映画の果実




昔から白が好きだった。

白いシャツ、Tシャツ、白いスニーカー、白いキャンバストート、
白いコットンワンピース、白いシーツに枕。

運動会では、なぜか白組に入ったほうが、
気持ちよかった。

わたしが白い服を買ってくると、いつも母はこう言った。
「白は汚れやすいし、汚れると落ちにくいからやめてよ。」と。


純粋、清楚、高潔、透明感、正義。
白といえば、勝者のイメージが頭をよぎる。

物語は、北ドイツの小さな村。
村人全員が顔見知りの小さな、小さな村。

医者が乗った馬が、針金の罠に足をとられ
落馬する事故が起きる。
これは、事故なのか、事件なのか。

そこから、次々と、不可解な事故(いや、事件なのか)が起きる。

村人たちは、恐れ、のろい、疑う。

牧師は自分の子供たちに、白いリボンを手首に巻かせる。
純粋さを失わない、儀式なのだと。


若い教師が物語りを語り手となる。
彼は、とある女性に恋をする反面、これらの事件を目にし
村人たちの異常な、執着、閉ざされた内情をつきつめようとするが、
結局、彼は村を去ることとなる。

つまり、この教師がポイントだと思う。
わたしたちの多くは、この教師ではないだろうか。
結局、大きな一歩は踏み出せずなのだ。

弾圧された中で、歪んでいく純粋。
果たしてそれは、どう軌道修正すればいいのか。

ハケネの作品を見たことがある人ならば、耐えられる。
また、後味悪くても、気にしない。という人には見れるが、
正直、きつい。

ただ、最初は、うだうだしてたが、
ラスト30分は目が離せず、ぐいぐい引き込まれながら、
恐怖におちていく自分がいた。

ハケネは、賛否両論あるが、
この作品が、今までの中で傑作だと思うし、
映画の完成度は、高い。

モノクロにしたのも、白い中で汚れがより目立ち、
本当の恐怖を、引き立てていると思った。

彼の人間を見る角度は、普通の人とは違っているかもしれないが、
誰でも、いつも正面から見られているとは限らない。