くるまの達人

とか、タイトルで謳いながら、実はただの日記だったりするけど、いいですか?


テーマ:
風呂桶職人 伊東風呂店
宮原信一さん


桶屋っていう商売が、時代の流れに
淘汰されてきたのは事実だね。

それでもこうやって毎日木を削ってる
のは、この仕事が好きになっちゃった
から。簡単でしょ、それだけですよ。

けれども実はこの仕事は好きで始めた
わけじゃないんです。勉強が嫌いで、
中学出たけどどうしようってことにな
って、親父がやっていた仕事を手伝い
はじめたのが最初。

世の中が、木の桶や風呂から現代風の
ものに切り替わっていく中で生き残っ
ていくために本来桶屋の持ち分じゃな
い仕事もやりました。

ところがある時、この道何十年ってい
うペンキ職人の仕事を見て、ハッと気
づいたんです。

いくら僕が真似したって、絶対に同じ
ようには塗れない。

極めるって、すごいって思いましたよ。

それまで風呂なんて、水が漏らなきゃ
それでいい程度に思ってたんですけど、
もっと集中して自分の本分を極めるべ
きだって感じたんです。

仕事って、知れば知るほどどんどん奥
行きが見えてくるでしょ。そうすると、
もっと知ろうとするし勉強もする。

道具にだって誰よりもこだわりたくな
る。そうなると、もう桶職人がどうし
たっていうレベルじゃないですよ。

名工と呼ばれる宮大工も人、自分も人。

かんなひとつ掛けるにしても、あの職
人にできて僕にできないのは合点がい
かないっていうようなこだわりです。

だんだんおもしろくなってきて、気づ
いたらこの仕事が好きだって思えるよ
うになってきたんです。

ひとつのことを極めることの大切さを
知ることで、仕事におもしろさを見つ
けたんです。

でも仕事は、決して甘いもんじゃない
ですよ。特に個人で商売をしていると、
なんの保障もないわけですからね。

変なものを作ると、お客さんは買いに
来ない。だからいいもの作るように一
生懸命になる。そうやって、仕事のレ
ベルも向上するんです。

大きな会社に勤めてると、色々な意味
で守られてるんだと思うけど、自分の
立場は保障されていると思った瞬間に、
ダメになることってやっぱりあるんじ
ゃないですか。

安心しちゃうと、そこでダメになっち
ゃうんだよね、人間って。

例えば僕みたいな仕事はね、職人でご
ざいますって食べていくために、桶な
ら一日30個、風呂なら桶型で一日半、
樽型で一日に1つ仕上げるくらいの手
の早さが必要なんです。

もちろん、仕事が雑じゃ話にならない。
まだ親方に手間賃いただいてる修業の
身なら、自分の仕事を親方が認めてく
れなきゃ、その場でクビですよ。おま
えの仕事は早いけどきたないからウチ
には必要ないって言われれば、それで
おしまいです。

なんで?もどうして?も、ない。その
くらい厳しい世界ですよ。

それでも負けずに続けていきたいって
思えるほど自分の仕事におもしろさを
感じることができれば、緊張感が解け
ることなんてないはずです。

非情だなんて言う人がいるかもしれな
いけど、僕はそれが本当のあるべき社
会の姿だと思います。最近、実力主義
を見直す傾向があるようだけど、会社
に入ってしまえばそれで安泰っていう
意識もまだ根強いですもんね。

それもひとつの生き方なんでしょうが、
そんなことでは振り返ったときに何も
残っていないでしょ。

明日をも知れぬという緊張感の中で一
生懸命頑張ることが、働くこと、生き
ることの醍醐味何じゃないですか。

大変だけど、そっちの方が絶対におも
しろいと思うんですよ。

Interview, Writing: 山口宗久


「かもめ」2006年5月号掲載
※内容は、すべて取材時のものです

※記事掲載への思いについて。


山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
Twitter / nineover
facebook / Yamaguchi Munehisa


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