中学生まで、年賀状は鉛筆で書いていた。



ある年、三中の同級のH君に年賀状を出したら、1月5日頃に返信の賀状が届いた。


その賀状には、「明けましておめでとう 今年もよろしく」とあった。


が、その字は間違いなく自分のものだったのでびっくりした。



皆さん、この意味が分からないでしょ?


宛名面を見ると、なんと自分が書いたH君の住所が消しゴムで消され、私の住所に書き直されていた。


さらに差出人欄の私の住所が消され、H君の住所が上書きされていた。


H君は私から届いた年賀状の宛名と差出人名を書き換え、そのまま再投函したのだった。年賀状に消印がないことを悪用したのだ。



彼は小柄で、顔に雀斑が多かった。

普段悪い人間ではなかったのに、中学生とは思えない悪知恵と吝嗇さに驚くとともに、自分の出した葉書が彼の許にないことがひどく虚しく、悲しかった。


以来数十年、年賀状は鉛筆で書かない。

H君に年賀状を出したのはその1回限りである。


何十年経っても、年賀状の季節になると彼の小狡さを思い出す。

彼の家は貧乏ではなかった。


貧乏どころか、H君の家はH商店といい、城南町に広大な敷地を有していた。

彼の家に何度か遊びに行ったが、広すぎて帰り路に迷うほどだった。


(続く)




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