□ 四季の山形


季節を楽しむ最上川舟下り

歴史の散歩道 城下町米沢の四季

出羽富士 鳥海山の四季

山岳信仰の名山 霊峰月山の四季

明治の偉業を偲ぶ松ケ岡の四季


□ 山形の春


春を告げるミズバショウ

花咲く散歩道 鶴ケ岡城跡付近の春

庄内地方の桜を楽しむ

置賜さくら回廊を巡る

村山地方の桜を楽しむ

夏を待ちわびる 庄内地方の海水浴場

港町酒田の繁栄を祝う酒田まつり

みちのくの奇祭 鶴岡天神祭

新緑の峠を越える西吾妻スカイバレー
新緑の高原を走る蔵王エコーライン
新緑の月山登山道を行く

山形県の花 白つつじ公園

酒蔵のまちの奇祭 大山犬まつり

新緑の鳥海山ブルーラインを行く

春の鼠ケ関漁港と温海温泉


□ 山形の夏


山形県を彩る初夏の花

初夏の内川と橋と金峰山

初夏の風物詩 山形特産サクランボ

山形県初夏の花 どんでん平ゆり園

山形県初夏の花 あやめ公園

山形県初夏の花 東沢バラ公園

山形県初夏の花 アジサイ

山形県初夏の風物詩 ベニバナ

庄内地方夏の風物詩 庄内砂丘メロン

東北夏の四大まつり 山形花笠まつり

絢爛豪華な山車パレード 新庄まつり
庄内地方夏の風物詩 だだちゃ豆

山岳信仰の名山 残暑の羽黒山に詣でる



□ 山形の秋


庄内地方秋の風物詩 庄内柿

山形県秋の風物詩 蕎麦の花と板そば

庄内地方秋の味覚 刈屋梨

日本一の芋煮会フェスティバル

山形県秋の味覚 ブドウ

山形県秋の花 ダリヤ

山形県の紅葉1 名山の紅葉

山形県の紅葉2 峠の紅葉

山形県の紅葉3 城址公園の紅葉

山形県秋の味覚 ラ・フランス

山形県の紅葉4 神社仏閣と紅葉

山形県の紅葉5 滝と紅葉

山形県の紅葉6 渓谷の紅葉

山形県の紅葉7 名所と紅葉

山形県の紅葉8 公園の紅葉

山形県の紅葉9 秋の最上川舟下り


□ 山形の冬


冬の大石田

雪の降る町 城下町鶴岡

冬の小京都山形 雪のある風景

閑けさの中に佇む 冬の山寺

冬の風物詩 最上川スワンパーク

冬の小京都 港町酒田を歩く

スキーのメッカ 蔵王の想い出



□ 山形県の味覚

庄内地方冬の味覚 どんがら汁
最上川雪見船と芋煮鍋

庄内地方の春の味覚 孟宗汁

山形県の味覚 山菜料理

日本海の魚介類を握る名店
山形県の味覚 山形県のラーメン
NEW
山形県の味覚 山形県の日本蕎麦 NEW




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私が生まれたのは東京都豊島区駒込である。隣の家が小松庵とい

