『ライラックは涙で育つ』(5)

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ウィッグとカラーコンタクトを購入して以来、ライラの外出頻度は確実に増えていた。しかし彼女は決して1人では外出しようとせず、ちると一緒であることを条件としていたため、必然的にちるの外出頻度も増えることになった。

近所のスーパーに食材を買いに行ったり、ライラがあの家で生活するためにあった方が便利なものをとホームセンターに立ち寄ったり。そんな理由での外出が多かったが、それでも2人はこの現状にひどく満足している。

 

ちるは、元々外交的なライラが内に籠ってしまうことを防げていることに喜びを覚えた。

ライラは、内向的なちるが少しずつ活動的になっていることに幸福を感じた。

 

ちるはライラのことをあまり深く聞こうとはしなかった。食べ物の好き嫌いだったり、服の好みだったりといった彼女の傷に触れないような質問はたくさんしたし、それによってライラのことを少しでも知ることが出来れば良い収穫だと思えた。

当然ライラの生い立ちや家出の理由などを知りたくないかと言えば嘘になる。はじめのうちは「巻き込まれたくない」という思いが少なからずあったが、今はそれよりもずっと「下手に聞いてライラに嫌われたくない」という考えの方が強く、聞いてしまえばその時が別れの時だと思われて何も聞けなくなってしまっていた。

 

同様に、ライラもちるのことを自分から聞こうとはしなかった。ちるが悲しげな表情をしていればそれを問いて愚痴を聞いたり相談に乗ることはあっても、必要以上に深入りすることは避けているようで、その結果、ちるは段々と学校や社会と言う灰色の世界の出来事をライラのいる鮮やかな世界に持ち込むことをしなくなった。

 

 

 

 

「ライラって冷え性なの?」

「え」

「いつも凄く手が冷たいなって」

 

ある日、ちるは風呂から出てきたライラに向かって唐突にそう尋ねた。夕飯の片づけで食器を洗っていたちるはぱんぱんと濡れた手をタオルで拭くと、ライラの手を握った。

光熱費を抑えるために普段は湯船に湯は張らずにシャワーだけにしているのだが、それでも十分に体は温まるはずである。しかし、ライラの手は食器洗いを終えたちるの手よりずっと冷たかった。

初めて外食した日に握ってきた手も、初めて出会った日に自分を助けた手も、恐ろしいほど冷たかったのがちるのなかで非常に印象的だった。

 

「冷え性かも。寒がりではないんだけどね」

「生姜の紅茶って冷えに効くんだって。飲んでみる?」

「いいえ、大丈夫。もう慣れてるし辛くないから」

「そっか」

 

ライラは握られた手をすぐに緩くほどいて、長い髪をタオルでわしゃわしゃと水気を落としながらちるから離れていった。

ライラはスキンシップを好まない。ちるは同棲数日目にしてその事実に気付いていた。何か特別な時、ちるが何か危険な状態であったり咄嗟の行動であったりしない冷静な状態である限りは自分からちるに触れることはなかったし、ちるからのスキンシップも拒絶こそしないものの今のようにすぐに距離をとる。

 

ちょっぴり、寂しいような気もする……

 

そんなことを考えてライラの横顔を眺めていた時、ふいに滅多に鳴らないちるのスマホが鳴りだした。

久しぶりの事に思わず声を上げて飛び跳ねたちるは慌てて通話ボタンを押す。自分に電話をしてくる人など1人しかいない。画面を確認することなく、ちるはスピーカーを耳に当てた。

 

「もしもし」

『ちる、元気そうだな』

「おじさんも」

『調子はどうだ』

「いつもと変わらない」

『ちょっと声が明るいか?』

「気のせいだよ」

『そうか』

 

叔父からの質問にちるが定型通りの簡素な返答をする。電話がかかってくるのは約2週間おきで、最後に電話があったのはライラと同棲を始める2日ほど前だった。

普段から行動が静かなライラではあるが、叔父に黙って勝手に家出少女を泊めていると知られてはまずいからとライラの方を向いてちるは口の前で人差し指をたてる。ライラはその仕草に、少々緊張したような面持ちでこくりと頷いた。

 

