谷中の案山子〜Ameba支局

道化の華が、お空に爪立てる精一杯の希望です。

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隠し砦の三悪人 1958年(昭和33年)



監督:黒澤 明          キャスト:真壁六郎太:三船敏郎
脚本:菊島隆三               太平:千秋実
   小国英雄               又七:藤原釜足
   橋本 忍               田所兵衛:藤田進
   黒澤 明               老将長倉和泉:志村喬
撮影:山崎一雄               雪姫:上原美佐
美術:村木与四郎              老女:三好栄子
音楽:佐藤 勝               娘:樋口年子


                 



封切り時からまもない頃に僕はこの映画を観ている。たぶん小学4、5年生の時だったと思う。当時、時代劇と言えば、きらびやかで華やかな絵空事に徹した東映時代劇が本流だったのだが、『隠し砦の三悪人』はまるで色合いが違っていた。このモノクロの画像から発せられるザラザラした感触は、小僧にとって、それまで味わったことのない不思議なものだった。この異質さが結局は黒澤リアリズムの持つ独自な空気だったのだろうと今にして思える。埃と汗にまみれた人間臭さ。そこから放たれる濃厚なダイナミズム。日本映画なのにまるで外国の西部劇を見ているような興奮を受けたに違いない。特に劇中で主人公たちが金の延べ棒を木の枝に隠し入れてそれを白昼堂々と運び込むというさまは、小僧の心を躍らせた。その後、この映画がどんな題名の映画だったのか完璧に忘れていくなか、金の延べ棒の一本一本を木枝の中に隠して運ぶという感触だけは大人になっても残り続けていた。


                



やがて東京のアホ学生になって再びこの映画を観たとき、自分の心の揺れぐあいに、とても懐かしいものを感じた。たぶん子供の頃に観たときの感触が、心の奥から蘇ってきたのだろう。木枝の中に金を隠すという官能的とまで言いたくなるほどのワクワクする意外性、そのカッコよさ。さらに、わざわざ敵陣のど真ん中に乗り込み黄金入りの木枝を運び去るという大胆不敵さ。そしてラストでの爽快な逃亡シーン。おそらく、子供のときに心躍らせたのと同じ場面で、同じように興奮したんだと思う。人というのは、大人になっても、中身は子供時代とさほど変わらないことを繰り返してるのだね。たぶん、一生、無邪気なものなんだわ(う、おいらだけか^^;)。

                


闘い方には小ずるい闘い方と美しく潔い闘い方がある。子供はいろいろな場面でその闘い方を無意識に学んでいるはずだ。
今の大人が小ずるい闘い方ばっかしてるから当然それらを眺めて育っている子供も小ずるくなるのは当たり前。


                 



真壁六郎太(三船敏郎)の闘い方は美しく潔い。因縁の宿敵(藤田 進)もその潔さに最後には脱帽して六郎太の命を助ける側に回る。たぶん男としての真の闘い方というものがあるのだ。いや、この言い方は女性に失礼にあたる。ご無礼申した。男でも女でも、人間としての真の闘い方があるものだ。『隠し砦の三悪人』はそういう物語だ。


                 


戦国の世である。戦いに敗れた秋月家の雪姫(上原美佐)と一の家来・真壁六郎太(三船敏郎)は、百姓の姿に化け、お家再興のため、軍資金である金の延べ棒を木枝の中に詰め、敵陣を突破して自分たちの領土に運びこもうとする。その間、さまざまな難関が彼らを迎え撃つ。それらの難関をいかにして突破していくか。台本の執筆中、黒澤はあえて困難な状況を次々と設定し、他の三人の脚本家たちに、いかにカッコよくその悪状況を突破していくかの方法を提示させた。他の三人の脚本家たちとは、菊島隆三・ 小国英雄・ 橋本忍の優れ者たち。彼らは頭をかきむしり必死に考えたという。その作業の果てに弾き出されたのが、劇中で真壁六郎太(三船敏郎)が実行した数々の奇策や奇襲である。