う蕎麦屋さんだったので、幼い頃から遊びに行っては蕎麦を食べ、根

っからの蕎麦好きになってしまった。成人になってからは、美味しい蕎

麦の噂を聞くと、蕎麦を食べる旅に出掛けるようになっていた。

今までの主な訪問先は、北海道(新得・帯広・釧路)岩手県(盛岡・花

巻=わんこそば)福島県(山都・桧枝岐)長野県(戸隠・長野・上田・松

本)新潟県(へきそば)栃木県(満願寺・栗山村)東京神田(やぶ・まつ

や・砂場)東京調布(深大寺)京都府(祇園)兵庫県(出石=皿そば)福

井県(越前・永平寺)島根県(出雲=重ね蕎麦・津和野)などが 食べ歩

いた蕎麦処である。

ご縁があって、4年余り山形県で単身赴任をすることになったのは、

蕎麦好きにはたまらない幸運であった。帰京後も山形県とのご縁は続

き10年余になるが、利用した蕎麦店は650軒を超えている。


山形県の蕎麦処というと、山形・村山・大石田・白鷹地区が知られて

いたが、今では村山地区はもとより、庄内・最上・置賜地区でも美味し

い蕎麦店が次々と開業し、山形県のどこへ行っても美味しい蕎麦が食

べられるようになった。山形県の蕎麦の由来については、「写真と文章

で綴る山形紀行=山形県秋の風物詩 蕎麦の花と板そば」の中で詳し

く紹介しているのでご覧頂きたい。また、お勧めしたい蕎麦店も、地域

ごとに一覧にしてあるので、参考にして頂ければと思っている。


山形県の蕎麦は、村山蕎麦街道の蕎麦店が全国的に有名であるが、

その中でも代表格が「あらきそば(村山市大久保甲65)」である。

茅葺屋根の田舎らしい少し薄暗い広い座敷に机が並べられ、板箱に

盛られた田舎蕎麦が次々と運ばれてくる。地元の村山市周辺で収穫

された蕎麦の実を使用した、蕎麦粉100%の太打ち蕎麦は、黒くてコ

シの強い典型的な田舎蕎麦である。



山形県の日本蕎麦1
村山蕎麦街道14番店=「あらきそば」


板そばには「昔毛利」と「うす毛利」の2品がある。「うす毛利」でも十分

満喫できるボリュームであるが、蕎麦は別腹という人は2倍の量がある

「昔毛利」を注文して、田舎蕎麦に挑戦してみては如何でしょうか。

太打ちの黒いコシの強い田舎蕎麦は、のどごしの旨さも素晴らしいが、

歯に沁みる旨さが伝わってくる逸品である。当店の名物に自家製味噌で

柔らかく煮込んだ「にしんみそ煮」があり、殆どの人が蕎麦と一緒に注文

する。また、夏の季節限定品として、自家栽培の太めの茄子を田楽にし

た「なす田楽」がある。熱々の茄子に特製の甘い味噌をまぶした「なす田

楽」は、「あらきそば」の夏の風物詩として是非味わいたい逸品である。



山形県の日本蕎麦2

「うす毛利」と「にしんみそ煮」と「なす田楽」


蕎麦は人により好き好きがある。蕎麦処の山形県に来たからには田舎

蕎麦を勧めたいが、黒くて太く固めの蕎麦は苦手という人もいる。山形県

にも更科系の蕎麦店があるが、田舎蕎麦を独自の工夫で改良し、誰もが

美味しく食べられるようにした蕎麦が「三津屋本店(山形市上町1-1-75)」

の「板そば」である。JR山形駅から線路伝いに上山方面に向かうと、線路

を挟んで左に老舗の庄司屋があり、反対側の右に曲り、踏切を渡ると三津

屋本店がある。



山形県の日本蕎麦3

人気がある山形蕎麦の「三津屋本店」


三津屋本店では、名物の「大板そば」を注文したい。板箱の中に食べ易

く、12の小山に盛られた蕎麦が「大板そば」である。5人前の板そばであ

るが、蕎麦好きの人は2人で注文するようである。薬味のネギ、とろろ、な

めこ、山菜などが脇役に添えられ、海老や季節の山菜、季節の野菜の天

ぷら、季節感ある漬物が、蕎麦の美味しさを引き立てる。


山形県の日本蕎麦4

三津屋本店の名物「大板そば」


蕎麦処の大石田町は蕎麦の名店が多い。次年子地区の「七兵衛」や

「仁三郎」。横山地区の「きよそば」や「なんば」などである。あえてお勧め

したいお店に、横山地区の「蕎麦処なんば(大石田町横山711)」をあげた
い。蕎麦店としての歴史は浅いが、自家栽培の大石田産蕎麦の実100%

の蕎麦粉を、挽きたて、打ちたて、茹でたての手打麺でもてなしてくれる。

大石田産蕎麦の実は少し小さ目であるが、特有の甘みと香りの良いのが

お勧めする理由である。蕎麦は黒くて太めでコシの強い食べ易い蕎麦で

ある。また、大石田町は漬物の美味しい町であり、冬の青菜など自家で

栽培した野菜の漬物、季節の山菜や野菜の天ぷらが添えられて出され

るのも嬉しいかぎりである。

なお、「なんば」の田舎蕎麦の写真は、「写真と文章で綴る山形紀行=

冬の大石田」に掲載しているので、ご参考にして頂きたい。



山形県の日本蕎麦5

大石田産粉田舎蕎麦の「蕎麦処なんば」





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山形県の人たちはラーメンが好きである。2000年頃だと思うが、県

