ペンション 桐の花

雪国住まいの70代です。桐の花が咲く山里のお話を書きたいです。


テーマ:

★ 夫の初任地 ★

 

それぞれの薬たづさへ訪ねけりミゾソバの咲く夫(つま)の初任地

 

 

患って後、あまり出かけたがらなかった夫が「行きたい」と言った場所は、新米教員として赴任した山の村。子どもの数は激減し、空家もかなり見受けられました。稲田の脇を流れる小川の縁にコンペイトウのようなミゾソバが咲いていました。

 

 

★ 『ペンション 桐の花』

 

3 淳平

 

翌朝。淳平は朝食前に蘭丸を散歩に連れ出した。蘭丸は、短い後ろ脚を振り上げてマーキングしたり、草むらを嗅ぎ回ったり、散歩はなかなかはかどらない。

トシばぁの家の近くまで行くと、突然秋萩の茂みの陰から、犬を連れた男の子が走り出してきた。トシばぁの孫の光太郎だ。犬は、信長という名の黒柴だ。

「やい! まんまる。ぼくんちの前でうんこするんじゃないぞ」

「まんまるじゃないよ。蘭丸だよ」

淳平が抗議すると、すぐ言い返す。

「蘭丸は信長の家来だ」

七歳というのに、生意気な子だ。

光太郎と別れ、神社まで行って引き返す。

今度は回覧板を持ったかつ子ばぁがやってきた。詮索好きなおばぁさんなので、淳平は苦手なのだが、捕まってしまった。

「あんちゃ、よく働くなぁ。若いのに、こんなとこへ来て。いつまでいるんだい?」

淳平の最も触れられたくない質問だ。

「まだ、はっきりとは・・」

「若い衆が村にいてくれるのは、おらたちはありがたいども・・」

 

 

なおも話しかけるかつ子ばぁを振り切って、ペンションへ戻る。

庭の横に立つ桐に朝陽が当たっている。10メートルほどの桐。皮目がたくさんある灰褐色の幹を見上げると、葉先が少し黄色味を帯びている。そばには実生の若木。広卵形の大きな葉はまだ青々している。                                (続く)

 

 

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