ある晴れた朝。
退屈なほど青い空に浮かぶ、白い雲。
何気ない日常の始まり。
「とーきーわー、郵便やさん来たからとってきてー」
「…はいはいっ」
せっかくの休みなのに、と常葉は思った。
昨日で大学の授業で出たレポートは終わらせてしまったから、今日は本当にすることがないのだ。
こんなふうに家で何もせずにごろごろしていれば――週に2日ある休みを家で過ごすのもどうかと思うのだが――母親に使われるのは分かっていた。そして、渋ればうるさく色々言われることは分かりきっている。
だから、読みかけの雑誌を置いて、ゆっくり立ち上がった。
ポストは玄関の脇に設置されていて、一度外に出ないと郵便物が取れない。
脱ぎ捨ててあったスニーカーを、かかとを踏んだまま引きずって、玄関のドアを開けた。
――と。
玄関を開けたら、猫が立っていた。
Sunny sunday
「――」
常葉は黙って猫を見た。
野良猫だろうか。首輪はしていない。の割には、灰色の小綺麗な猫だった。
猫はぼうっと眺めている常葉を見上げて、
「おぅ、おはよう」
と。
確かに言った。
「・・・」
空耳だろうか?と常葉は思った――まさか、どうして猫があいさつだなんてするだろうか――
「何ぼうっとしてんだよ。時間ないってのに。」
時間がない?
そんな急ぎの用事なんてあったっけ?
いや、そもそもどうして猫がそんなこと――
普通でない事態に、常葉の頭が全くついていけていなくて――逆に適応してしまっているかのようにも見えた。
「ほら、もう行かないと間に合わねぇ! 行くぞ!」
「えっちょっ…待ってよ!」
気付けば、常葉は猫を追いかけて走っていた。
駅へと向かう大通りを横切って、小さな商店街の通りに入った。
休日なのもあって人が多い。そこを、猫は何の変哲もなく駆けてゆく。
常葉は猫を見失わないように、必死に人を避けつつ走る。
不意に、パン屋の横の路地に猫が駆け込んだ。
人ひとりが通れる程度の、狭い道。
商店街にはよく来ていても、もちろん通ったことのない道だ。だが、常葉は迷わず路地に入って猫を追いかけた。
建物と建物に挟まれてできた路地は以外に複雑で、何度か左にも右にも曲がりながら進んだ。
そして猫についていくまま何度目かの右折をした途端、
「!」
急に、目の前が開けた。
開けた視界に入ってきたのは、建物に囲まれた広場だった。
建物の壁沿いに、四方にベンチが置かれていて、真ん中には樹が1本立っている。
呼吸を整えようと大きく息をしながら、常葉は猫を見つめた。
猫は歩いて、真ん中にある樹に向かっている。
そして立ち止まると、ふいと空を仰いだ。
「空がきれーだ」
常葉も、つられて空を見上げる。
建物に四角に切り取られた空は、きれいな青空だった。
「毎日見てるモンも、気分が違えば、こんなに雰囲気が変わるもんなのかねェ」
そうなのかもしれない。
今日家の中から見た空に比べると、とても新鮮だ。
「きっとこれは――」
――全てのことに言えるんじゃねぇかな――
「――常葉?」
「…へ?」
はっとして、声のするほうを見た。母親が突っ立って、呆れた顔で見ている。
「へ、じゃないわよ。こんな時間から何でうたた寝してんの」
うたた寝?
確かに、さっきまで広場にいた筈なのに、今は家の中だ。
「ほんと、家でだらだらしてないでどこか遊びにでも行って来なさいよね」
…さっきのは夢?
まさかそんな。
路地に入って広場に行ったのも?猫がしゃべったのも?――いや、夢だからそんなことが起きたのだろうか…?
「常葉!寝ぼけてるんじゃないの!」
「寝ぼけてないって」
いつもなら声を張り上げるところだが、今日はやけに落ち着ける。常葉は立ち上がると玄関へと向かった。
「どこ行くの」
「散歩」
それだけ言うと、常葉は外に出た。
秋の色匂う、すずしい風が吹いている。
空は青く、白い雲が浮かぶ。
見慣れた風景、の筈だが、今日は美しいと思える。
また明日も、綺麗だと思えるだろうか?
その答えは、教えてもらったばかりだ。
折角の休みなのだから、夢で見た広場が本当にあるか探してみようか。
もしかしたらあの猫に似た猫を見かけるかもしれない。
常葉は、心を弾ませながら、駆け出していった。
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やってしまいました。
あまりオチのない話。…で?ってなるハナシ。
関西人としてそれはどうなの!?
とか思ったのですが…今回はこんな感じで!
短文では人物について深く書かないので、色々設定が謎ですね;
私も猫がどういう立ち位置なのか非常に気になります(ノ´▽`)ノ
ただ常葉という名前は個人的にすごく気に入りました☆
…面白い話が書けるように精進したいものです…(+_+)
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