庁所在地の都市で、一世帯当たりが年間に支払う金額の食物ランキ

ングの統計を見たことがある。ラーメンへの支出は、山形市が一番多

く、アイスクリームが第2位、日本蕎麦や和菓子、洋菓子がベスト10

に入っていることに、山形県の食文化を垣間見たことがある。

山形県には美味しい食物が沢山ある。冷やしラーメンの開発など食文

化に対する関心の高い土地柄でもある。面白いのはカステラで、山形

市は最下位の49位であるが、長崎市が第1位であるのは、外国から

の食文化流入の歴史や地方独特の風土が関係しているのだと思う。


山形県は日本蕎麦が有名であるが、地元ではラーメンの人気が高い。

山形ラーメンや米沢ラーメン、赤湯ラーメン、新庄もつラーメン、酒田ラ

ーメンなど 独特のスープや具が自慢の老舗のほか、激辛やトンコツス

ープで全国展開をするチェーン店などが、凌ぎを削り合っているラーメ

ン激戦地でもある。私の思い出深いラーメンの記憶は、戦争で焼け野原

と化した東京の新宿で、1軒だけあった支那ソバ屋の長い列に並び、醤

油に味の素とラードを入れてお湯を注いだだけのスープの支那ソバが、

食糧難に喘いでいた当時の人たちに、感動を与えていたのが思い出さ

れる。現在は高級素材の具やトッピングなど色々と工夫されたラーメン

が、消費者の共感を得て人気になっている。しかし私の好みは、シンプ

ルで山形らしい味覚を感じるラーメンである。それぞれの店主が工夫を

凝らし、ブランドラーメンとして位置づけた「山形冷やしラーメン」「酒田

ラーメン」「新庄もつラーメン」「米沢ラーメン」は、ご推薦したい美味しラ

ーメンである。


山形県のラーメンと言えば、山形市の中心部にある「栄屋本店(山形

市本町2-3-21)」をあげたい。山形県が生んだ名物「冷やしラーメン」

を開発した店である。当店では温かいラーメンや日本蕎麦も食べること、

が出来るが、やはり発祥の地の「冷やしラーメン」は、抜群の美味しさを

感じさせる。


山形県のラーメン1
山形冷やしラーメン発祥の店「栄屋本店」


栄屋本店の麺は自家製で一般的な太さのストレート麺である。スープ

は透明で冷たく、氷が浮かぶ珍しい醤油ラーメンである。レンゲで冷たい

スープを口に当てると食感が素晴らしい。熱いスープを啜るのがラーメン

の醍醐味であったはずだが、何故冷たいスープのラーメンを提供したい

と考えついたのか、逆転の発想の凄さに驚かされる。熱いラーメンは、冷

たくなると油が浮き味も悪くなるはずであるが、冷たいスープが透明で油

の浮く障害もなく美味しいのは、研究を重ねた成果の賜物であり、ご苦労

に敬意を表しながら美味しく「冷やしラーメン」を頂いた。



山形県のラーメン2

栄屋本店の「冷やしラーメン」


酒田ラーメンでお勧めしたいお店は、「三日月軒中町店(酒田市中町

2-4-9)」である。酒田市の中心部にあり、店舗は小さいが、他県の人

も評判を聞いて訪れる有名店の一つになっている。煮干・昆布など海産

物系のダシと、豚骨をベースにしたサッパリ味のスープに、鉄棒で打っ

てから2日間寝かせたコシのある熟成麺とのコラボレーションが素晴ら

しく、シンプルな美味しいラーメンである。大・普通・小の3種類の醤油

ラーメンだけのメニューであるが、昔ながらの支那ソバ(中華ソバ)を

思い出させるサッパリとした酒田ラーメンである。



山形県のラーメン3

人気のある酒田ラーメン「三日月軒中町店」


「新庄もつラーメン」でお勧めしたいお店は「一茶庵支店(新庄市鉄砲町

10-31)」の「もつラーメン」である。鶏の内臓が入っているスープが絶妙

な味を醸し出す。中太ストレート麺にスープが良く絡み、シンプルであっ

さりした味覚が「新庄もつラーメン」の特徴である。店に入ると名前を告げ

てラーメンを注文する。出来上がると名前を呼ばれてラーメンが運ばれ

てくる、ユニークなラーメン店である。



山形県のラーメン4

新庄もつラーメンの店「一茶庵支店」


米沢ラーメンでお勧めしたいお店は「ひらま(米沢市浅川314-16)」で

ある。米沢市の中心部から離れたJR置賜駅の近くにある。鶏がら3、ト

ンコツ1+煮干と各種野菜のスープに、自家製の極細手もみ縮れ麺が

良く絡んだ「米沢ラーメン」は、絶妙な味のあっさりした和風ラーメンと呼

びたい風味である。



山形県のラーメン5

米沢ラーメンの人気ナンバーワンの「ひらま」






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庄内地方を旅する時の楽しみの一つは、日本海の新鮮な魚介類を

