2016-09-09 02:37:52

光と影の魔術師による『小川義文 自動車』

テーマ:イージー・ゴーイング

友人の小川義文が写真集を刊行した。
タイトルは『小川義文 自動車』。

 

 

彼は本書の中で文章も書いているが、余計なことは一切書かず、必要なことだけを記述していくそのスタイルはあたかも自動車のエンジンのようである。

 

小川義文とぼくのつき合いは長い。
初期の頃、この男とは本気でつき合いたいなと思ったぼくは失礼な質問をした。

 

「たとえばリチャード・アベドンが撮影したミック・ジャガーの写真が壁に架けてあったとするよね。それを見た人はだいたい、あ、ミックの写真だって言うでしょう。アベドンの写真だってことは、その次だよね? 写真って、何?」

 

その時に小川義文は怒るかと思ったのだが、苦笑しただけであった。まあ見てなよ、そのうちに分かるよ──とでも言いたげであった。

 

長いつき合いで、この男が教えてくれた。写真とは紛れもなく光と影の芸術なのだということを。この1冊の写真集『小川義文 自動車』に収録されたすべてショットは、魔法みたいなものである。小川義文は光と影の魔術師なのだ。

 

ぼくと小川義文には何冊か共著の本がある。ぼくが文章を書き、彼が写真を撮るわけだ。だがある時、ぼくは彼に言った。

 

「これからは小川さんが文章も書きなよ。絶対にそのほうがいい。多くの人が徳大寺有恒の後継者は誰かって探してる。それは、実は、小川義文以外にはあり得ないんだよ」

 

 

それで彼は、『写真家の引き出し』を書いた。2008年のことだ。これをきっかけに、彼は文筆家にもなった。たいへんだったかもしれないが、だからこそ『小川義文 自動車』に辿り着くことが可能だったのだと思う。

 

この1冊の写真集には、小川義文のすべてが詰まっていると言っていいと思う。出版不況のこんな時代にこんな贅沢を共有させてくれるなんて、なんと素晴らしいことなのだろうか。『小川義文 自動車』に最大限の敬意と、そして、祝福を!

 

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