とある将棋序盤ソムリエの、将棋戦法つまみ食い

自称、将棋序盤ソムリエとして、序盤を中心にテイスティングしていきます。いp


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アイデス山口さんの『アイデス山口戦術「風見鶏β」 風見鶏βにハチワンシステムをあわせたら・・・風見鶏81?』という記事をみて私もハチワンシステムを考察してみました。

ハチワンダイバーの漫画中でハッキリわかる限りでは、先手番で使用しているようです。後手番バージョンも可能かも知れませんが取り敢えず先手番のみ考えてみます。


(ハチワンシステム基本図;ハチワンダイバー9巻;129ページより改変)
$将棋日記 by yamajunn21-ハチワンシステム基本図
(初手より▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩▲6八銀△6二銀▲5六歩△5四歩▲7八金まで)


作中では、上の基本図に△4二銀と上がったところが基本図(らしきもの)として出てきますが、それだと進行不可能な局面が有るので、敢えて一手前の局面にしてあります。(急戦バージョンが3一銀型だからです。)

基本図から、相手の出方によって居飛車バージョン、振り飛車バージョン、急戦バージョンと変幻自在に戦うと、語られています。それぞれの図面を下に挙げておきます。

(ハチワンシステム;居飛車バージョン;ハチワンダイバー9巻;129ページより)
$将棋日記 by yamajunn21-ハチワンシステム;居飛車バージョン


(ハチワンシステム;振り飛車バージョン;ハチワンダイバー9巻;129ページより)
$将棋日記 by yamajunn21-ハチワンシステム;振り飛車バージョン

(ハチワンシステム;急戦バージョン;ハチワンダイバー9巻;129ページより)
$将棋日記 by yamajunn21-ハチワンシステム;急戦バージョン


今まで、あまり深く考えずに読んでいたので意識していませんでしたが、このシステムは少し問題が有りそうです。

基本図までの局面でも、後手が振り飛車党で4手目に△3三角とか、△3二飛、△3五歩などとして相振り飛車模様にすればそもそもこの局面になりませんが、それは取り敢えず考察から除外します。

以下、オリジナルのハチワンシステムの考察は基本図以降のものに限らせてもらいます。


(1)居飛車バージョンについて

まず、私が気が付いたのは、居飛車バージョン(と言うか雁木バージョンですね)が他のバージョンより先に形を決めないとイケないのでシステムの中にうまく組み込めない様だという事です。

基本図から後手の自然な手は△4二銀、△4二玉、△5二金右、△8五歩あたりだと思われます。△8五歩は非常に重要なので、後で別に取り上げます。まず△4二銀か△4二玉か△5二金右としたものとして話を進めていきます。

後手が10手目にこの3つの手のうちのどれかを選んだとします。この時、先手が雁木と他の形と両方可能な待ち方が▲3六歩しか有りません。右銀や右金を動かすと居飛車バージョン以外に出来なくなります。(仮に11手目に▲3六歩としたとしても、次の手で結局、居飛車バージョンかそれ以外か、態度を決めざるを得ません。)

また雁木の本を読めば分かるのですが、雁木は相手が2段玉で△4四歩と突いて囲う時、言い換えると矢倉の早囲いの形の時に、特に有効と思われます。同じく2段玉で舟囲いの時が、急戦バージョン(袖飛車の速攻型)なのですが、早くに形を決めてしまっているので上手くスイッチ出来ません。


この辺を具体的に調べてみましょう。例として10手目に△4二銀と上がったとします。そこで▲4八銀として雁木模様で指すと、先手が自然に振り飛車にする変化が無くなったので、後手は△3二金からカニ囲いにして、図1の様に組み、8筋の歩交換をします。それから△7四歩・△6四歩と突いて、△7三桂△6三銀と攻撃型を作ります。

(図1)
$将棋日記 by yamajunn21-ハチワンシステム→蟹雁合戦
(基本図以下△4二銀▲4八銀△3二金▲5八金△4一玉▲5七銀△5二金▲6七銀△8五歩まで)


4四歩を突いておらず、さらに一段玉だと雁木からすぐに仕掛ける順がなく、速い攻めが難しくなり、2筋の歩を伸ばすような将棋になります。実はこの形の類似型は旧型相懸りの時代に出現しており、加藤次郎先生の解説では、蟹雁合戦(かにかりがっせん;カニ囲いと雁木の対抗系の意味)と呼ばれています。

この形はそのまま自然に(普通に雁木に)進行すると、後手が指しやすくなるので(十字飛車の筋が出てきます)、先手は右玉にして(場合によっては▲7七桂とする)受けますが、後手は矢倉囲いに組みます。普通の雁木の将棋では無くなるので、あまり面白くないと思います。(先手番としても形勢の面でも少し面白く無い様に思います。)


以上を踏まえて、11手目で▲4八銀ではなく▲3六歩と突いたとします。この場合後手に△5二金右とされると、結局先手は、居飛車バージョンかそれ以外かを表明せざるを得なくなります(これ以上、両睨みの形では待てない)。13手目に▲4八銀とすると、上の変化とほとんど同じ事になると思います。そこで▲5七銀と上がるのでしょうが、以下は振り飛車バージョンと急戦バージョンのみの選択枝となり、そちらの方で解説していきます。



