「イギリス財政革命」 | 大学受験の世界史のフォーラム ― 東大・一橋・外語大・早慶など大学入試の世界史のために ―

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イングランド銀行の憲章の調印

<イングランド銀行の憲章の調印>

イギリス財政革命は,17世紀末からイギリスで起こった,国家財政の拡大・発展を指す言葉である。

背景

17世紀のイギリスでは,ピューリタン革命名誉革命という二つの革命を経て,同世紀末までに立憲君主政と議会政治が確立されることになった。

こうして国内の危機を収拾して体制を整えたイギリスは,重商主義のもとで海外貿易の覇権や海外植民地を狙って積極的対外政策を推進し,フランスとの間で熾烈な抗争を展開していく。以後,17世紀末から18世紀半ばの英仏両国は,ファルツ継承戦争(北米ではウィリアム王戦争),スペイン継承戦争(北米ではアン女王戦争),オーストリア継承戦争(北米ではジョージ王戦争),七年戦争(北米ではフレンチ・インディアン戦争,インドではプラッシーの戦い)と,ヨーロッパ並びに海外植民地において断続的に戦闘を繰り広げた。

財政革命

このように長期かつ大規模な対外戦争を遂行していくのにあたって,イギリスでは17世紀末から国家の財政の面において注目すべき変化が起こった。

イギリスでは,戦費の調達を目的として1694年にイングランド銀行という中央銀行が設立され,それとともに国債の発行や取引の仕組みが整備されたが,この結果,国家は国債を通じて資金を柔軟かつ大量に集めることができるようになった。またイギリスでは,議会の決定を通じて体系的かつ効率的な課税が実施されるようになり,関税・土地税・消費税などさまざまなかたちで国民からの徴税が行われたが,これによって国家の歳入は拡大するとともに安定したものになった。

こうした金融や徴税のシステムの整備によって,国家が大量かつ確実に資金を調達できる体制が整い,イギリスの財政は大きく強化された。このような17世紀末からイギリスで起こった財政の発展は,財政革命と呼ばれる。

意義

このようにして財政が発展したことは,軍事力の拡大をもたらし,ひいては国際経済の覇権をも左右することになった。

財政の拡大の結果,イギリス政府は常に膨大な戦費を調達できるようになり,戦争遂行能力を格段に向上させた。以後,イギリスは軍事費を十分に確保しながら対外戦争を大規模かつ継続的に繰り広げていく。このような17世紀末から18世紀のイギリスの国家体制の在り方は,大きく強力な財政と軍事を特徴とすることから,財政軍事国家とも呼ばれている。

以上のような財政と軍事の力によって優位を手にしたイギリスは,18世紀半ばの七年戦争によってついにフランスとの一連の抗争における勝利を確定させる。こうして,イギリスの財政革命は,国際経済の覇権をめぐる戦いの勝利をも支えることになった。