『そうだ、ちる。突然ですまないが、明日少しばかりお前の家に野菜を持っていきたいんだ』

「え」

『部下が実家から送られてきたとか何とかで大量にくれたんだが、私もさすがに食べきれないからな』

「明日?」

『なにか不都合があるのか?』

「大丈夫。学校から帰るの18時くらいだけど」

『じゃあそれくらいの時間を狙って行くとしようかな』

「わかった。おやすみ」

『あぁ、また明日な』

 

電話を終えたちるはライラにすぐに事情を話し、明日の夕方、ちるからの連絡があるまでどこかに出かけているようにと言った。

ライラは素直にわかった、と答えたがその表情は初外出の帰り道に見せたような緊張したもので、おびえているようにも思えた。

 

「大丈夫、叔父さんは悪い人じゃないから。最悪ライラの事バレてもわかってくれるよ」

「えぇ……」

「……1人で外出するのが心配?」

「……ねぇ、私は一泊だけ遊びに来ている学校の友人ってことに出来ないかしら」

「叔父さんが私より先に着く可能性もないとは言い切れないよ?」

 

それでも珍しくライラがお願い、と食い下がるため、ちるは叔父には内緒で学校を休んで家にいることに決めた。

 

 

 

 

 

「どこへ行ってしまったのか、探さねば。

早く、見つけ出さねば。早く………ねば。

 

可愛い、ちるのために」

 

薄暗い研究室の中で、男の切なげに震える声が反響した。

 

 

 

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『ライラックは涙で育つ』(4)

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「ライラー!! 入って大丈夫?」

「もうちょっと……はい、おっけー。どうぞ」

 

ちるは静かにノックして部屋のドアを開ける。

姿見に自身の姿を映して物珍し気に体を揺らして雰囲気を確かめるライラの姿にちるは小さく息を呑んだ。

 

 

 

 

 

「ねぇ、ライラ。せっかくならどこか遊びに行かない?」

 

そう誘ったのはちるの方だった。お金も時間もそれほどあるとは言えないが、ほとんど外出しようとしないライラとちょっとだけでも一緒にどこかへ出かけてみたいと、そう思っていた。

家出をしているらしいライラが表へ出たがらないのはおそらく、家族に見つかりたくないからであろうと、ちるは勝手な推測をしていた。でもだからといって明朗快活なライラが引きこもり生活を送っていては自分のように塞ぎがちな性格になってしまうかもしれない。断られたらそれ以上なにも言うまいと覚悟を決めて上の一言を発したちるに対して、案の定ライラはしばらく渋っていた。

 

内向的なちるが少しずつ前向きで活動的になっていっているのをライラは感じていた。まだ数日の付き合いだが、それでもその中でちるのとる選択や思考の変化に目敏く気付き、それを喜ばしくも思っていた。

ちるが自分のためを思って外出に誘っているということをわかっている。それと同時に、ちるが「娯楽のための外出」をする珍しい契機になっている事実も悟っていた。だからこそ自身の抱く不安などというちっぽけなものでちるの人生を変えるかもしれない変化の契機を潰すことは到底出来ないことだ。

 

「ええ、いいわ。でも、ちる。少しだけ待っていてもらえるかしら」

 

 

 

 

 

 

そして、今に至る。

「アルビノ」のごとき髪と目はあまりに人目を引いてしまうからと、ウィッグとカラーコンタクトをネットで購入しそれを見事にカモフラージュして見せた。さらに服装も季節にあったものをちるにコーディネートしてもらった。

 

「変かしら」

「変じゃないよ。とっても自然。でも……」

「でも?」

「私はライラの髪と目、すごく綺麗だなって思うからちょっと勿体ない」

「ふふ、ちるったら。それにしても、ちる。貴女も今日はお洒落ね」

 

一緒に生活していても制服と家でのジャージ姿以外ほとんど見かけないちるの私服は色合いこそ地味であったが気取らない、シンプルなお洒落さが逆にちるの素朴な愛らしさを引き立てているように感じられた。

 

ライラに褒められて少し頬を赤くしたちるは誤魔化すように部屋を出て外出の準備を始める。小さいカバンに必要最低限のものを詰め込んで、戸締りを済ませ、玄関へぴゅーっと退散したちるの様子がかわいらしくてライラはくすっと小さく笑った。

 

 

 

 

 

あー、こんなことならただの外食じゃなくて、遊園地とか水族館とか映画とか、そういうとこ出かける計画立てればよかった。

 