さらに、先程は検討を保留しておいた10手目△8五歩の場合ですが、先手はどう応対するか決める必要が有ります。漫画の中での進行を見ると(1)▲7七角として飛車先交換を受けているようです。一応他に(2)▲7七銀とする形、又は(3)8筋を受けずに▲6七銀として飛車先交換を許す形と3種類の対応のどれかを選ぶ必要があります。

これも雁木の本を読んでいただくと良いのですが、雁木の場合は原則的にあまり▲7七角と上がりません。雁木は多くの場合、角筋を使って攻めるので、一部の例外を除いて▲7七角と(わざわざ一手かけて)上がっても攻めの面ではメリットは無いことが多く、むしろ攻撃目標になりかねないと思われます。

その上▲7七角と上がると以下△3二銀▲5七銀△3一角▲6七金△8六歩と、振り飛車バージョンに組もうとしても間に合いません。(ここでは▲7八金が完全に余計な手になっている。)

▲7七角と上がらない場合、8筋を交換されると向かい飛車にはしづらくなるので、やはり後手はカニ囲いに組んで、上記と同じ様な戦略にすれば良さそうです。


実は以上の問題点は、ハチワンシステムの居飛車(雁木)+振り飛車+急戦という組み合わせにしようとするので起こってきます。

まず、蟹雁合戦の問題は、先手も雁木に組むことにこだわらず、普通に矢倉にすれば何でも有りません(△4二銀▲4八銀△3二金▲5八金△4一玉に▲6七銀とせず▲7七銀か▲6七金右から矢倉にすれば普通の飛車先不突き矢倉になる)。もし後手が、早囲いにしてくれば、その時は雁木もより有効に働きやすいと思われます。

後の△8五歩の問題では、あっさり▲7七銀と上がって矢倉模様にすれば、先手のみ飛車先不突き矢倉で後手は8五まで飛車先を伸ばしているので、少なくとも損をしているということは無いと思います。

もし序盤の早い段階で△8五歩と伸ばされて、引き角から角交換されてしまった場合は、新風車の右玉にする展開もあると思います。(この場合▲5六歩はあまり早く突きすぎない方が良いと思われます。)


今更なのですが、雁木(や袖飛車)は、(主に)▲6七銀型で振り飛車と思わせて、相手が舟囲いに組んできたところを、もう一枚の銀を▲5七銀と出してきて玉頭直撃の攻めを見せる戦法です。△3三銀一枚で守っていれば袖飛車、△4四歩△4三金と手厚く守ってくれば雁木というのが、本来の筋だと思います。(残念ながらそれで簡単に有利になるということは有りません。)


基本図の形から、待つのであれば、矢倉か中飛車を中心として、雁木・袖飛車(6七銀・5七銀の二枚銀型)を組み合わせてシステム化を目指したほうが良いと思われます。後手が△4二銀と上がると、先手が中飛車に組んだ場合に、中飛車の天敵の居飛車穴熊に組もうとしても手数がかかるので、言い分は通っていると思います。


雁木を中心にしたいのなら、▲5六歩を遅らせて、右玉(新風車)も組み合わせ、早めに▲6七銀と上がって矢倉への変化は諦めた形でシステム構築をした方が良いと思います。

(ハチワンシステム基本図;改良型1)
$将棋日記 by yamajunn21-ハチワンシステム基本図;改良型1
(初手より▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩▲6八銀△6二銀▲6七銀まで)

ここから、△4二銀には▲7八飛か▲6八飛で振り飛車。△4二玉には▲4八銀として、玉頭を狙う筋を見せます。通常は▲5六歩~▲5七銀として、角は8八においたまま、雁木か袖飛車で攻めます。場合によっては▲3六歩~▲3七銀からの袖飛車も有ります。

△5四歩と突く手には▲5六歩と受ける手と▲4八銀と上がる手が有りそうです。また、△8五歩は早いタイミングだと、▲7七角と上がるところでしょうか?上にも書いたように、早い段階で△8五歩から引き角にして、角交換されてしまった場合は、新風車(右玉)が有効と思われます。(△4二玉からの形に右玉にすると、後手にミレニアムにされると面白く無いと思います。)



結局、漫画の中での「ハチワンシステムの居飛車(雁木)バージョンは他のバージョンと相性がイマイチで、別の戦型と組み合わせたほうがよいのではないか」、「雁木を中心に置きたいのなら、早くに▲6七銀型にして振り飛車模様にした方がよいのでは」というのが私の見解です。



(2)振り飛車及び急戦バージョンについて

居飛車バージョンのところで触れたように、△8五歩とされると、もう振り飛車バージョンには組めません。まあ、この変化は取り敢えず、▲7七銀とされて矢倉模様になると後手が気分的に良くないので、選ばないものと仮定します。

