットのナイフを握り、精一杯立ち向かうが、軽くいなされてしまう。去って行く不良たち。
家に戻り真司に「自分が守ってやる」と宣言し、これを持って学校に付いて行くと言ってナイフの刃を出そうとするが、自分の指を傷つけてしまう。
少しの間笑った後、声を上げて泣く真司。


キャッチボール日和
高校野球のチームメイト。お互い就職、結婚の後偶然公団住宅の住人として再会。その当時彼らを熱狂させた早実の荒木大輔。息子が出来たら大輔と名付けると言われて生まれて来た小川大輔、方やもう一方は娘の内藤好美。
好美の父はその後亡くなるが、大輔の家族とは交流が続いた。
そして好美が中三の夏。二学期が始まってから大輔の不登校が始まる。大輔はクラスメイトから辛らつなイジメを受けていた。幼なじみの好美は関わる恐ろしさから傍観者の位置付け。イジメを認めたくない大輔の父。
大輔の父は好美の父親的存在であり、幼少の頃はキャッチボールなどをして遊んでもらっていた。方や運動神経のまるでない大輔。
9月の末に大輔の父が息子を連れて学校に乗り込む。前夜にクラスメイトのだれかがいたずら電話をしていた。犯人をつるし上げようとする父親。

限界に達する大輔。
「やめて、おじさん!」と好美が叫んだ瞬間、大輔は嘔吐する。

呆然とする父親。
結局大輔は祖父母の家がある長野へ転校する事になった。
転校最後の日、好美は大輔親子のために粋なはからいをする。


エビス君
小六の相原ひろし少年。妹が重病になり、病院へ見舞いの毎日。そんな夏休み明けの二学期に戎(えびす)君が転校して来る。
先生から仲良くするようにと頼まれて関わろうとするが、それを逆手に取られてしつこいいじめを受ける様になる。体格の良いエビス君。
相原はクラスでも「ガンジー」と呼ばれるほど争いの嫌いな子供であり、相当ないじめを受けても我慢していた。それを見て歯がゆく思う浜ちゃん。
毎日妹の見舞いに行くひろし。話のネタにエビス君の話をする。エベっさんは縁起がいいという話から、いつか会わせてやると安請け合いしてしまう。
その後も延々と続くエビス君のイジメ。
妹の容態が悪化し、妹はエビス君に会いたいとうわごとの様に言う。
翌日の朝、クラスの女子から、日頃のふがいなさについてつるし上げられ、その時のトラブルで学校を飛び出すひろし。エビス君に見つかり追いかけられ、もみ合ううちに絶妙のカウンターパンチがエビス君の顔面に。
学校に戻れずとぼとぼ歩くひろしの後を付いて歩くエビス君。
ひろしは全てを話す。自分の事を「哀れやなあ」と自虐するひろしにエビス君のビンタ。
さっさと歩き出すエビス君「道、どう行くんだよ。教えろよ」。


ビタースィート・ホーム
子供二人を持つ家族。長女の奈帆は小四。担任の女性教師は指導熱心で、生徒の日記を提出させて添削する毎日。奈帆の書く日記の内容があった事の羅列のみのため、教師は毎回それを指摘し、母親のストレスが溜まっていた。母親も教師だったが、子育てのために退職した経緯があった。
教師は給食を食べられない子供にも厳しくしつけをしていた。同級の母親たちから情報を集めて抗議の準備をする母親。
ある日、給食の時間におかずを無理に食べさせられていた女子が倒れる事件が起きる。
結局教師は退職することになりそう。
奈帆の日記の原因はクラスで流行している「白魔術」だった(願いが叶うまで本当の気持ちを字に書いてはいけない)。



彼の本をまず最初に読んだのがこれだった。
実は、すごく印象が強くて彼の小説を続けて読むきっかけになった筈なんだけど、悲しいかなその内容をほとんど忘れていた。
今回、久しぶりにダンボール箱から引張り出して再読した。
一言で括ればテーマは「いじめ」。1990年代から表面化し始めたこの現象について、徹底した当事者目線でていねいに追っていく。自分自身もかつて被害者側だったり、加害者側だったりしたエピソードをフッと思い出しては少しハートがつねられる様な感じ。
特に印象が強かったのが「エビスくん」。
転校して来た者にやさしくしようと思ったら、ドツボにはまってイジメの標的にされてしまう。子供というのはいつの世も残酷なもの。
ただ、ひろしの病気の妹の願いを叶えるために一肌脱ぐエビスくんが一瞬輝く。


圧倒的な読みやすさが彼の強みなのか弱みなのか…まあいいか。


AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)
2005年10月16日

「見張り塔から ずっと」

テーマ:重松 清

mihari

三編の、夫婦を扱った中編集。


「カラス」
バブル終期にニュータウンのマンションを買った男。バブルがはじけ、価値が急落したタウン。微妙な後悔の中で疲労している。そんなところへ格安の価格で入居して来た若い家族。カラス被害を契機にその家族に対する陰湿なイジメが始まり、自治会運営の中で妻がその流れに乗ってしまう。


