2006-05-11 02:14:14

君が代をめぐって―芥川也寸志と黛敏郎(前編)

テーマ:日本の西洋音楽

奏楽堂移転問題では共闘した芥川也寸志と黛敏郎であったが(昨日の記事 を参照)、二人が政治的イデオロギーを異にしていたためか※、君が代をめぐる評価については真っ向から対立していた(直接議論を交わしたことがあったかどうかは定かでない)。


※芥川は1954年、当時国交のなかったソ連に自作を携えて密入国するほどソ連に傾倒して

 いた。勿論、主たる興味の対象は政治体制に対してではなく、ソ連の作曲家(ショスタコー

 ヴィチ、プロコフィエフ、ハチャトゥリアンら)であったが。一方の黛は更に激しい。保守系

 団体「日本を守る国民会議」(現在の日本会議)の議長を務めるなど、保守の論客として

 活動した。それどころか、「憲法はなぜ改正されなければならないか」という題名のカンター

 タ(声楽曲)まで作ってしまった(1981)。


一般に、君が代はハ長調なのにレで始まってレで終るのはおかしい、という議論があるらしい。確かに、君が代の楽譜にはシャープもフラットも付いておらず、ニ音(ドレミで言うとレに相当する)で始まる音階が用いられているので、一見するとハ長調に感じられる(主な調性でシャープもフラットも用いないのはハ長調とイ短調のみ)。ハ長調ならば、主音のドで始まってドに終るのが普通である。


これに対し黛は、「もともと「君が代」はレを主音とする(雅楽の)壱越調※(イチコツチョウ)であり、シャープやフラットがないからといって、ハ長調ではけっしてないのです」(カッコ内引用者)と反論する。彼の議論に従えば、雅楽の調に西洋音楽の調性を当てはめて批判するのは的外れである、ということになろう。


※この他に、ミを主音とする平調(ヒョウヂョウ)、ラを主音とする黄鐘調(オウシキチョウ)、シを主音と

 する盤渉調(バンシキチョウ。以上は律音階に基づく)、ソを主音とする双調(ソウヂョウ)、ミを主音と

 する太食調(タイシキチョウ。壱越調も含め、以上は呂音階に基づく)などがあるという。


芥川はさすがに作曲家だけあって、これを踏まえた上で更に編曲の問題を指摘する。ヒントは、冒頭と結尾部である。大相撲の千秋楽を思い出して頂きたい。君が代の最初と最後はどのように響いていたであろうか?続きは明日。


黛敏郎『題名のない音楽会 』(1977):引用はこの本から行った。長寿音楽番組「題名のない音楽会」は1964年に始まったが、放送が10年を超えたところでまとめられたのが本書である。なお、放送内容をそのまま文章化することは不可能であるため、「「題名のない音楽会」を企画する際の、私のメモをもとにしたエッセイと考えていただきたい」と黛は述べている。
AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

x1wandさんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

コメント

[コメントをする]

コメント投稿

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。