火の鳥 羽衣編 単行本 ⑧ | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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羽衣編  初出:「COM」1971年10月号

 

感想
芝居仕立てであり、一頁に横長のコマを四つ配し、各コマの右手に松の木、左手に家、というレイアウトのまま全てのコマを維持。

その中で物語を進めて行く。
手塚にとっても実験的な試みだったのだろう。
話のベースは「羽衣伝説」。おときは1500年の未来から来た。

手助けをしたのは火の鳥。
待っても帰らぬ亭主に、結局母娘は「かあさまの国に帰りましょう」と言って、どこに行ったのか?

 

初出の時は、生まれた子供が放射能による奇形で、それを嘆いて殺すという話だったようだが、単行本化される時に、全面的に手直しした様だ。
後半の暗転、スポットライト等、芝居の効果を楽しむような表現。

 

あらすじ

遠州三保の浜。裸の女が松の木に薄衣をかける。
通り掛かった男がその衣を取って、売るために持ち去ろうとする。
女の声で、返して下さい、と懇願。男は姿を見せろというが、こんな姿では出られない。
男は別の着物を持って来る。初めて見る女の肌にうろたえる。
その隙に羽衣を取り返そうとする女だが、それを止める男。
空から来たという女に、勝手に天女だと思い込み、年貢を召し上げられるグチを話す。
そして、三年一緒に暮らしてくれたら衣を返すと言った。

 

男は、女を「おとき」と名付けて一緒に暮らし始めた。

娘も生まれ、幸せな日々を送る男。娘が大きくなったら、いい男と結ばせると言うと、おときは結婚させない、と否定。
そろそろ三年の期限が近づいていた。

ずっとここに居て欲しいと願う男。
おときの話では彼女の国でも大きな戦があり山野も枯れ果てている。

そんな所に兵が来て、平将門反乱の鎮圧をするための兵として出仕せよとの命令。
無理やり連れて行かれるところに、おときが例の衣を差し出し、これと引き換えに亭主を見逃してくれと頼む。驚く男。

 

男:ズクは見逃してもらえたが、おときを心配する。
おときは千五百年の未来から来たという。

未来のものを過去に持って来れば歴史が変わり、恐ろしい事になる。
ズクは、羽衣を取り返すために行ってしまった。

 

一年経ってもズクは戻って来なかった。
娘をあやしながら話すおとき。
千五百年の未来で大きな戦争があり、孤児だった彼女は収容所に入れられていた。その時に火のように燃えるふしぎな鳥を見た。

鳥は好きな時代へ送ってあげると言われた。
ただし、昔の時代の歴史を決して変えてはいけないと約束した。
羽衣が人手に渡り、この娘も大きくなれば、未来人の産んだ子孫が出来てしまう事になる。
おときは娘を殺そうとするが、どうしても出来ない。
娘を連れ、かあさまの国に帰りましょう、と言って消えて行くおとき。

 

矢傷を受けながらも、羽衣を取り返して来たズク。
だがおときと娘は既にいない。
松の木のふもとに羽衣を埋めるズク。そして息絶える。