「扉を開けて」
子供のいない夫婦。体が弱く、やっと授かった息子「健太」を1歳の時に亡くし、それから6年。近所に越してきた家族の子供「健太」に神経をすり減らす妻。


「陽だまりの猫」
高校生の時から「伸雄」さんとつきあっていた「みどり」さん。卒業間際に妊娠してしまい、伸雄さんは結婚を決心。だが入籍の3日後に流産。
以来「みどり」さんのちょっと悲しい結婚生活が続く。


三者三様の夫婦。表面上はごく普通の家族だが、その裏には深刻な影がさしている。一見ほのぼの、実はコワいという「陽だまりの猫」が一番印象に残った。

あっけないぐらい読み易くて、後に何も残らないんじゃないかという気さえする文体。でもけっこう反芻出来る懐の深さがある。


AD
いいね!した人  |  コメント(6)  |  リブログ(0)
2005年10月10日

「半パン・デイズ」

テーマ:重松 清

hanpan


東京から、父のふるさとである瀬戸内海沿岸の街に引っ越して来たぼく(ヒロシ)の小学1年から6年までの暮らしを描いたもの。
自分も小2で引越しを経験しているので、この作者が言っている「一人の少年が、よそ者として移り住んだ街をふるさとにしていく物語」という部分にそのまま共感してしまい、かなり厚い本だったが一気に読んでしまった。


「ぼく」という1人称で書かれており知識・情報水準はその時期のものだが、思考・文章表現はオトナのもの。読んでいて時々違和感を感じたが、少年時代を振り返るものを書く場合、思考まで当時に合わせていたら「児童書」になってしまうし、これはもう、どうしようもない。多分作者はそこまで見切った上で意識してそうしているのだろう。


万引きの話、女友達の話。それに何より、よそ者がそこに溶け込むためのハードルの越え方。自分にも思い返せば「ギャッ」と叫びたくなる様なエピソードはヤマほどある。確かにそいつらを集めれば誰でも一冊の小説は書ける、そんな気にさせる本。でもこんなにはウマく書けんよなー。


AD
いいね!した人  |  コメント(2)  |  リブログ(0)
2005年10月09日

「定年ゴジラ」

テーマ:重松 清

teinen


開発から30年経った「くぬぎ台ニュータウン」。そこで定年を迎えた山崎さん。

ニュータウンでは開発時期に応じて丁目単位で年代差が歴然とあり、そんな中で山崎さんは3人の定年仲間と知り合う。

何のことはない。定年でやることがなくなったじいさんどもの日々が、ただ綴られるだけ。とは言うものの、読み進むうちにじわり、じわりと締め付けて来るものがある。

多少の差はあれ、いずれこういう生活がやってくるという意識で読むと、その中味はガラリと変わる。それに時折描かれる山崎さんの思い出。特にこたえたのが、就職してから母親が訪ねてくるくだりと、そこにからむ同級生の話。

何気なさの中にグサッとくるのは、彼独特のもの。気がつかない者は、多分どの作品を読んでも「つまんない」。


いろんなエピソードの中で、自分が反応するのは全てではないだろう。ただそこにシンクロした時、少しこみあげてくるものがある。号泣とまでは行かないが、ついホロリ。

一気に読むのではなく、まあ週1で15分ぐらい読み進むのがいいかも(実際「小説現代」で連載されていたものらしいし)。

この前「BOOK-OFF」に行ったら、これのマンガ本 が置いてあった。女流作家のものだったが、さすがに「目が点」。活字がニガテな方はこっちでも、まあいいか。




いいね!した人  |  コメント(6)  |  リブログ(0)
2005年10月01日

「舞姫通信」 重松 清

テーマ:重松 清

maihime maihime


ある女子高校に赴任した宏海。そこでは「舞姫通信」というチラシが時折全校生徒に配られるのだった。「舞姫」は10年前に学校で飛び降り自殺した女子高生のことを指し、毎年その学校の生徒が順に通信を受け継いでいるもの。
彼には双子の兄「陸男」がいたが、5年前に自殺。リクオの恋人だった佐智子はその事実を今も引きずっている。
佐智子の仕掛けた「自殺志願」の青年を巡って、自殺というキーワードで生と死に関する様々な話が展開していく。


重松清が本格的な小説として書いた最初のもの。かなりのエピソードが詰め込まれて、サラッと読める割りにはやや「消化」が悪い感じがする。もう少し整理して長さも7割程度にした方が良かったか。
フリーライター時代に「岡田有希子(十数年前に自殺したアイドル歌手)」の本をだした事もある彼が、自殺を巡って何を思ったか。
言いたいテーマは「残された者」の想い、かな?。2回ぐらい読まないとその想いに同化し難いかも知れない。



いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。