さて。
前回のブログのラストで時間はすでに'16年12月13日まで進んでしまっていましたが、今回はあえて時計の針をちょっと巻き戻してみます。
前回のブログ内で「戸田 聡さん(夢のカグツチノ公国)は元絵そっくりに顔を似せて造形することにあまり興味がない=元絵そっくりに顔を似せて造形することがぶっちゃけ得意ではない」という旨を記しましたが、案の定、その問題が11月に入ってから本格的に浮き彫りになってきてしまいました。
まずは、下に掲載する画像は11月21日時点での顔の造形です。
この画像が送られてきた際、戸田さんはメールでこう述べていました。
「顔もかなり盛り削りしてみました。自分的にはバッチリ、あとはアイラインや瞳の描き込み次第、とか思ってるのですけどねぇ」
つまり、「自分的にはもうほぼ完成の領域に達したと思います、なので顔の造形的はこれでOKでしょう?」という明確な意思表示です。
ただし冷酷なようですが、その言葉に対し以下のような反論を綴ることになります。
「確かに以前よりゴールに近付いているように感ずる反面、正直に言うと“まだゴールにはちょっと遠い”と感じています。
いちばん違和感を覚えているのが口の造形で、いまの状態だと窪んだ口内の周辺、つまり開いた口の周囲が(たとえは悪いけど)洋式便器の便座のように360度ぐるっと内側(口内側)に向かって同じ角度のRを描いていますよね。でも人間の口の周囲って、実際には上唇と下唇があるから仮にぐいっと窪むとしたら口角(唇の両脇の部分)だけであって、上唇と下唇がこういうRを描いているのは“なんか違うなあ”と。
……いや、正確に言えば上唇も下唇も最終的には口内に向けてRを描くには描くのだけれど、いまの状態だとRがはじまるスタート地点が早すぎて、まるで唇がないように見えてしまうんです。これまたたとえは悪いけど、漫画的表現でたとえるならば“入れ歯が外れた状態のお爺さんやお婆さん的”みたいな。
あと、さらに言うならば頬の頂点の位置がほんの若干低いのかな……そのせいで、エラが張っているように見えてしまっているのではないかと」
この意見に対する戸田さんからの反応は以下のとおり。
「……私も気になっているところを確実に気付きますねぇ。口周りの造形はワザと、と言うか苦肉の策とでも言いますか。
あとイラストの位置に口を持って行きながら気持ちのよいRの唇を造形すると、大幅に口の位置がズレますね。それとDANGERDROPさんのイラストは頬の下の方が尖っていますので、エラが張っていないように見せるために違和感なくラインを結ぶには……まあ、まだ(顔の造形は)煮詰まってなかったということで、メカ造形の作業の合間に調整していきますよ」。
う~ん……やはり、1枚絵イラストの立体化はひと筋縄では行かないようです。
そして、次に掲載する画像は12月29日のもの(もう世の中は仕事納め以降ですね……)。
……うん、顔の造形(とくに口)はものすごくよくなりました!
もっとも、口の造形がよくなった反作用(?)として、今度はイラストよりも目がちょっと大きすぎるように感じてきてしまったという……瞳の下側のラインをほんの少し上側に上げて瞳をちいさくしたほうが、フィギュアとしてのバランスはよくなる気がすると言うか。
もちろん、「たったの1mm程度のせめぎ合い」の話なんですけどね。
そうしたこちらからの要求に対し、戸田さんの微調整作業が続きます。
……おおっと! ついにかなりよいところまで来たじゃないですか!!
そしてこの後、'17年1月14日に届いた製作途中画像で顔の造形にようやくOKが出ます。
いや~、確かに相当の時間を費やしてしまいましたが、それだけの時間を費やしただけの完成度に到達したことが誰の目にも見て取れると思います。
さらに、1月24日に「原型の表面にサーフェイサーを吹いて耐水性サンドペーパーで磨き、最終仕上げを行っている造形画像」が届くのですが、その画像を見たときにはかなり本気で驚かされました。
「……へえ~、DANGERDROPさんの描く1枚絵イラストの女の子の顔って、ここまで正確に3D化できるんだ!」と。
こうしてようやく戸田さんの原型製作は終了、この後もう少しだけ表面を磨き、1月27日に海洋堂へ原型が無事納品されることに。
じつは年が明けてからなんと足を骨折してしまったり(!)、風邪に倒れたり、まさしく満身創痍での原型製作となったわけですが、こちらが期待していた以上のクオリティーを誇る原型に仕上げてくださったことに対し、とにかく大・大・大感謝です!
もっとも「年内に原型を納品してもらわないとスケジュール的にかなりヤバい」という話であったわけですが、この段階ですでに1月27日……。
当然ながら、この後の作業のスケジュールはすべてにおいて「超巻き巻き状態」が強いられることとなったのでした。