帰り道、ちるはそう心の中でつぶやいた。

2人の初外出は結果的に非常に楽しく有意義な時間となった。ちるが以前から気になっていたものの1人で入れなかったという、最寄り駅の裏手にあるスペインバルは個人経営の席数が10席前後しかない小さな店だったが陽気な音楽と裏腹に比較的落ち着いて食事を楽しめたし、食事も美味しかった。

けれど、まるでこれでは「初デートが近所のコンビニ」みたいなものである。

すごく楽しかったし、心も弾んだが、それでも「思い出づくり」としては物足りなさを感じた。

 

 

 

 

 

 

いつまで一緒にいられるかわからないライラと少しでも思い出を作りたいと思い始めたのは同棲生活わずか3日目の頃だった。自分のことを語らないライラとそれに深入りできない自分。ちるにとっては先のことなど少しもわからず、また先のことに希望など持てなかった。

だから「今」を大切にしたいと、そう、心から思っていた。

そしてそれを自分にとって初めてかもしれない「思い出したい過去」にすることが出来るならそれ以上のことはない。

久しぶりに生じた「欲求」だった。自分が何かを「したい」と思っている現状にちる自身が驚いていた。いつもであれば久しぶりに垣間見た「エゴ」であろうと押し潰してしまっていたであろう。しかし、言外にそれを許さない姿勢をとるライラが傍にいて、「甘えてみてもいいのかもしれない」と、自分を何重にも縛り付けていた鎖の1つのカギを開けるように心を開いた。

 

 

 

 

 

「ちる、今日は誘ってくれてありがとう」

「いや、なんか、ごめんね、こんな」

「次はどこ行きたい?」

「え」

 

ライラの何気ない「次」という言葉に目を見開く。帰路についていた足が止まる。

振り向いたライラの表情は驚くほどに眩しく見えて、灰色だったはずの空には綺麗な満月が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

「次……」

「っ!!」

 

ライラの笑顔に充てられてちるの表情が緩みかけた瞬間だった。

突然ライラは小さく体を震わせるとちるの手をきゅっと握って歩みを促す。

 

「どうしたの?」

「……ちょっと、寒くなってきちゃった。帰りましょう。家帰ったら写真鑑賞会しない?」

 

しばしの間のあと和らげな声音でそういうライラの歩く速度はどんどん速くなっていく。ちるは悪寒のようなものを感じて一歩前を歩くライラの背を見つめる。

出会った日にあれほど薄着をしていたライラ、ブランケット1枚で寒さを感じないというライラの、自分の手首をつかんでいるその手は死人のように冷え切っていた。

 

 

 

 

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『ライラックは涙で育つ』(3)

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「ライラー、お風呂出たよー。交代」

「はーい」

 

2人の同棲生活が始まってすでに1週間が経過していた。

ライラはちると同じくらい無欲で、ちるに特別な気を使っているわけでもなく本当に生活に必要な最低限のものしか求めなかった。

ただ、ちるに対してはもっと貪欲になってほしいと願い、面白そうな写真や動画をネット上で見つけてはそれを見せて2人して笑っていた。

 

ちるはもっと自分を認めてあげるべきなのだ、とライラは思った。無欲であることは美徳ではない。もとは他人に迷惑をかけたくないという彼女の優しさの産物なのかもしれないが、それが彼女の人生をモノクロに変えてしまったのであればそれを良しとするわけにはいかない。

 

 

 

 

布団の中。視線を少しあげると寝息を立てるちるの顔がそこにある。

ライラはただぼんやりとその寝顔を眺めていた。

私はいつまでここにいられるのかしら。

私はいつまでこの幸せな日々を享受できるのかしら。

私はいつまで……私でいられるのかしら。

 

体を横にして目を閉じて、ただ日が昇るのを待つだけのこの時間がライラは嫌いだった。

ちると話すことも、笑いあうことも出来ずただ静寂が続く。カチコチと機械的な音だけが響く空間に見るはずのない悪夢を思い描いて小さくうずくまった。

すーすーというちるの寝息だけがただこの闇を裂くかすかな光のようにさえ思えた。

 

ちると出会ったのは偶然か、必然か。

ちるを助けたいと思ったあの衝動は何に喚起されたのか。

今、ちると一緒にいたいと思うのは、自分の感情なのか。

 

