「稚くて愛を知らず」 石川達三 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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両親からの愛を一身に受け、美貌と清純な心を持って成長した友紀子。博士号を取るために苦労している医学生の三宅は、大学教授の紹介で見合いをする。

研究費の援助を受けて博士号を取り、医師として一人前になる事を前提として友紀子と結婚する。

しかし友紀子は、結婚生活に対してほとんど理解能力がなく、夫に対しても愛情を育てる事が出来ない。
三宅は研究費の援助こそ受けたが、家事もろくに出来ず精神が未発達の妻と、実家との間で多くの犠牲を強いられる。子供が生まれても特に愛情を感じず、養育は母親に任せきりの友紀子。子供が9歳で病死した時も悲しみを感じない。戦中、戦後の混乱の中で妻の実家に振り回される三宅。

 

ぼんやりとした記憶はあったが、改めて読むとけっこう大変な話。美貌の妻と援助の研究費。こんないい条件での結婚はないと思っていたのが、結婚生活が始まるにつれ、次第に明らかになる妻の性格。特に異常であるとも言えないが、連れ合いに愛情を感じることが出来ず、主婦としての能力もないという事がどういう結果になるか、じわじわと迫ってくる感覚がすごい。

実際、ここまでひどくはないと思っていても、現実の事件では信じられない様な妻、母が現れるのも確か。
当時は実験的と言われたらしいが、最近では珍しくもないか。
読み始めると一気に読ませてしまうのはさすが。

 

今回画像を探したけど、旧過ぎてネット上にはなし。