握る鮨を食べることである。何度か同じ店を利用していると、自然に

ご主人と親しくなって、すし談義に花が咲く。


私は、鮨についての知識は、あまり詳しいとは言えないが、日本海

の新鮮な魚介類の鮨と言えば、まず、のどぐろ、そして、いか、たこ、

かれい、たい、そい、ひらめ、あら、かわはぎ、とらふぐ、ほうぼう、い

わし、さくらます。最近は南の魚と思っていた太刀魚が、庄内でも採

れるそうである。更に、あわび、岩がき、ぼたん海老などが、庄内の

旨いネタであると記憶している。

庄内で良く利用する鮨店は、酒田の「こい勢」と「鈴政」。鶴岡の「八

方寿し」と鼠ケ関の「鮨処朝日屋」である。いずれも地元の人から高

い評価を受けているが、私も推薦したい美味しい鮨店である。


酒田の「こい勢」は、十数年前に評判を聞いて訪ねてみた鮨店で

ある。庄内の美味しい鮨ダネを、お任せするので握って欲しいと注

文したのが最初であった。その時の美味しかったことの感激は、今

でも忘れない。庄内地方は厳寒期に脂が乗った大ぶりの寒鱈が有

名であるが、鱈が良く採れるタラ場があるという。タラ場で採れたボ

タン海老は、タラバ海老とも呼ばれているということも、気さくなご主

人に教えて頂いたことである。



庄内の寿司の名店 こい勢

酒田の鮨の名店 「こい勢」


今日の昼食は「こい勢」に決めた。いつものように、お任せ鮨を握

って頂くことにした。庄内を代表する塩で食べるアオリイカ、炙りの

どぐろ、炙り太刀魚が握られる。続いて、いわし、さくらます、まぐろ、

うに、かわはぎ、とらふぐ、ほうぼう、最後に卵焼きが握られずに出

るコースである。まぐろは近海ものの本まぐろが握られるが、今日

は勝浦の本まぐろが握られた。季節によっては、大間の大物まぐ

ろ(100kg以上)を握って頂いたこともある鮨の名店である。



まずは あおりいか・のどぐろ・たちうおから

酒田の鮨の名店 「こい勢」 お任せコース

まずは左から 太刀魚、のどぐろ、アオリイカ


酒田の「鈴政」は、日和山公園にある日枝神社の鳥居下にある。

近くには観光名所の相馬楼があって、雛蔵画廊と舞娘茶屋に人気が

あり、酒田舞娘の演舞が鑑賞出来る。港町酒田の情緒ある雰囲気を

醸し出す道の奥に「鈴政」がある。ここでも注文は、地場の新鮮な魚

介類を、お任せで握って頂くことにする。以前に長い間ハタハタの漁

獲が禁止されていたが、解禁の直後に湯引きのハタハタを頂いたこ

とを思い出す。美味しかったことの記憶は、いつまでも忘れない。



庄内の寿司の名店 鈴 政

酒田の鮨の名店 「鈴 政」


鶴岡市の鮨店で推薦したいのは「八方寿し」である。鮨の好きな人だ

けに旨い鮨を食べて頂くのをモットーにしているので、PRはしていない。

観光客がどやどやと来るのは好まないようである。それでも噂を聞いて

訪ねる人が多く、いつも満席なのが凄い。地場の新鮮な魚介類を大き

めに切った、ボリューム感のある旨い鮨である。庄内を代表する鮨店

だと思っている。



庄内の寿司の名店 八方すし

鶴岡の鮨の名店 「八方寿し」



山形県と新潟県の県境にある鼠ケ関は、奥の細道で松尾芭蕉が通

り、逃避行の義経一行が舟で上陸した地である。歴史上では関所跡

があり、近代施設にヨットハーバーがある。海岸が美しく海水浴が出

来る浜辺や鼠ヶ関漁港がある。「鮨処 朝日屋」は、鼠ヶ関漁港に水

揚げされた地場の新鮮な魚介類を握る鮨店である。日本海の大海原

を眺めながら、鮨を頂けるのは何故か得をしたような感じがする。



朝日屋寿司店
鼠ヶ関の鮨の名店 「鮨処 朝日屋」






山形県の味覚 山菜料理

テーマ:

山形県は山菜の宝庫である。霊峰月山は雪に埋もれたまま純白な

雄姿を見せているが、山麓では雪解けが進み、春を待ちわびていた

山菜は、まず、フキノトウが土手に顔を出し、春山菜の美味しい季節

が始まる。二輪草やかたくりの花が咲き、こごみ、たらの芽、しどけ、

あいこ、うるい、みづ、ぜんまい、わらびなどの山菜が、次々と道の駅

やドライブインの山菜特売所に並び、山国の春本番が到来したことを

告げる。


山形県西川町は、古くから出羽三山に参詣する旅人の宿場町とし
て栄え、今でもその面影を残している。西川町には、山菜料理の老

舗「玉貴」と「出羽屋」があって、山菜を美味しく料理して山菜の魅力

を伝えている。数多くの種類がある山菜を、天ぷら、おひたし、和え

もの、煮物、漬物、そして、みそ汁の具、竹の子ご飯で、旬の味覚

の素晴らしさを味あわせて頂ける。


温泉宿に泊まる観光客も、春の季節は山菜料理がお目当てのよ

うである。浴衣姿で朝市を見物して、山菜を売るオバチャンと掛合い

をするのも楽しい想い出になる。国道沿いにある道の駅やドライブイ

ンには山菜特売所が設けられ、朝摘みの山菜が篭に入れられて並

べられている。新鮮なうちに次々に買われて行く光景は、山形県の

山間に春本番が来たことを知らせる。


山菜料理の名店 玉 貴

山菜料理の老舗 玉 貴


霊峰月山の麓の町は、春になると山菜料理の季節が訪れる。お座

敷から寒河江川の清流と美しい庭園を鑑賞しながら、山菜料理が頂

けるのが「玉貴」である。春は山菜が主役であるが、秋はきのこが主

役になり、季節のきのこ料理がとても美味しい。また、名物の毎年2

月から3月の献立にある、ひな膳料理が逸品である。江戸時代の豪

華絢爛の雛壇が大広間に飾られ、鑑賞したあとでひな膳料理を頂く

のは、ささやかな贅沢である。



玉貴の昼席山菜料理の前菜
玉貴の山菜料理 昼席の前菜


今日の昼食は玉貴の山菜料理を頂くことにした。玉貴は予約制で、

季節によってはなかなか予約が取れないことがある。運良く個室が

一部屋空いていたので、雪解けで水量が増した寒河江川の急流を

見ながら、山菜料理を堪能した。

濃厚なブドウ液で乾杯してから、前菜にはわらびの煮物、あけび

の芽、きくらげ、二輪草のおひたし、月山竹のみそ汁、くるみごま和

えが並ぶ。アユの塩焼きが出されたあとは、こごみ、たらの芽、こし

あぶら、うどの天ぷらが続き、あつあつの焼月山竹と焼うどは香りが

良く、絶妙の味である。じゅんさい、きのこ汁、少し味噌をつけて頂く

竹の子ご飯。草もち、漬物、デザートと続くコースである。


山菜料理の名店 出羽屋

行者宿の面影を残す佇まいの 出羽屋


西川町にある「出羽屋」は、山形県の山菜料理店では「玉貴」と双璧

の老舗である。出羽三山の玄関口にあって、山岳信仰に厚い修験者

や旅人にとっては貴重な宿であつた。今でも行者宿の面影を残す佇ま

いは、往時の険しい街道をひたむきに歩いていた旅人の姿や、宿で疲

れた身体を癒す姿を偲ぶことが出来る。美しい庭園が見えるお座敷で、

山菜料理コースを頂けることが出来るが、昼食として、山菜そばや山菜

麦切りも注文することも出来る。また、旅の行程によっては、出羽屋で

宿泊をすることが出来るので、貴重な山菜料理店と言えそうだ。



にしかわ道の駅の山菜売場

にしかわ道の駅 山菜特売所のわらび


山菜の季節になると、国道の沿道にある道の駅やドライブインに、

朝摘みの山菜が農家の主婦によって次々と集められ、特設の山菜

特売所が賑わいを見せる。わらび、みづ、うるい、行者にんにくなど

の山菜が、次々と篭に入れられて行くが、すぐに篭の中が空になる。

山形県の人たちが山菜好きなのは、長い間雪の中に閉ざされ、春の

到来を待ちわびていたからこそ、山菜の季節を歓迎するのだと思う。


肘折温泉の朝市

肘折温泉朝市で観光客と山菜を売るオバチャン


霊峰月山を源にする銅山川の両岸に並ぶ肘折温泉郷は、国内有数

の豪雪地帯として知られ、秘境の湯治場として人気がある。早朝に新

鮮な山菜やきのこ、野菜、果物、漬物などを、地元のオバチャンが地

べたに座り、浴衣姿の観光客を相手に、声を張りあげて売る光景は、

肘折温泉の名物朝市である。湯治場で自炊する人、お土産に求める人、

春の早朝の微笑ましい平和なひとときである。



鶴岡市の奥座敷である湯田川温泉は、泉質が優しく感じる湯量豊

富な良質の温泉が湧き出ている。厳寒期は、由良港に水揚げされた

寒鱈をブチ切りにして、大鍋で煮込む「どんがら汁」や「あんこう鍋」

が名物の湯田川温泉であるが、雪解けが進み、山吹の黄色い花が

咲く頃になると、孟宗竹の筍が竹林の土の中から頭をもたげ、春の

庄内地方の味覚「孟宗汁」の季節が訪れる。


金峰山の山麓にある湯田川温泉の一帯は、孟宗竹が生息する群

生地として、日本の最北の地にあたる。孟宗汁は、朝掘りの新鮮な

筍を厚めに乱切りにして、厚揚げや椎茸と共に、酒粕などの隠し味

を加えた地元の味噌で味を調える。濃厚で甘味のある絶妙な味噌

味で柔らかく煮込まれた、乱切りされた孟宗の筍の味覚に舌鼓を打

つ。朝堀りならではの新鮮な筍が、山うどと共に刺身として頂くことが

出来るのも嬉しいことである。


桜の名所と知られる松ケ岡は、松ケ岡本陣がある裏手の林に孟

宗竹が群生する。満開の桜の花が散り、木々の若葉が眩しく映る

頃になると、竹林の中から土を突き抜けて筍が頭をもたげる。旧蚕

室の1棟を活用した食事処一翠苑は、高級小麦粉にシルク液を練

り込んだ、絹麺が名物になっているが、春本番になると、孟宗汁と

絹麺を組み合わせた、春のメニューに人気が集まる。


湯田川温泉ますや旅館
湯田川温泉の老舗 ますや旅館

本日の宿は、湯田川温泉の老舗 ますや旅館にした。名物の檜風

呂に身体を委ね、心身をリラックスさせてから「孟宗づくし」の郷土料

理を楽しむ。湯田川温泉は、地元が生んだ作家 藤沢周平がこよな

く愛した湯治場の温泉であり、古き昔から多くの文人が訪ねて温泉を

楽しみ、旬の郷土料理に舌鼓を打っていた地でもある。



郷土料理 孟宗づくし
春の郷土料理「孟宗づくし」