静寂は思考を複雑にする。複雑にして、迷宮入りにしてしまう。

答えの出ない思考はただただライラを苦痛へと押しやって、流したことのない涙が目の奥で溜まるのを感じた。

 

結局はいつもちるが起きる前に耐えられなくなって、ちるを起こさないように細心の注意を払いながら起き上がって台所に立つ。朝食の準備をして、お弁当を作って、静寂が終わるのを待つ。

ちるが学校へ行ってしまってからも静寂は続くけれど、それでもちるは頻繁にLINEを送ってくれたし、家のベランダによく忍び込む猫に2日目にして懐かれたライラは本人の覚悟した程辛い思いをせずに済んだ。

 

 

 

 

 

「ねぇ、ライラ。ライラって1人っ子?」

 

ある時、ちるが何となしに尋ねた。

ライラはちるに自分のことを尋ねられるのをさして気にしないのだが、ちるが気を使ってあまり踏み入ったことは聞いてこない。そんな中で珍しく来たのがそんな問いだった。

 

「姉みたいな存在が4人と、あと生まれたばかりの妹が1人」

「結構大人数姉妹なんだね」

「そうね。お父様は私たちを姉妹と言うけれど、お互いに不干渉だから姉妹って感じはしないわ」

「そうなんだ……ほら、私、1人っ子だからさ、兄弟ってどんな感じなのかなって」

「参考にできるようなお話が出来なくてごめんなさい、でも、私、思うの。今の私とちるってまるで姉妹みたいじゃないかって」

「私も」

 

傲慢なことを言ってしまったかと言い切ってから少しだけ不安を覚えたが、即座にちるが俯いて頬を上気させながら同意してくれたので思わず口角があがった。

 

 

 

 

 

あぁ、こんな日々がいつまでも続かないのはわかってる。

わかってるけれど、続けばいいと思う。

あと……数週間。あと数週間だけ、幸せを感じさせてほしい。

 

 

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ライラックは涙で育つ(2)

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「思ったより随分とシンプルな部屋ね」

 

ライラの発言にちるは気恥ずかしそうに頬を赤らめて俯いた。その様子にライラはくすっと愛らしく笑うとちるのベッドに腰を掛ける。

 

「突然のお願いなのに聞いてくれてありがとう」

「命の恩人だし、これくらい、別に……」

 

 

 

 

 

あの後、ちるはライラと一緒に電車に揺られ、そこで「匿ってほしいの」と突然お願いをされた。何から匿うの、とかどうして、とか聞かねばならないことは山ほどあったはずだが、気付けば「いいよ」と二つ返事で答えていた。それにはライラも驚いたように目を見開いて「え、いいの?本当に?」と身を乗り出して問いかけてきたが、ちるは「1人暮らしで部屋狭いけどそれでもいいなら」とだけ返してライラを受け入れた。

 

「いつまで居ていいの?」

「いつまででもいいよ。あ、でも光熱費とか食費とか全部持つのはさすがに……」

「あぁ!! ちる!! あなたってなんていい人なの!! 成り行きで転がり込んでおいてだけど、あの時助けたのがあなたで本当によかった!!」

 

まだ出会って3時間も経っていないというのに、ライラはもうすっかり昔からの親友のようにちるに抱きついて笑っている。

ライラのことを知るのは少しずつでいい。ライラはしばらくここにいるみたいだから、と不思議と警戒心は抱かなかったしライラがいることを迷惑に思うことなど少しもなかった。たとえライラが凶悪な犯罪者だとしてちるが警察から匿っている状態だとしても、どうせ死んでいたはずの命なのだからそれで制裁を下されても大したことじゃないのではとさえ思った。

 

 

 

 

「ライラ、学校はいいの」

「えぇ……イギリスで飛び級して大学出てるから、大丈夫」

「と、飛び級!? というより、ライラ、歳は?」

「ちると同じくらいだと思うわ。ずっと日本にいたなら高校生しているはずだから」

 

夜。クッションを敷き並べその上にシーツを一枚かけて簡易布団を作った。ちるは自分がそちらで寝ると言ったのだがライラがあまりにも強く「ちるはベッドで寝て」と言ってきかないため、その通りにすることになった。相当寒いはずなのに、ベッドの脇でブランケットを掛け布団代わりにしているライラはあまり寒そうにしていない。パジャマ代わりにちるは自分のジャージを貸したのだが、ライラはちるより背がすらりと高くて足も手もつんつるてんになってしまっていてやはり寒そうだ。