基本図から△4二玉に▲5七銀△3二玉▲3六歩△5二金右▲4六銀△5三銀▲3五歩とすると、急戦バージョンの図面に進行します。この図面も私としては少し違和感が有ります。先手が▲4六銀と進出してきているのに、後手としては△4二銀から玉頭を手厚く受けたくなるので△5三銀が違和感ありということです。

後手が玉頭を手厚く受けてきたら、その時は振り飛車にするというのなら、整合性のあるシステムと言えます。ただし、その場合は▲7八金は急いで上がる必要が無いように思われます。という訳で改良版を考えてみました。


(ハチワンシステム基本図;改良型2)
$将棋日記 by yamajunn21-ハチワンシステム基本図;改良型
(初手より▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩▲6八銀△6二銀▲5六歩△5四歩まで)


ここで▲5七銀と上がります。以下△8五歩▲7七角△4二玉▲3六歩△3二玉▲3五歩△同歩▲4六銀△5二金右▲3八飛という戦い方が、内藤國雄先生の「空中戦法」という本の「Ⅲ 袖飛車戦法」という章の、「五 奇襲袖飛車」の項目に載っています。

この攻めを見せることで、後手は玉頭を手厚く構えたくなります。しかし▲5七銀に△4二銀と上がると▲7八飛と三間飛車にされて後手はやや囲いにくくなっています。(もし△8五歩と▲7七角の交換が入っていれば向かい飛車にします。)

というわけで▲5七銀には△5二金右くらいが無難で、そこで▲3六歩とします。(2図)


(2図)
$将棋日記 by yamajunn21-ハチワンシステム;奇襲袖飛車
(ハチワンシステム基本図;改良型2より、▲5七銀△5二金右▲3六歩まで)

2図から△4二銀ならやはり▲7八飛と三間飛車にして一目散に穴熊囲いに組みます一方の後手は固い囲いにするには手数がかかりそうです。

そこで2図から△4二玉としてみます。ここで上の奇襲袖飛車と同様に▲3五歩△同歩▲4六銀と行くと今度は△3二金とされて▲3五銀にも△5五歩からの反撃が厳しそうです。△4二玉には▲3八飛としてみます。

あからさまに玉頭直撃を狙われると△3二銀(又は△3二金?)などとして普通は守ります。その時に▲4八玉~▲3七玉~▲2八玉から穴熊囲いの構築を目指すのがおもしろそうです。この構想は故森安秀光先生が指されています。(もし後手が△3二玉とすれば3筋から攻めます。)

この場合△3二銀・△4二玉の形のため、引き角から8筋交換をすぐに狙えないので一瞬飛車の横効きが止まっても大丈夫と思っています。(構想に穴があるかも知れませんがご容赦ください。)

さらに、2図から△3二銀とする手には今度は▲5八飛と中飛車での中央突破を見せてみます。ここで△4二玉なら▲4六銀から五筋の歩交換をして場合によっては左右の桂を4五や6五へ跳ねだす攻めすら有りそうです。▲5八飛には△4四歩と突いて「歩越し銀には歩で受けよ」の受けを準備すると、次は先手は穴熊囲いに組みます。

このような感じにすれば、チョット面白いのではないのでしょうか?プロ的には無理かもしれませんが、初段周辺レベルくらいまでなら、十分に楽しめそうな気がします。


以上、「ハチワンシステムの振り飛車+急戦バージョンは、▲7八金と上がらずに組んだ方が、戦いやすいのでないか」というのが私の見解です。



まとめ

あくまで私の個人的な考えですが、ハチワンシステムは3つに分割してしまいました。

(再掲;ハチワンシステム基本図;ハチワンダイバー9巻;129ページより改変)
$将棋日記 by yamajunn21-ハチワンシステム基本図
(初手より▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩▲6八銀△6二銀▲5六歩△5四歩▲7八金まで)

オリジナルの基本図から始まるものは、矢倉か中飛車を中心としたシステムで、後手が早囲いに来たときに雁木・袖飛車で玉頭直撃の攻撃を目指す。


(再掲;ハチワンシステム基本図;改良型1)
$将棋日記 by yamajunn21-ハチワンシステム基本図;改良型1
(初手より▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩▲6八銀△6二銀▲6七銀まで)

改良型1は、振り飛車模様に見せて、後手が舟囲いにしてきたときに、雁木・袖飛車で玉頭直撃の攻め。カニ囲いにしてきたら四間飛車・三間飛車・向かい飛車で横から攻める形にする。後手が早くに引き角から角交換に来れば、向かい飛車で受けるか、角を変えて新風車(右玉)にする。


(再掲;ハチワンシステム基本図;改良型2)
$将棋日記 by yamajunn21-ハチワンシステム基本図;改良型
(初手より▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩▲6八銀△6二銀▲5六歩△5四歩まで)

改良型2は、逆に袖飛車の玉頭直撃を見せて、玉頭に手厚く受けてきたところを、三間飛車・中飛車・向かい飛車に振って穴熊に組みます。

と言った感じでどうでしょうか?


今回の考察では、基本図以下を中心としたので、菅田vs右角戦の様な△5四歩と突かない形は考察していません。要望があればまた考えてみたいと思います。
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