その様子は、サバンナで獲物を探すライオンのようである。
遊び相手のいない水曜日。
あーちゃん(6歳2ヶ月)は、はる君(4歳0ヶ月)のバスのお迎え場所についてきて、
マンションのエントランスにいる子供達を、キョロキョロ見つめている。
時間がありそうな子を見つけると、
その子の側に近づいていき、だんだん距離を縮めていき、
顔を至近距離まで近づけて、彼女がささやくように言うのだ。
「ねぇねぇ、今日何か用事ある?」
びっくりするほど顔が近くて、
げっ、嫌がられんじゃないの、それ?と、いつも止めたくなる。
でも、なりふり構わずプライベートスペースを突破する訳じゃないし、
実際、相手に拒絶された事もないし、
彼女なりに、距離を縮めた上での行動だと思うので、
敢えて見ないようにする。(見ると口を出したくなるから)
コミュニケーション感覚の機微は、自分で学習するしかない。
はる君(4歳0ヶ月)は、いつだって、
お姉ちゃんの獲物のおこぼれをもらう。
あーちゃんが遊び相手を確保すれば、必然的にはる君もついていく。
はる君が自らナンパしなくとも、あーちゃんという姉がいる限り、
暇にのたうち回る事はない。
ところが、昨日。
はる君が帰宅する時には、あーちゃんは既に遊びに出かけた後だった。
あーちゃんの帰宅がいつもより早く、
帰るや否やランドセルを玄関に放り投げて、外に姿を消した。
結果的に、はる君は、あーちゃんについていく事が出来ず、
ものすごく不服そうだった。
「あーちゃんばっか、ずるい」
「はる君も行きたかった!」
と、不貞腐れている。
と、言ったら、はる君が「Aちゃん家、行く」と言い出した。
Aちゃんは、同じマンションの同じ幼稚園の女の子で、
いつも同じバス停から幼稚園バスに乗っている。
子供同士の仲が良い、とはお世辞にも言い難く、
毎朝顔は合わせるけど、2人が会話している所は見た事がない。
一体、何して遊ぶんだろう・・。ちゃんと遊べるのかな?
そして、インターホン押した後は、何て言うんだ?
あーそぼ、でいいのか?
でも3歳児の友達を誘うんだから、一緒に親も誘っているようなもので。
公園で遊ぶの?
家で遊ぶの?
相手の家にいきなりあがって迷惑じゃないのか?
大人の事情がぐるぐる頭をめぐる。
部屋番号は分かっているけど、携帯の連絡先を交換してないので、
突如、家のインターホンを鳴らす事になるのだ。
苦し紛れに提案してみたが、
インターホン鳴らして、「アイス一緒に食べよう」って、
我ながら変な声かけだ、と思う。
回りくどい大人の世界を子供ワールドに持ち込んだような。
でも、はる君は大乗り気だった。
その後、チューペットアイスをビニール袋に入れる私に、
保冷バッグに入れないと溶けるからダメ!と、はる君が指摘する。
1分で着くんだからいいじゃんよ・・。
細かいな。
こうして、はる君の初ナンパはスタートした。
保冷バッグを両手で持って、ぐんぐん高くなるエレベーターの数字を見上げる彼を
こっそりと携帯で激写する。
家の前に着くと、はる君が自分でインターホンを押した。
「どうしたの〜?」と玄関に出てきてくれたお友達のお母さんに、
はる君が、
と、言った。
背後から、私が解説する。
結果、お友達にも喜んで頂いて、お家に上がらせて頂き、
大人はお茶を飲み、子供はお菓子を食べた。
最初は距離が遠かった子供達も、だんだん打ち解けてきて、
最後は、だいぶ近くで遊ぶようになった。
(2人では遊べなかったけど)
親同士も連絡先を交換するきっかけになった。
はる君に感謝だ。
◇◇◇
この晩、はる君は自分でインターホンを押して、
友達の家に遊びに行ったのが嬉しかったらしく、
あーちゃんにしきりに自慢していた。
”学校ごっこ”の中のウサギって何かやる事あるんだろうか・・と、
会話しながら頭の片隅で考える。
ずっと姉弟セットで行動していたけれど、
こうして少しずつ自分の世界を広げていくのかな。
ママブロネタ「育児」からの投稿