この映画で狂言まわしのような役柄を演じているのが、千秋実藤原釜足の凸凹コンビ。
二人とも黒澤お気に入りの役者さんだ。
欲ったかりで、意地汚く、いつも小鼠のようにジタバタしている百姓コンビを
息の合った見事な掛け合いでコミカルに演じている。


              




やはり女優が気になるわたくし。雪姫を演じた上原美佐を取り上げないわけにはいかない。

                


雪姫役を決めるのにスタッフは山のような応募者から選択にかかった。ところが黒澤の目には、雪姫に通じるキャラを持つ女性はひとりもいなかった。ある日、ひょんなことから上原美佐を目撃することになる。役者には縁もゆかりもない素人の娘さんだ。黒澤は「この子しかない」と即座に上原美佐を雪姫役に抜てきする。日本人離れしたエキソチックな顔立ち。均整のとれたボディ。立ち姿そのものが光となりえる存在感。しかしながらセリフの言い回しがぶっきらぼうで下手くそ。世間慣れしていないお姫様役に、これほどピッタンコの娘はいないと黒澤は思ったのだろう。


                


劇中、姫言葉が出ては身分がバレるからマズいと唖の女で通すのだが。この設定は、上原美佐のセリフの言い回しが下手くそだからという理由も多少はあったんじゃないかと勘ぐってしまう。しかし、ほとんどセリフ無しの役柄でも、存在感の威力というのは凄いもので、たとえば百姓姿に化けた姫一行が片田舎の小さな宿場に立ち寄り、そこに群がる荒くれた下層民たちに囲まれたとき、一段と冴え渡る上原美佐の美しさは息をのむものであった。








とうとう雪姫(上原美佐)、六郎太(三船敏郎)、元・城下の娘(樋口年子 )の三人が敵方に捕えられた。
明朝打ち首にされることが決まっているその夜、囚われの身の蔵の中で。

姫「装わぬ人の世を・・人の美しさを・・・人の醜さを・・・
 この目でしかと見た。六郎太、礼を言うぞ。これで姫は悔いなく死ねる」

六郎太「姫!」

姫「六郎太、とくに、あの祭りは面白かった。あの歌もよい」と云って歌い出す。

 ♪ 人の命は 火と燃やせ
   虫の命は 火に捨てよ
   思い思えば 闇の夜や
   浮き世は夢よ ただ狂え



打ち首の朝。処刑場所に向かう敵の軍勢たち。馬上で縄に縛られた雪姫と六郎太。

ここで痛快なことが起きる。

       


敵方の武将・田所兵衛(藤田 進)が「裏切り、御免!」と言って敵方から寝返る。
囚われて直に処刑される六郎太(三船敏郎)と雪姫(上原美佐)の、最後まで忠義をまっとうしようとする姿を見て、田所兵衛は胸打たれ、心をきめる。
昨夜雪姫が歌っていた祭りの歌

 ♪ 人の命は 火と燃やせ
   虫の命は 火に捨てよ
   ・・・・・

を歌いながら、六郎太と雪姫の腕を縛っていた縄を次々と斬り解いてやる。雪姫に「兵衛!付いて参れ!」と言われ、かたじけないという顔をして大きく頷く。そして自らの軍勢に向かって「裏切り、御免!」と言い捨て、馬に飛び乗って六郎太と雪姫と共に逃げていく。

                   


雪姫が先頭で馬で走りゆき、続いて六郎太(三船)が逃げ惑う元・城下の娘(樋口年子 )の体を馬上へ引き上げ逃げ去るシーンで、当時の映画館では観客から拍手が沸き上がったという。いま観ても思わず拍手喝采したくなる爽快なシーンであった。

                   



黒澤が当時の観客に美味しいものをたらふく食べさせてやろうと作った痛快娯楽時代劇。
今回のBSの放映で、またしても、小僧のように目をキランキランさせながら観てしまった。



『隠し砦の三悪人』作品評価  ベスト
                          2008年10月8日  記


            
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