第630回『料理人のワイン知識ー㉒』
「料理人が知っておいたほうが良いワインの知識―㉒」
「ワインの醸造の話―⑭ 赤ワイン編―④」
黒ブドウを原料にする赤ワインの醸造工程をみていますが、中でも
「かもし発酵」と呼ばれる「マセラシオン(醸(かも)し)」と「アルコー発酵」の
同時進行工程は赤ワインの性格が決まる大切な工程です。
「かもし発酵」の期間は数日~2、3週間です。
途中、マセラシオンの効果(色素・渋味・香り)が効率的に行われるように
発酵タンク内を混ぜます。
ポンプを使いタンク内のワインを循環させる、
「ルモンタージュ」と呼ばれる方法と、
人力による「ピジャージュ」という方法があります。
この、タンク内の撹拌(かくはん)は、
発酵が盛んに行われている時は一日に数回行われます。
発酵が落ち着いてくると回数を減らしていきます。
発酵が終了する頃になると、
主として、種と果皮だけになった粕(かす=マール)を残して、
液体部分を別のタンク(樽)に移します。
これを、「引抜き酒(フリーランワイン)」と呼びます。
さらに残った、マール(粕)を圧搾してワインを搾ります。
これを、「圧搾酒(プレスワイン)」と呼びます。
引き抜き酒と圧搾酒は基本合わせることはありませんが、
ワインにコクを足すためにブレンドすることもあります。
引抜き酒、圧搾酒とも、この後、さらに完全に発酵が行われます。
この発酵は、「後発酵(マロラクテック発酵)」と呼ばれます。
(このあたりも発酵の項で詳しく。)
後発酵(マロラクテック発酵)中は、
ワインの中の残った不純物がオリとなりタンクの底に沈殿します。
そこで、上澄み部分をまた別のタンクに移します。
この作業を数回繰り返します。
この後、ワインは熟成タンク(樽)に移され、熟成期間へと入ります。
赤ワインの場合、この熟成はとても大切な期間で、
タンクで行うか木樽で行うか、また、木樽の場合でも、
新しい樽か古い樽かでもワインの出来が大きく変わってきます。
樽による熟成は通常は1年~2年で長くても3年が普通です。
(中にはもっと長期のものもあります。)
熟成が終わると、ワインは目的に合わせ「ブレンド」が行なわれ、
タンクに移され冷却されてワインの濁りを沈殿させます。
これを、「清澄(せいちょう)」し、「濾過(ろか)」した後、「ビン詰め」します。
そして、「ビン熟成」へと移ります。
熟成(ビン熟成)期間はワインにより様々です。
そして、飲み頃がくる頃に、「出荷」となります。
最後は足早になりましたが、以上が、赤ワインの醸造過程です。
次回、ロゼワインの醸造工程をみていきましょう。