温泉を満喫したあとの楽しみは夕餉である。朝掘りの新鮮な孟宗

の筍と山うどの刺身、焼たけのこ、たけのこと山うどのきんぴら、た

けのこときゅうりのごま和え、浅漬け、そして、あうあつに煮込まれた

メインの孟宗汁が食べごろになる。朝堀りの孟宗を厚切りにして、厚

揚げや椎茸と煮込んだ味噌仕立ての孟宗汁は、まさに春先の旬の

味覚の王様である。筍がこれほど柔らかいものだとは始めて知った。



朝採りされた孟宗竹の筍
朝掘りの孟宗竹の筍がづらりと並ぶ

温泉街の朝は早い、早朝に掘られた孟宗竹の筍を乗せたバイクが、

次々と集まってくる。目方を量っては代金を受取り、また筍を掘りに向

って行くようである。近所の人や観光客が、朝堀りの孟宗を求めに集ま

り、目方を量っては買い求めて行く。湯治場らしい和気あいあいとした

風景が、微笑ましく春の朝の爽やかさを包み込んでいた。。


むっくりと頭を出した筍
松ケ岡の竹林ですくすく伸びる孟宗竹の筍

戊申戦争後の明治5年、旧庄内藩士3,000人が荒地を開墾して桑を

植え、養蚕事業を興し、製糸や絹織物を生産した。今は桑が庄内柿

に変わり、旧蚕室は資料館や食事処として活用されている。松ケ岡

本陣裏手にある竹林では、5月の中旬頃には、春本番を告げる孟宗

竹の子供が土の中から頭をもたげ、少し首を傾げながら、想いに耽

っているような姿で立ち、春の訪れを歓迎しているようである。


孟宗汁と絹麺
一翠苑の春本番メニュー 孟宗汁と絹麺

松ケ岡開墾場跡地にある、旧蚕室の1棟を活用した食事処一翠苑

は、絹麺と季節の食材を活かしたメニューが人気である。絹麺とは、

高級小麦粉にシルク水溶液を練り込んで、絹のように艶やかでコシ

のある、細めの麦切風麺のことである。春の献立で人気のあるのは、

赤こごみ、赤みず、こしあぶら、月山竹の天ぷらが添えられた春の

絹麺であるが、松ケ岡で採れた孟宗の筍を使った孟宗汁を合わせ

て注文してみたい。お酒を隠し味にした濃厚な味噌仕立ての孟宗汁

は、季節感を味わえる庄内地方旬の味覚の代表である。





最上川雪見船と芋煮鍋

テーマ:
寒い冬は鍋ものが美味しい季節である。山形県の冬の味覚に、庄内

地方の「どんがら汁=寒鱈汁」があるが、山形県の鍋といえば、秋の芋

煮鍋が有名である。毎年9月の第一日曜日に、山形市内の河川敷で開

催される「日本一の芋煮会フェステバル」は、全国から沢山の観光客が

集まって、お祭りのような賑わいになる。秋の季節は山形県全土で芋煮

を楽しむ習慣があり、山形市や米沢市周辺では、コクのある醤油仕立て

の芋煮鍋で牛肉が使われるが、庄内地方では、味噌仕立ての芋煮鍋で

豚肉を使うところが対照的である。山形県の芋煮鍋が美味しいのは、主

役の里芋が美味しいからである。関東地方の居酒屋でもメニューに芋煮

鍋を加えているところがあるが、やはり芋煮鍋の里芋は、山形県産に限

ると思っている。


芋煮会1

山形市日本一の芋煮会フェステバルに使う大鍋


芋煮鍋のシーズンは秋だが、何故か冬の寒い季節に、熱々の芋煮

鍋を食べたくなる。かねてより、最上川舟下りの雪見船に乗って、雪景

色を観賞しながら芋煮を食べるコースがあると聞いていたが、乗船予

約方々問合せたところ、芋煮鍋と鮎の塩焼きにお弁当をセットしたコー

スが 1,575円で楽めるということが判った。早速友人を誘い、名物の大

徳利に入った濁酒(どぶろく)を併せ注文して、冬の山形を訪ねること

にした。


早朝JR大宮駅山形新幹線ホームに集まったのは、古希を少し過ぎ

た4人の旅人で、高校時代の同級生である。サラリーマンを卒業して

からは読書と散歩、時々旅行の年金生活を楽しんでいる。今回の旅

の目的は、最上川雪見船に乗って、雪景色を観賞しながら芋煮鍋を

食べ、さらに日本海の荒海にもまれて脂の乗った、真鱈をブチ切りに

して煮込んだ「どんがら汁」を食べることである。

大宮発6時54 つばさ101号に乗車する。山形県内に入ると積雪した

田畑の中を走り、豪雪の町大石田を過ぎると終点新庄に着く。陸羽西

線に乗換えローカル線の旅を楽しむ。10時33分に無人駅古口に着くと、

最上川雪見船 10時50分発に乗ることができる。


雪の古口駅

雪の中を走る陸羽西線と古口駅ホーム


乗船口戸沢藩船番所で乗船手続きを済ませて雪見船に乗ると、船

内には予約していた芋煮鍋と鮎の塩焼きとお弁当のセットが準備され

ていた。船頭さんが大事そうに抱えていたのは、茶色い濁酒の入った

大徳利である。

雪見船は静かに岸を離れて下って行く。煮立った芋煮鍋から里芋や

牛肉が器に盛られ、熱々の芋煮を食べる。鮎の塩焼きにかぶりつき、

白く淀んだ船旅にふさわしい濁酒を楽しむ。


雪見船に準備された芋煮鍋
雪見船に準備された芋煮鍋と濁酒


最上峡を下る雪見船から見る対岸は、木々に降り注いだ雪が霧氷

の森になって美しい。雪が溶けて流れ落ちるが、寒さのためか沢山

の氷柱(ツララ)になって、渓谷美のような冬景色を演出する。最上

峡に聳え立つ自然杉や義経伝説、松尾芭蕉の足跡など、船頭さん

が軽妙なタッチで面白可笑しく説明する。そして、美声で唄い上げる

地元の民謡は、情緒たっぷりの「最上川舟唄」である。濁酒に芋煮

鍋、塩焼きの鮎とお弁当を食べながら雪景色を観賞する。滔滔と流

れる大河最上川の流れに身を任せ、情緒豊かな唄声に耳を澄ませ

て楽しむ、約1時間の船遊びである。


氷柱が美しい最上川

最上川峡の氷柱(ツララ)が美しい


最上川は山形県の人々が、親愛の情を込めて母なる川と呼んでいる。

松尾芭蕉・曽良主従が奥の細道の旅で酒田に下り、義経と家来の弁慶

一行が、白糸の滝を眺めながら川を上り、藤原秀衝のいる平泉を目指

した歴史を見つめてきた大河が最上川である。今も大河は、ゆったりと

流れ、永遠の平和を願っているかのようである。冬景色の景観を眺め、

名物の芋煮を食べる最上川舟下り雪見船の旅は、日本人ならではの、

心身を癒す素晴らしい楽しみ方だと思っている。


冬の最上川

滔滔と流れる大河 冬の最上川







寒い冬は鍋ものが美味しい季節である。関東地方の居酒屋の定番

