日本で、
シャープという会社の名前を知らない人はいないと思う。
しかし、
シャープという会社をつくった人の名前を知っている人は少ない。
パナソニックをつくった
経営の神様、
松下幸之助と比べると、
シャープ創業者の名前はあまり知られていない。
シャープの創業者の名前は、
” 早川徳次 ”
彼は、
生まれてすぐに養子に出される。
養子に出された家は、
裕福ではない長屋の夫婦だった。。。
早川徳次は
幼い頃、
痩(や)せこけて 腹だけがみょうに出ている子供だった。
典型的な栄養失調だった。
養父の熊八は、
酒ばかり飲み、だらしのない男だった。。。
徳次の家の近くには、
大きな川が流れていて、木材の集積地になっていた。
材木職人は、
浮かんだ丸太の上を
器用にひょいひょい渡って原木を移動させていた。
徳次も
好奇心旺盛で、
よく材木職人の真似をしては、
見つかって熊八に怒られていた。
ある時、
徳次がいつものように、また川で遊んでいると。。。
後ろから、
”徳、徳!”と大きな声がした。
熊八がいつものように酔っ払いながら帰って来たのだった。
徳次
” あっ、ちゃ~ん ”
熊八
”あぶねえから、とっとと、あがらねぇか”
熊八
”丸太の上に降りちゃいけねえって、
あれほど言っているのに分からねえのか”
熊八は、
いきなり徳次の着物を手荒くひっぺがえして、素っ裸にした。
徳次
”ごめんよ ごめんよ ”
徳次は謝ったが、
熊八は
徳次を荷縄でしばると、ひょいと抱きかかえ
川のほうへ向かっていった。
徳次
”いてえ いてえよ ”
熊八
”しんぼうしな。言うことを聞かねえ、おめえがいけねぇんだ ”
泣きわめき、
足をばたつかせてあばれる徳次を水ぎわに降ろすと、
熊八は
力いっぱい、徳次を水の中に突き飛ばした。
徳次は、まだ泳げなかった。
手足をばたつかせて
懸命にもがいても
岸に手がとどかない。。。
一分ぐらいして、
熊八は、縄をたぐり寄せ沈みかけた徳次を岸にあげた。
徳次は、水を吐くと、ワッと泣き出した。
熊八
”なんでぇ これしきのことで、男が泣くんじゃねぇ ”
熊八は泣きじゃくる徳次の顔を覗き(のぞき)こみながら諭すように言った。
熊八
”徳! わかったかい。深みにはまったら、死んじゃうんだぜ。
獅子は獅子の子を、千尋の谷底へ突き落とすんだ。
俺もおめえがかわいいから突き落としたんだ。
もう二度と川の材木に降りて遊ぶんじゃねぇよ。”
徳次
”もうしないよ、もうしないよ。”
晩年、
シャープという大きな会社をつくることになる
早川徳次は、
熊八のことを。。。
”飲んだくれの父親だったけれども、わたしにとってはやさしい父親だった。”と
周囲のものたちに、なつかしそうに語っている。
少し前、
文科省の推進してきた、
ゆとり教育が成果の出ないまま終わった。
わたしは、
わたしの父親が、熊八のような親だったら恐ろしい。。。。
しかし、
熊八のような恐ろしい親に育てられた男が。。。
のちに
シャープという世界企業を作ったのも、また事実。
このブログで、
いままで、
何度も書いてきたフレーズがある。
貧しい中から。。。
不幸の中から。。。
子供の頃、親と離ればなれ。。。
どうも
大きな仕事をする人間には、
おもしろいほど
共通点がある。
もっとも
当事者たちにとっては、
少しも
おもしろくない共通点だと思うが。。。
つづく