「七夜物語」(2) 作:川上弘美 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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「七夜物語」 (2) 作:川上弘美 挿絵:酒井駒子


You Can Fly


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感想
後半に入って来て、ようやくテーマが見えて来たという感じ。
両親が離婚して母親に育てられている「鳴海さよ」。

父親とはごくたまに逢う関係。

父、祖母との3人暮らしの仄田鷹彦。
ドライな仄田くんとウェットなさよ。だが今までの関わりの中で、それぞれに異なる一面が描き出される。
ここで提示されている「夜の世界」は心そのものを現すのか?
美しさとみすぼらしさ。いいものと悪いものを無邪気に分別してしまう危うい世界を元に戻すために戦う2人。
美しいというだけで無条件に惹かれてしまう仄田くんに類した心は誰にも存在する。

顔の美しい人は心も美しい筈だ、という幻想は大人でも持っている。

途中、かなりスッとばしており、真剣に読み続けているのはここ3ケ月ぐらい。

最後のオチまで行ってガッカリするかどうか微妙だが、「夜の世界」というものに置き換えて精神世界を具体化している手法には共感が持てる。これからは毎日が見逃せないかも。

 

 

七つの夜抜粋

最初の夜

グリグレルに命ぜられ台所仕事。ねばっこい闇との戦い
第二の夜 永遠に醒めない夜との戦い
第三、四の夜 自分自身の中にある矛盾との戦い(別々の試練)
第五の夜 ウバたちとの戦い
第六の夜 小休止
第七の夜の予感(大きな使命を帯びる)。

 

あらすじ
No 487(1/24)~No 546(3/25)

うつくしい子供たちがその姿で居られるのは半日のみ。

この夜の世界を「ばらばら」にする力。

うつくしい子供は外見がきれいでも精神が伴わず(自分勝手)

みすぼらしい子供は親切で行儀もいいが元気さが足りない。
その事をさよは理解したが仄田くんはやや違っていた。いかにうすっぺらくて不自然でも、その完璧な美しさに惹かれてしまう。
だが、完璧に見えるものは「うそこ」の世界だと、さよやみすぼらしい子供は言う。

「ばらばら」にする力を何とか弱めようと決心する仄田くん。


行くべき道を示す白髪のこども。歩き始める2人。

まわりの景色が遠くまで見える様になった事に気付く仄田くん。

夜の世界に適応しているとの予感。


「おいで、こっちにおいで」という言葉。罠かも知れないと怪しむさよ。声の主は、頭が大きく、奇妙な風体の小男でマントを着ていた(金の輪)。さよと仄田くんの名前を知っており、グリグレルのことも知っていた。
そこに近づいて来たオニイトマキエイの「マンタ・レイ」。

マンタ・レイはさよと仄田くんを乗せて海の上を東に向かって飛びはじめた。
この海は「太古の海」だと言うマンタ・レイ。

この世界をばらばらにしようとする力の一端についての説明。
マンタ・レイの言う時間、世界の概念。

皆の中で夜の世界に気付く者がひとにぎりおり、その子供たちの数だけ夜の世界が存在する。
夜の世界に気付いた子供はそれぞれの世界に行き、それぞれの冒険をする。さよと仄田くんたちの夜の世界への「しるし」は「七夜物語」の本だった。
マンタ・レイは夜の世界の生き証人的存在だった。

最初は「原始の夜」人類が出て来た頃から少しづつ出来ていた。

人類の増加に従って育っていった原始の夜。

1千万年ほど前に夜の世界が爆発的に広がり奥深くなった。
百万年前ほどになると、夜の世界はますます不可思議なものとなり、今の夜の世界のひな形となった。


夜の世界をばらばらにする力は、さよと仄田くんを含む子供たちのせいで働くようになったと言うマンタ・レイ。
「そんなのは僕たちと無関係だ」という仄田くん。だがさよは五つめの夜で、ウバたちが地球上で我が物顔にふるまう人間の事について言っていたのを思い出していた。仄田くんはその時も人類全体のことなんて知らないと言っていた。
さよたち2人はこの世界を変革する人類の代表として位置付けられているかも知れない。
マンタ・レイは2人を乗せたまま突然急降下して海の中へ入っていった。


海底に降り立つ2人。「ここから先はおまえたち2人で行くのだ」と言い去っていくマンタ・レイ。

戦いを予感するさよと仄田くん。


歩いていくうちに、光のかたまりと影のかたまりが2人の近くを「ひゅん、ひゅん」と飛び抜ける様になった。
そして光が2人に当たって来た。
光の中から聞こえて来る声。七番目の夜に来るきっかけのはがきの内容を知っていた。

光にも影にも2人ずつの男女が入っている。

光の当たりは柔らかだったが、影の攻撃は辛らつだった。
何度も攻撃を受けるうちに相手の姿が次第に判って来た。影の中にいたのはさよと仄田くん自身だった。攻撃を受けて血だらけになる2人。影の子供たちの深い絶望の表情。影が遠ざかった後、光が再びぶち当たって来た。

光の2人の表情は自信に満ちていた。
この世界は自分たちのために出来た、私たちはこの世界の王と王女だと言う。