2017年03月15日

新聞小説 「国宝」 (2) 吉田 修一

テーマ:本・国内

作:吉田 修一 画:束 芋  1/27(26)~2/21(50)

                                                  (1)はこちら

 

第二章 喜久雄の錆刀 1~25

 

 

春江の家に転がり込んでいる喜久雄。今年からカラーテレビになった紅白歌合戦を白黒テレビで観ている。母親がスナック「紫」をやっているところの二階。
タバコがなくなり、階下の店に降りて「ピース」に火を点ける喜久雄。火の用心の声がするが、何かおかしい。
バットで身構えて入り口のドアを開けると、そこには鑑別所に居る筈の徳次。大晦日が一番逃げやすいと聞いて実行した。なんで?と言う喜久雄に、親分の一周忌やろ、と返す。

 

宮地組の残党が、立花組の新年会に殴り込みをかけてから、もう一年が経とうとしていた。
凄惨な抗争事件は全国ニュースとなった。死者一名、負傷者五十名。事件後、宮地の大親分が、自分は潔白だと子分を切捨てたため、結局宮地組は解散となった。
権五郎を失った立花組も混乱。跡を継ぐべき若頭の真田征一は逮捕され、抜きんでた者のない中での派閥争い。これをまとめたのが愛甲会若頭の辻村将生。
権五郎の遺児である喜久雄の将来を慮って、ちゃんと学問をさせねば、と進言。気が付けば辻村が墓の建立、納骨まで仕切り、この体たらくが、以後立花組が愛甲会の下部組織に成り下がる要因となった。

 

徳次が鑑別所送りになったのは、権五郎の納骨が終わってすぐの頃。喜久雄、徳次らが取り巻きを連れて映画を観に行った際、彼らの特等席に座っていたのが梅岡中の悪童ども。
その中の一人が「ニッキの譲治」。建材屋の息子で、不良の中では名が知られていた。客が逃げ出す中、土下座しろという徳次の顔面を突然殴りつける譲治。
徳次を踏みつけにしながら譲治は、自分の親父が撃ち殺されて、敵討ちも出来ん腑抜け息子、と喜久雄を笑った。
対抗する喜久雄だが、先方も立花組の息子と知りながら因縁をつける連中であり形勢は不利。
取っ組み合いになり、騒ぎが大きくなる中、消火器が噴射される。近くの交番から駆け付ける巡査。そうなるとニッキの譲治を先頭に、我先にと逃げ出した。
坊ちゃん、逃げろ!と喜久雄の背中を押す徳次。そこに現れる警官。徳次は警官にしがみついて喜久雄を逃がした。その結果、徳次だけが逃げ遅れ、鑑別所入りとなったのだ。

 

年越しそばを温めてあげると言う春江。結局徳次は二階へ。
徳次は、親分の仇討ちが待ち切れずに鑑別所を抜け出して来た。だが肝心の喜久雄には全くその気がない。

権五郎が亡くなったことで、喜久雄は天涯孤独の身となった。マツは権五郎の後妻であり、実母の千代子は、喜久雄が二歳の頃に他界。結核でなくなったという。
時代は丁度、権五郎が愛甲会の熊井と共に暴れ回っていた頃であり、暮らしは楽ではなかった。長屋の隅に寝かされ、そこに近づいたら血を吐くようになる、と脅されていた記憶が喜久雄にはあった。
その頃から権五郎はマツを家に引き込んでいた。打ち捨てられるように千代子が亡くなった時、誰よりも気丈に葬儀を仕切ったマツ。

 

 

彫師の辰に背中を任せている喜久雄。翼を広げたミミズク。そろそろ終わりにしてもよか?という喜久雄の泣き言を聞いて嘆く辰。春江は、もう次で完成だという。
そこで作業を止めた辰。右脚がなかった。サイパンでの戦いで爆弾にやられた。
脚を失ったせいでとび職には戻れず彫師の道へ。
喜久雄の背中にたっぷりとワセリンを塗り、食品用のラップで保護。

 

思案橋界隈の描写。歌謡界の動き。青江三奈の「長崎ブルース」、内山田洋とクールファイブの「長崎は今日も雨だった」。
客引きのため路地に立つ春江に、肉まんを買って来て与える喜久雄。近くの年増の女たちも手を出し、いっとき喜久雄にお世辞を言った。そこでも言われる一周忌の侘しさ。
法要を仕切った愛甲の辻村が選んだのは、三流の寺と三流の坊主。だが辻村に意見出来る立花の者は誰もいない。

そんな時に背中をどつかれ、肉まんを落とす喜久雄。凄んで振り返ると、その大男が喜久雄の頭を殴りつけた。喜久雄が通う中学の体育教師、尾崎。日頃からヤクザを毛嫌いしており、悪さをすれば容赦なく喜久雄を痛めつける。
今度は春江の髪をつかみ、中学のくせにこのバカに騙されて、大切な体で何をしているか、と叱る。

抵抗するも、踏みつけにされる喜久雄。立花組を継いだら真っ先に玉を取ってやるといきがるが、尾崎は「どこにその立花組が残っとる?」と再び喜久雄を叩きのめす。
立花組の組員のほとんどが愛甲会に出入りし、本家は寂しい限り。鰻重を頼んでもツケ払いが出来ない始末、とマツが嘆くような状態では、尾崎の言うこともあながち嘘とは言えない。

 

翌朝、珍しく学ランを来て出掛ける支度をする喜久雄。古参の組員に茶化されるが無視し、ふと思い立って権五郎の位牌に手を合わせる。
外に出たとたん、徳次にぶつかり、電柱の裏に引き込まれる。徳次はまだ鑑別所から逃げ延びていた。春江から、喜久雄が久しぶりに学校へ行くと聞いて待ち伏せていた。
大阪へ行こうと思う、と話す徳次。だがそれは逃亡生活の厳しさから出たもの。
昼まで学校に行ったら俺も一緒に大阪へ行く、と告げる喜久雄に驚く徳次。
十二時に長崎駅で、と言い残して喜久雄は学校へと駆けて行く。

 

だが喜久雄は煙草屋の赤電話で110番し、鑑別所から逃げ出した早川徳次が、本日十二時に長崎駅で待っていると告げる。

そしてそのまま学校へ。バッグには事務所から盗んで来たドスが。
一階の便所に駆け込んでドスを腹に差し込み、朝礼に臨んだ。今朝の朝礼では、児童図書館の建設に寄付をしている慈善家、宮地の大親分改め「センチュリー建設」会長の宮地恒三が演説をする事になっていた。

 

 

前から五列目で機会を窺う喜久雄。それを体育教師の尾崎がじっと見ている。
いよいよ宮地の大親分が壇上に上がってマイクの前に立とうとした時、ドスを握りしめた喜久雄が一気に駆けだした。だが同級生の肩に当たって一秒遅れ。それでも突き進み壇上に上がって大親分に迫る。横から尾崎が叫びながら突進。無心でドスを突き出す喜久雄。
手応えはあったが、肩に強い衝撃を受け、次の瞬間ふわりと自分の体が浮いた。


感想
喜久雄の父、権五郎が死んでからの顛末。没落する立花組。敵討ちを期待されている喜久雄だが、その動きを全く見せない。

 

田舎歌舞伎で女形をやるほどの優男。何の因果でヤクザの家なんかに生まれたのか。喜久雄を庇って鑑別所にまで入った徳次の忠心は報われない。
だがやるときはやる、と宮地の大親分にドスで向かって行く喜久雄。
さあ、どうなる?

 

まだプロローグだが、この小気味よさ。毎朝、新聞を開けるのが楽しみ。

 

 

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