「賀茂川さん」とのお仕事 | ワンダちゃんNEXT DOORプロジェクト 開発スタッフブログ

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「なぜFILE:03の担当イラストレーターが賀茂川さんに決まったのか?」というのは2月3日(金)ごろに発売になるワンフェスガイドブック内の『ワンダちゃんNEXT DOORプロジェクト』記事ページに詳しく書かれているので、そこを書きはじめると内容がダダ被りになるのであえてこの場では割愛します。
とにもかくにも「FILE:03のイラストレーターは絶対に賀茂川さんにお願いしたい!」という話になり賀茂川さんのパーソナルWebサイト経由でコンタクトを取ってみたところ、即答にて「とても素敵な企画なので、私でよろしければぜひごいっしょに制作させていただきたい所存でございます」とのご丁寧な返信メールをいただくに至りました。
そして2015年5月28日(なんとすでに1年8ヶ月前の話! それがこのプロジェクトの特徴であり難しさでもあるわけですが)、都内某所にて宮脇センムを含め初顔合わせを行うことに。

 

もっとも、賀茂川さんはそのとき相当に仕事が詰まっており、本プロジェクトの実作業に突入したのは同年の10月になってから。こちらとしては首を長くして待つこと数ヶ月、10月26日にいよいよ最初のラフスケッチがメールにて送られてきました。

 

▲見てのとおり、最初に描かれたA-1案の段階ですでに賀茂川版ワンダちゃんのキャラクターデザインはほぼ完成の領域に達していました。A-2案はイラストとしてのベターな構図を追求したA-1案の改定案であり、これが決定稿に向けブラッシュアップされていくことになります

 

ちなみにこの最初のラフスケッチの中で、ちょっと注目していただきたいのがR案。これはワンダちゃんではなくリセットちゃんをモチーフにした案であり、「シリーズも第3弾になるので、もしも賀茂川さん的にリセットちゃんで描きたいのであればリセットちゃんでもいいですよ」という話を事前にしてあったがゆえのトライアルでした。
もっともこのR案は、我々が俗に言うところの《フィギュア化用の設計図》に極めて近いものであり、「もうこれ、どこぞのフィギュアメーカーから10年前に商品化されていますよ」的な雰囲気が漂ってしまっていて、このプロジェクトのおいてはこういう雰囲気のイラストは100%確実にボツになってしまうのです(おそらくは賀茂川さん自身もその事実にすぐさま気付いたようで、この最初のラフスケッチの中でR案だけが明らかに浮いて見えるはずです)。

 

結果、A-2案をブラッシュアップして仕上げていくことがすぐさま決定、さあ、あとは賀茂川さんにがんばってもらうだけ……という体制が整ったのですが、賀茂川さんのほかの仕事がここからまた過密日程と化してしまい、A-2案をブラッシュアップしたイラストがメールで送られてくるのは2016年2月1日まで待つことになってしまいます。
いちばん最初の段階から「担当原型師が冬のワンフェス(2月7日開催)終了直後から原型製作に着手するので、何がなんでもワンフェスの前日までにはイラストを完成させてください」とお願いしてあったので、もう本当にギリギリのタイミングです(汗)。

 

……もっとも、2月1日に届いたA-2案をブラッシュアップしたイラストを見て超ビックリ。「ブラッシュアップした」というよりは、「いきなり決定稿の領域に達していた」ためです。


▲一見すると同じイラストが2枚並んでいるように見えますが、左が高コントラストVer.で、右が低コントラストVer.。言わば賀茂川さんからの「どちらがよいでしょうか?」というプレゼンテーションです

 

この2枚のバージョン違いのイラストに対し、本プロジェクトでイラストレーターの人選とイラスト監修のスーパーバイザー的役割を担ってもらっている“なんとなくドクターK”さん(かなりわざとらしい匿名ですが、その正体はこのブログを読んでいる方のおそらく9割はその名を知っている著名クリエイターです)から、以下のような指摘が入ります。

 

「以下に記すことは個人の主観も多分に入っておりますので、あくまでご参考までに、という感じでご容赦くださいませ。
まず、ブーツの色味と髪の毛の色味か彩度を少し変えたほうがよいかなと思いました。現状、どちらもM(マゼンタ)版で彩度を出している系で、他の部分と色味がかち合っているように見えます。茶色の髪とスエードが同系統になってしまっているので、ブーツについてはサンド系とか、もうちょっと落ち着いたスエードっぽい色とか(C17% + M35% + Y44% + K29%あたり)にしてもよいかと。リュックの底とブーツは同じ色でもよいと思います。
あと、ここが重要ですが……髪の毛、パーカー、リュック、ブーツにある(Photoshop内の機能を使った)“丸ボカシ”ブラシはぼくは正直、ないほうがよいと思いました。せっかく賀茂川さんに描いていただいているのにいつものポップな印象からは遠ざかって、ぼんやりした印象に見えて押し出しが弱まっているように感じたためです。ノーマル×影色のセル調単色塗りで充分、賀茂川さんのよさが出ると思いますし、賀茂川さんのイラストは上品な色使いがとてもよいと思っているので(ただし、肌の質感としてのボカシやチークはとてもよいと思うので、そこはいまのままでよいと思います)。
あと、髪の毛のブリーチ(ですよね? ギザギザの部分です)の色味が、髪の毛のベースの色とマッチしていないように見えました。ここだけ色味が飛んでいるような感じで、イラストとしての引っ掛かりにはなると思うのですが、髪の毛より明るい系であれば→同系統ということで薄いピンク or クリーム系、あえてコントラストを出すのであれば→薄いブルーグリーン系にすればいまの髪の毛の色にも合うのではないかな、と思います」

 

なんとなくドクターKさんはとくに色彩設計に秀でたクリエイターであり、これを読んでも「……????」な人も多いと思いますが賀茂川さん的にはこの分析結果が大いに参考になったようで、わずか2日後の2月3日にはなんとなくドクターKさんのアドバイスが採り入れられた決定稿に到達しました。


▲先の画稿との差違は、髪の毛のブリーチとショートブーツ&リュックサック下側部分の色味変更と、丸ブラシを使ったグラデーションがなくなった点。「たったそれだけの違い」とも言えますが、明らかに「賀茂川さんのイラストらしさ感」が増したことがわかるはずです

 

「なんとなくドクターKさんのアドバイスでかなりよくなったと思っております。ボカシについては散漫になっていたので、なくすことでいい感じに絞れたかと。おかげさまで自分でも『おーっ、しっくり来た!』って感じです。ありがとうございます!
とくにブーツの配色は最後まで悩んでいたのですが、なんとなくドクターKさんご提案の色でがっつりハマりました」
以上は賀茂川さんからの決定稿に関するコメントです。

 

こうして、冬のワンフェス開催まであとわずか4日……という超ギリギリなタイミングにて賀茂川さんのイラストは仕上がりました。
次はこのイラストを石長櫻子さん(植物少女園)へ転送し、ワンフェス終了後に原型製作へ着手していただく段階へ移行することに。

というわけで、次回からは石長さんの原型製作編に突入します!