念のため、単語の説明から。英語でpro-marketというと、市場機能をうまく利用し、経済運営をすることを是とする人たちまたは考え方である。もうひとつのpro-businessとは、財界が望む政策を実行することで経済運営をすることを是とする人たちまたは考え方である。


同じ場合もあるが、pro-marketpro-businessと同義ではない。むしろ、この違いを理解することが、これからの日本を考える上で鍵となろう。


大雑把に言えば、pro-market政策とは競争促進政策であり、消費者が求めるモノやサービスを差別化(価格、質、サポート)して提供できる企業を勝者にすることで、経済全体のパイを増やすことである。つまり、市場原理が働く市場であれば、pro-market的な政策を実行することで、いわゆる「弱者」を助けることができるわけである。


また、変化に対応できない企業に退場を促すことで、需要の見込めない貴重な人材を割り当てることもなくなり、成長企業に人材が動くことにもなる。つまり、人口の減少により、パイの縮小が避けられなくても、縮小規模を下げることができるのである。


さらに、pro-market政策とはイノベーション促進政策とも言える。老舗であろうと新興企業であろうと消費者に最も付加価値を提供できる企業を勝者にする透明性の高いシステムを構築することでinnovativeなモノやサービス創造するインセンティヴを与えることになるのである。


それに対し、pro-business政策とは、大雑把に言えば、財界(一般には既存の大企業)の言うことを政策にすることである。結果的に一般消費者が便益を受ける場合があるが、きつい言い方をすれば、政官民の癒着を意味する。

  • 政治家は民間企業から選挙面で援助を受け、民間企業は公共事業の受注に関し、政治家に「口利き」をしてもらう
  • 官僚は民間企業から接待や天下り先に関し援助を受け、民間企業は公共事業の受注に関し、便宜を図ってもらったり、法令違反があっても見逃してもらったり、競合他社の取締りを厳しくしてもらう

「アメリカ型の市場原理主義」が批判されて久しいが、今日の日本こそpro-market政策を導入し、pro-business政策を廃すときなのである。一般消費者(=「弱者」)を救うために。


バラマキ福祉や公共事業をやっている時間があるならば、pro-market政策にも時間を割いてくださいよ、政治家や官僚のみなさん。よろしくお願いします。



参考資料

Capitalism After the Crisis - Luigi Zingales