2017年06月19日

新聞小説 「国宝」(5) 吉田 修一

テーマ:本・国内

新聞小説 「国宝」(5) 吉田 修一    4/14(101)~5/9(125)

作:吉田 修一  画:束 芋
              (1) (2) (3) (4)

 

第五章 スタア誕生 1~25
二人道成寺の舞台準備をする俊介と喜久雄。俊介は花井半弥、喜久雄は花井東一郎の芸名をもらっている。
徳次が北海道に旅立ってから既に四年の歳月が経っており、喜久雄は結局半二郎の部屋子となっていた。

 

 

初舞台の記憶を鮮明に覚えている喜久雄。御曹司だった俊介の初舞台は四歳の時であり、この初舞台の恍惚感は自分だけのものだ、と素直に思う。

 

高校に入学した喜久雄だったが、通ううちにその背中の彫り物が問題となり、保護者の間から排斥運動が起こされた。稽古の量が増えるなら学校辞めてもええわ、とあっさり退学した喜久雄。

 

時は関西歌舞伎低迷の頃、俊介や喜久雄に役など回って来ない。そんな状況で半二郎が始めた地方巡業。それが今回の「二人道成寺」。場所は四国琴平の芝居小屋。
今回の巡業には立花組の辻村が援助していた。
源吉に促されて舞台に出て踊る二人。だが客席はガラガラ。当時の歌舞伎巡業は厳しいものだった。

 

楽屋で化粧を落としている喜久雄と俊介の前に現れた恰幅のいい男。半二郎があわてて「梅木社長」と声をかける。今回の歌舞伎を仕切っている興業会社「三友」の社長。二人の出来を見て満足している。
なんでも早稲田教授で劇作家の藤川先生が二人の道成寺を観て絶賛していたという。特に東一郎には芸品があると。
目を逸らした入り口に立っている若い男が冷笑しているのを見て、腹を立てた喜久雄が声をかける。それは梅木が連れて来た竹野。映画を担当したくて入社したのに、退屈な歌舞伎担当に回されてやる気をなくしているという。
梅木が、竹野が言っていた歌舞伎の悪口を面白く話して、嫌な空気が流れる。

その流れで梅木が、この道成寺を京都の南座でかけてみようと言い出した。話を続けながら部屋の外に出る半二郎と梅木。
その話を聞きつけて感極まる源吉。だがそこに冷ややかな視線の竹野。
竹野を楽屋から押し出そうとする喜久雄に、ただの世襲の世界、最後に悔しい思いをするのはお前だ、と言う竹野。
もともとヤクザの息子、女形の姿のままで竹野を蹴りつける喜久雄。まさに狂乱の二人道成寺。

 

西回りの地方巡業も中国、四国の各県を回り、その後九州に入って連日の移動。いよいよ博多での最終公演で終了となる。半二郎が喜久雄を呼び、次の三連休で里帰りしてはどうか、と持ち掛けた。
そうさせてもらいます、と言う喜久雄に、母親のマツから送られて来る仕送りはもう不要だという事を、今度の南座での事も含めて話して来いと指示。

 

実家に帰って来た喜久雄の姿を見て慌てるマツ。だがそこに「おマツさん、おマツさん」という声。玄関わきの女中部屋に押し込められる喜久雄。状況が次第に判って来た。
屋敷も抵当に取られ、そこの住み込み女中として働いているマツ。熱いものがこみ上げて来る喜久雄。

 

半二郎の稽古を受けている喜久雄。一段落してから半二郎に実家での様子を聞かれた。長崎でのつらい立場のマツを思い出して肩を落とす喜久雄に、半二郎が通帳を差し出す。二百万近い額が入っている。毎月マツが仕送りしていた金を全て貯金していたのだ。好きに使うたらええ、と言う半二郎。

 

京都南座の「二人道成寺」の初舞台。前評判ではまだ大舞台で芯を勤めるのは早いと言われていたが、例の劇作家の藤川がNHKの番組で「スタア誕生の瞬間を観たければ南座へ」と言った事から人気に火が付き、チケットが売れた。

 

南座での二人道成寺は予想以上の成功を収めた。グループサウンズを引きあいにした嫌味でさえ、そのファンだった女の子たちの目を東一郎、半弥に向けさせた。
どんどん注目を受ける二人。浮かれる俊介は毎夜祇園通い。だが喜久雄は早く一流になりたいという考え。そのちょっとした違いが、二人を大きく分けた。

 

京都南座での公演が終わると、梅木の一声で次の大阪中座での公演内容を変え、東一郎と半弥の二人道成寺を再びかける事となった。公演のポスター撮りに忙殺される喜久雄と俊介。

 

 

楽屋の途中にある、大部屋俳優がトンボを切る練習場。そこで「坊ちゃん!」という大きな声。徳次だった。上手いトンボに感心する喜久雄だが、上手すぎて自分だけ高く跳ぶから出番がないのだと言う。低く跳べばいいのだが、その調整が出来ない。それ下手ってことやで、と俊介が口を挟んで笑いが起こる。


感想
ひょんな事から急に注目を集め出した喜久雄と俊介。俊介は元々歌舞伎役者の息子という事で、幼い頃からの積み重ねがあるが、その慢心から遊び事も激しい。
一方喜久雄はすっかり歌舞伎に魅せられて、どっぷりと稽古に明け暮れる。この違いが先になって決定的な差となるのだろうか。

 

しかし前回で急に北海道に旅立った徳次が、五年の歳月を経て、また何事もなかったように二人とつるんでいるのがちょっと違和感。まあサイドストーリーだから端折ったという事か。

 

AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

ヤシマさんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

コメント

[コメントをする]

コメント投稿

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。