は寄せ鍋と湯豆腐。ふぐチリ、あんこう鍋、鴨鍋、土手鍋(かき)、ぼた

ん鍋のほか、最近はチャンコ鍋やキムチ鍋が人気のようである。

北国には石狩鍋やキリタンポ鍋など地方独特の食文化があるが、な

かでも庄内地方の冬の味覚「どんがら汁(寒鱈汁)」は、関東では食べ

ることが出来ない、庄内地方だけで味わえる冬の味覚の王様である。


庄内地方が厳寒期に入ると、日本海の荒海にもまれた真鱈が丸々

と太って脂が乗り、特に寒鱈と呼ばれるようになる。新鮮なアラと内臓

と白子を主役に、捨てる部分が少ないと言われる寒鱈をブチ切りにし

て、大根や長ネギ、豆腐、昆布などと一緒に大鍋に入れ、味噌仕立て

で煮立てる豪快な鍋が「どんがら汁」である。庄内地方ではお雑煮な

どにも良く使う岩のりを、お碗に盛られた「どんがら汁」に振りかけて

食べる。両手でフウフウと少し冷ましながらお碗を啜る光景は、日本

に生まれた人々が、冬の故郷を思い出し、郷愁を感じる風景と言えそ

うである。


私たちは、古希を過ぎた高校時代の同級生グループである。今迄に

竜飛崎や青森、弘前、深浦、秋田、男鹿、酒田、松島、三陸、遠野、花

巻、鳴子、新庄、肘折、大石田、山形、下北、三戸、盛岡、角館など東

北の旅を楽しんできた。

今年(2008年)の第1号の旅は、昨秋の旅行の時に、庄内地方の冬

の味覚「どんがら汁」を食べに行くことを決めていた。今年の「鶴岡冬

まつり=日本海寒鱈まつり」は、1月20日(日)に開催される。酒田日本

海寒鱈まつりは、1月26日(土)・27日(日)に、由良寒鱈まつりは1月27

日に開催される。


寒鱈まつり会場

鶴岡冬まつり=日本海寒鱈まつり会場ゲート


1月20日 上越新幹線で新潟を経て、鶴岡駅に着いたのは12時47分

であった。昨夜まで降り続いた雪も止み、厳寒の地では暖かいお日柄

のようである。早速「鶴岡冬まつり=日本海寒鱈まつり」会場に駆けつ

けた。会場入口に「日本海寒鱈まつり」のゲートがあり、10時30分から

スタートした寒鱈まつりは、13時頃には最高潮となって盛り上がってい

た。大鍋から1杯500円の「どんがら汁」のお碗を受取り、熱い汁を啜る。

鶴岡での第一声は「これは美味い!」という感嘆の言葉であった。鶴岡

市街のメイン通りは、テントが延々と続いて張られ賑わいを見せている。

年に一度の厳寒の食のまつり「寒鱈まつり」は、地元に住む誰もが待ち

かねていた楽しい冬の行事のようである。寒い会場は笑顔また笑顔が

溢れ、遠来の観光客との会話も弾んでいるようである。


寒鱈まつり会場風景

大鍋の湯気を浴びながらどんがら汁を勧める売子


鶴岡冬まつりを満喫したあとは、雪景色が素晴らしい内川の川岸

と鶴ケ岡城跡鶴岡公園を散策する。致道博物館に立ち寄り、冬の厳

しい庄内地方の生活様式を、生活用具を通して観賞する。日本人は

木を色々と工夫して生活に役立てていたことが伺える。庄内地方の

「木の文化」を展示した致道博物館には、先人の知恵が満ち溢れて

いた。歴史と文化の世界を堪能してから、荒海が良く似合う厳寒の

日本海海岸へと向かう。

今日の日本海は、厳寒の冬季では比較的穏やかな海である。それ

でも湯野浜海岸に押し寄せる高波は、白く荒々しく激しさを増しなが

ら海辺を襲ってくるようだ。この大海の中で、丸々と太った真鱈が泳

いでいるのかと思うと、少し感慨深げになるのは何故であろうか。


日本海の荒波

湯野浜海岸に押し寄せる日本海の荒波


本日の宿は、湯野浜温泉海辺のお宿一久を選んだ。客室数は19室

で家族的な雰囲気をゆったりと味わえる和風の宿である。日本海を一

望し、沈む夕陽が見られる客室と、源泉100%の全量掛け流しの温泉、

料理の美味さには定評のある旅館である。今回の旅の夕食は「寒鱈

汁コース」である。厳寒期の日本海の荒海にもまれて脂が乗った真鱈

は、由良漁港に水揚げされたばかりの大振りで新鮮な寒鱈である。


湯野浜温泉射一久

湯野浜温泉 海辺のお宿一久 正面玄関


日本海に夕陽が沈む頃から、庄内地方の冬の味覚「寒鱈汁コース」

の夕食が始まる。食前酒の月山ワインで健康であることを祝して乾杯。

先付けはヤリイカの山かけにキャビヤと山葵が添えられている。前菜

の白子のポン酢は、私にとっては美味しいものの頂点にランクされて

いる大好物である。寒鱈の西京焼き、寒鱈の昆布〆、寒鱈と白子の

串揚げは、初めて味わった珍味である。そして主役は大鍋の中で煮

立っている「どんがら汁」である。白子が沢山入っているのがとても嬉

しく、何杯もお代わりが進む。寒鱈のオンパレードである。

寒鱈料理の脇を固める献立がまた素晴らしい。氷のかまくらの器に

盛られたお刺身は、脂の乗った白身のホウボウ、荒海にもまれ身の絞

まったヒラメ、庄内の海の王様タイ、生きの良いボタン海老である。

焼物には庄内名物口細カレイの素焼き、庄内産3年ものの活アワビの

陶板焼、米沢牛のステーキをミニ丼にしたご飯がとても美味しかった。

食通気取りで美味しいものを追い求める4人のグループであるが、バ

ランスがとれた質・量とも適切な献立に惜しみない賛辞を贈る。今年は

幸先が良く、庄内地方の冬の味覚に出会うことが出来た幸運を、明日

への生活へ繋げられると、大満足の旅であった。


どんがら汁

庄内地方冬の味覚「どんがら汁」




松尾芭蕉、曽良主従が川舟に乗って最上川を下ったことは、奥の

細道に記され、名句「五月雨や 流れも早し 最上川」と詠んだこと

は有名である。芭蕉主従が辿った最上川舟下りを、山寺、出羽三山

神社と共に、山形県の三大観光拠点に成功させたのが、最上峡芭

蕉ライン観光株式会社である。昭和39年に会社を設立して運航を開

始してから、毎年20万人以上の人々が景観の船旅を楽しんでいる。

四季折々の景観が素晴らしい最上川舟下りは、日本有数の観光名

所である。


乗船場のある戸沢藩船番所(戸沢村)から少し遡った上流に、芭蕉、

曽良主従が乗船したと言われる、本合海(新庄市)旧舟着場がある。

そこには「芭蕉乗船の地」の標柱と芭蕉、曽良主従の像がある。背景

に最上川の激流に洗われて侵食した断崖が見えるが、八向楯(城)

