山形県の人たちはラーメンが好きである。2000年頃だと思うが、県
庁所在地の都市で、一世帯当たりが年間に支払う金額の食物ランキ
ングの統計を見たことがある。ラーメンへの支出は、山形市が一番多
く、アイスクリームが第2位、日本蕎麦や和菓子、洋菓子がベスト10
に入っていることに、山形県の食文化を垣間見たことがある。
山形県には美味しい食物が沢山ある。冷やしラーメンの開発など食文
化に対する関心の高い土地柄でもある。面白いのはカステラで、山形
市は最下位の49位であるが、長崎市が第1位であるのは、外国から
の食文化流入の歴史や地方独特の風土が関係しているのだと思う。
山形県は日本蕎麦が有名であるが、地元ではラーメンの人気が高い。
山形ラーメンや米沢ラーメン、赤湯ラーメン、新庄もつラーメン、酒田ラ
ーメンなど 独特のスープや具が自慢の老舗のほか、激辛やトンコツス
ープで全国展開をするチェーン店などが、凌ぎを削り合っているラーメ
ン激戦地でもある。私の思い出深いラーメンの記憶は、戦争で焼け野原
と化した東京の新宿で、1軒だけあった支那ソバ屋の長い列に並び、醤
油に味の素とラードを入れてお湯を注いだだけのスープの支那ソバが、
食糧難に喘いでいた当時の人たちに、感動を与えていたのが思い出さ
れる。現在は高級素材の具やトッピングなど色々と工夫されたラーメン
が、消費者の共感を得て人気になっている。しかし私の好みは、シンプ
ルで山形らしい味覚を感じるラーメンである。それぞれの店主が工夫を
凝らし、ブランドラーメンとして位置づけた「山形冷やしラーメン」「酒田
ラーメン」「新庄もつラーメン」「米沢ラーメン」は、ご推薦したい美味しラ
ーメンである。
山形県のラーメンと言えば、山形市の中心部にある「栄屋本店(山形
市本町2-3-21)」をあげたい。山形県が生んだ名物「冷やしラーメン」
を開発した店である。当店では温かいラーメンや日本蕎麦も食べること、
が出来るが、やはり発祥の地の「冷やしラーメン」は、抜群の美味しさを
感じさせる。
栄屋本店の麺は自家製で一般的な太さのストレート麺である。スープ
は透明で冷たく、氷が浮かぶ珍しい醤油ラーメンである。レンゲで冷たい
スープを口に当てると食感が素晴らしい。熱いスープを啜るのがラーメン
の醍醐味であったはずだが、何故冷たいスープのラーメンを提供したい
と考えついたのか、逆転の発想の凄さに驚かされる。熱いラーメンは、冷
たくなると油が浮き味も悪くなるはずであるが、冷たいスープが透明で油
の浮く障害もなく美味しいのは、研究を重ねた成果の賜物であり、ご苦労
に敬意を表しながら美味しく「冷やしラーメン」を頂いた。
栄屋本店の「冷やしラーメン」
酒田ラーメンでお勧めしたいお店は、「三日月軒中町店(酒田市中町
2-4-9)」である。酒田市の中心部にあり、店舗は小さいが、他県の人
も評判を聞いて訪れる有名店の一つになっている。煮干・昆布など海産
物系のダシと、豚骨をベースにしたサッパリ味のスープに、鉄棒で打っ
てから2日間寝かせたコシのある熟成麺とのコラボレーションが素晴ら
しく、シンプルな美味しいラーメンである。大・普通・小の3種類の醤油
ラーメンだけのメニューであるが、昔ながらの支那ソバ(中華ソバ)を
思い出させるサッパリとした酒田ラーメンである。
人気のある酒田ラーメン「三日月軒中町店」
「新庄もつラーメン」でお勧めしたいお店は「一茶庵支店(新庄市鉄砲町
10-31)」の「もつラーメン」である。鶏の内臓が入っているスープが絶妙
な味を醸し出す。中太ストレート麺にスープが良く絡み、シンプルであっ
さりした味覚が「新庄もつラーメン」の特徴である。店に入ると名前を告げ
てラーメンを注文する。出来上がると名前を呼ばれてラーメンが運ばれ
てくる、ユニークなラーメン店である。
新庄もつラーメンの店「一茶庵支店」
米沢ラーメンでお勧めしたいお店は「ひらま(米沢市浅川314-16)」で
ある。米沢市の中心部から離れたJR置賜駅の近くにある。鶏がら3、ト
ンコツ1+煮干と各種野菜のスープに、自家製の極細手もみ縮れ麺が
良く絡んだ「米沢ラーメン」は、絶妙な味のあっさりした和風ラーメンと呼
びたい風味である。
米沢ラーメンの人気ナンバーワンの「ひらま」