オバマ米大統領とメドベージェフ・ロシア大統領が昨年末失効した第1次戦略兵器削減条約(START1)に代わる新条約の合意にこぎつけた。

 新たな条約の目玉は、両国の戦略核弾頭の上限を1550発に、ミサイル、原潜、爆撃機などの運搬手段は800基(実戦配備は700基)に減らすことだ。核弾頭は現行のモスクワ条約(2200発)と比べて3割減、運搬手段はSTART1(1600基)の半分になるという。

 額面からは「随分減るんだな」という印象を受けやすいが、実態は必ずしもそうでない。19年前の旧START1と、ブッシュ前政権下で成立したモスクワ条約とでは、運搬手段や弾頭の計算方式が変わっているからだ。

 例えば旧条約では、ミサイルに搭載可能な核弾頭をすべて積んだ前提で計算した。だから、1基あたり8~14発の弾頭を搭載可能なトライデント型ミサイルを24基装備した米戦略原潜の場合、1隻あたりの弾頭数を最大336発として計算されていたのだ。

 ブッシュ前政権は「こうした数え方は意味がない」とし、両国が申告する実戦配備の弾頭数を規制対象にした。ミサイルや爆撃機などは軍事偵察衛星などで監視できるものの、実装された弾頭を外から確認するすべがないためだ。

 今回の新条約もこれをほぼ踏襲している。しかも、実戦配備されていない核弾頭については廃棄する義務がない。両国はそのまま備蓄に回せばよいことになる。

 米国の「憂慮する科学者同盟」(UCS)の推計によれば、こうして計算した核弾頭は米国が1762発、ロシア1741発だ。実戦配備された運搬手段は米国798基、ロシア566基になる。

 ということは、新条約を履行するには米露ともに核弾頭を200発ほど備蓄庫に移すだけでいい。運搬手段に至っては、米国は98基減らすが、ロシアは逆に134基増やすことができる。「軍縮」といいつつ、実は数を増やせるという構図は新条約に隠された「数字のマジック」といっていい。

 だからといって、新条約の意義を否定するわけではない。米露は世界の核兵器の95%を保有している。「核なき世界」を掲げるオバマ氏は、米露合意を材料に核拡散防止条約(NPT)体制の強化を世界に訴え、北朝鮮やイランに国際圧力を加える狙いがある。核大国が率先して核削減の範を示すのは悪いことではない。

 だが、それだけで終わっては困る。東アジアでは、北朝鮮よりもはるかに大きなスケールで中国が核やミサイルの増強と近代化の道を突き進んでいる。

 米国防総省が昨年まとめた「中国の軍事力」は「中国の核戦力は全米大都市の大半に深刻な損害を与え得る」と指摘し、移動式大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の増強に警戒を強めている。

 数の上では米露より少ないとはいえ、中国の核戦力の実態が秘密に包まれ、透明性を欠いていることも問題だ。米露に届かない中距離核ミサイルも日本や韓国、台湾にとっては戦略的脅威になる。

 中国の核軍拡にブレーキがかかるかどうかは北朝鮮やイランの行動にも影響を与えるだろう。

 オバマ氏は新条約で「子供たちの未来を守る一歩を進めた」と強調していた。鳩山由紀夫政権も米露合意を歓迎するだけでなく、中国に対して核の削減や透明化を注文すべきだ。

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