跡がある八向山である。秋はそそり立つ断崖が紅葉の山になって、

素晴らしい景観である。現在の本合海旧舟着場付近は、さざ波の立

つ浅瀬になっているので、最上川舟下りの旅は、少し下った古口から

出発する。


最上川舟下り1

芭蕉、曽良主従乗船の地と八向山の紅葉


山形新幹線が新庄駅に着くと、奥羽西線に乗換えて古口駅まで行

く。最上川舟下り乗船場の戸沢藩船番所までは徒歩で5分位である。

また乗船場には、前日銀山温泉や天童温泉に宿泊して楽しんだ団体

客の大型バスが、次々と到着する。安全運航の準備に忙しい船頭さん

の動きが活発である。乗船場に停泊している遊覧船が、出番を待って

いる姿が微笑ましい。


最上川舟下り乗船場

乗客を待つ遊覧船と最上峡の紅葉


遊覧船は沢山の人たちを乗せて紅葉の最上峡を下る。仙人堂付近

からは山々の紅葉も一段と深まり絶景の連続である。船頭さんの美声

で、最上川舟唄「ヨーイサノマカショ エンヤーコラマーカセ」と唄いだす

と、ジーンと胸に染み渡って日本人ならではの旅情を感じる。英語バー

ジョンや韓国バージョンの替歌が披露されたり、手拍子よろしく真室川

音頭の賑やかな場となることもある。誰もが楽しそうに、秋の船旅に興

じているようである。


最上峡の紅葉3

紅葉の最上峡を下る仙人峡付近の遊覧船


遊覧船は滔滔と流れる大河最上川を下って行く。紅葉した山々は、

自然杉と赤や黄色で染まった木々で埋まり、人が立ち入ったことの

ない大自然の懐を、流れに任せながら滑るように進んで行く。母なる

川と呼ばれる最上川の雄大な流れに触れ、疲労していた気持ちが癒

されていくようである。


最上川舟下り4
紅葉した大自然の中を下る遊覧船


最上川舟下りの終点である下船場は、紅葉と一筋の滝が落下する

白糸の滝の近くにある。芭蕉、曽良主従も感慨深げに白糸の滝を仰

いだと思うし、逃避行の源義経一行も、不安の中で光を見出すかのよ

うに、白糸の滝を見上げていたように思う。古くから歴史の変化を見つ

めてきた白糸の滝は、今、我々に何を告げようとしているのかと瞑想し

ていると、約1時間の船旅は終了する。誰もが満足げに、紅葉の最上

川舟下りの旅を、振り返っているようである。


最上川舟下り5
紅葉の頃の白糸の滝と最上川舟下り遊覧船





日常の生活の中で、ぶらりと散歩する楽しみがある。近くの公園

を訪ねると、緑の木の下で遊ぶ親子や、ベンチで憩う老夫婦の慎ま

しやかな姿が見られ、人生のぬくもりを感じることがある。秋になっ

て木々が色づく小春日和に、紅葉の名所公園を訪ねるのも、日本

人として生まれた特権なのかも知れない。


大山公園は、酒蔵の町大山(鶴岡市)の酒造家加藤嘉八郎氏が、

明治時代に大山城跡を整備して造成した公園である。サクラの名所

として知られ、また、大山下池は白鳥の飛来地としても知られている。

秋も深まり山々が色づいてくると、遠来のお客様白鳥が飛来する。

紅葉した山々を背景に、湖水に憩う白鳥や水鳥たちが、長閑な秋の

日を楽しんでいた。


大山公園下池

大山下池の紅葉と湖水に憩う白鳥と水鳥たち


山形市の中心部東原町に、紅葉の名所もみじ公園がある。紅宝庵

清風荘として、茶会を催すなど公開されているが、昔は真言宗の巨刹

宝憧寺の庭園であった。庭好きの山形城主松平下総守15万石が、元

禄時代に池泉回遊庭園を造成したもので、後年築山にあった楓の巨

木に因んで、もみじ公園と名付けられた。古木は惜しくも枯死したが、

赤く色づいた楓の葉が、市街地にある庭園公園に秋の訪れを告げて

いた。


もみじ公園

秋の紅葉が映える池泉回遊庭園もみじ公園


烏帽子山公園(南陽市)は、置賜地方を一望できる小高い山の上の

公園である。日本の「さくらの名所100選」に選ばれ、春は1000本のサ

クラが咲き誇る名所である。烏帽子山八幡宮の大鳥居は、石造りで石

に継ぎ目のない鳥居では日本一大きい。秋は紅葉した楓が、大鳥居に

寄添うにして、秋景色を演出していた。


烏帽子山公園
日本一大きい継ぎ目のない石の大鳥居ともみじ


鶴布山珍蔵寺(南陽市)は、完正元年(1460年)極堂宗三和尚に

より開山されたと伝えられる名刹で、民話「鶴の恩返し」ゆかりの寺

である。寺の名「鶴布」は、鶴の恩返しに羽を織った布に由来し、珍

蔵寺の名は、珍蔵が鶴を助けたことに由来する。紅葉の名所として

知られ、「鶴の恩返し」と刻んだ梵鐘と紅葉のコントラストが美しい。


珍蔵寺

「鶴の恩返し」ゆかりの珍蔵寺梵鐘ともみじ


出羽三森の一つである舞鶴山の頂上に舞鶴公園(天童市)がある。

月山や朝日連峰が望める景観の地で、春はサクラの名所として人間

将棋が行われる。花笠音頭の中で「花の山形 もみじの天童」と唄わ

れるように、天童は紅葉が美しい町である。公園には「王将」の石碑が

あり、色づいた木々が囲んで秋の季節を告げていた。


舞鶴公園
舞鶴公園の王将の石碑と紅葉