イギリス出身だから寒さに強いのかな、さっきまで着てた私服も相当薄着だったもんな……

うつらうつらと眠気が襲ってきてちるはゆっくりと瞼を閉じる。ライラに色々聞くのは明日にしよう、とそう思いながら意識を手放した。

 

 

 

 

 

翌朝、ちるは香ばしい肉の焼ける匂いで目を覚ました。台所からはジュウジュウ、パチパチといい音がする。

 

「あ、ちる、おはよう」

「おはよう、ライラ……朝ごはん作ってくれてるの?」

「えぇ、せめてこれくらいはしたくてね」

「あれ?でもベーコンなんて買ってなかったはずだけど……」

「朝早起きして買ってきたの。卵も少なかったから補充しておいたわ。食パンはカリカリ派?」

「あ、いや、焼かなくて大丈夫」

 

昨夜貸したジャージ姿のままでキッチンに立つライラの作る朝食は、ちるが1人暮らししてから食べた朝食の中で一番豪華といっても過言ではないメニューで、そして味もまた天下一品だった。

 

「お弁当も作っておいたわ。学校、頑張って」

「ライラは?ずっと家にいる?鍵とかどうしよう……」

「出来れば外出したくない。パソコンだけ借りてて良いかしら?」

「うん、いいよ。わかった。ノーパソしかないから置いてくね」

 

防犯のことを考えれば家主がいない家に他人を放置するのはどうなのかと思う。だが、不思議とちるはライラをとうに信用してしまっていた。

どうせ盗まれて困るようなものなんてないし、ね。

 

 

 

 

ちるは幼いころに両親を亡くして独り身の叔父の家に引き取られて育った。可もなく不可もない生活を送ってはいたがやはり早く自立したいという意思はあって、高校に上がると同時に1人暮らしを始めた。休日のみアルバイトをしているが「学生は勉強が仕事なんだから」という叔父の意見により、叔父からの仕送りで生計を立てていた。

特に趣味もなかったし欲しいものもない、無欲なちるは叔父が「一人暮らしに必要だろう」と言って無理に買ってくれたベッドやタンス、テーブルなど以外のものは特に買わず、「質素倹約」という言葉を体現したような日々を過ごしてきた。

ライラという異質な存在が灰色の世界を、無機質な自分の家を少しずつ侵食して色づけているような気がして、ちるは少しばかりの楽しさと、それから怯えを覚えた。けれどその怯えはまもなく「もう一度は捨てた命」という考えにより勇気に代わる。

 

それでも、せっかくだから今日はライラとの同棲生活スタート記念においしいものでも買って帰ろう。

それから仕送りのお礼に何かお菓子でも送ろう。

 

 

 

 

こんな簡単に前向きなことが出来るような人間だったんだな、と苦笑を浮かべながら、温かいお弁当の入ったカバンを手に、ちるは通学路をいつもよりいささか軽い足取りで歩き始めたのだった。

 

 

 

 

『ライラックは涙で育つ』(1)

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もし、本当に色眼鏡というものがあるとしたら、私のはきっと濃い灰色をしている。雲一つない快晴も、真っ赤なペンキが塗りたてのベンチも、太陽光を受けて輝く水しぶきも、全部全部モノクロな世界。

もう十分だった。高校生の私にとって中学生の頃なんて過去すぎるし、大学なんて未来すぎる。見飽きた景色はやっぱり何にも変わらなくって、変わってほしくない人たちは皆別人のようで。新しい世界に踏み出す勇気もない私の目には闇ですらも映らない。

 

空っぽ。

全部、空っぽ。私も、世界も。

 

 

 

 

 

高校からの帰り道、少女はいつものように学校の最寄り駅のホームで電車を待っていた。

冷たい風が少女の肌を刺す。3本目の通過電車を見送ると、ようやく車掌が「まもなく各駅停車○○行きが参ります」と独特の鼻にかかる声でアナウンスをした。

 

ぼーっと、目の前の線路を眺める。

砂利もレールも冷たい灰色をしていて、ついでに少女の立つホームも同じ灰色をしていた。

 

(やっと電車が、来る)

 

それ以上の何も思わなかった。ただ無意識に足が一歩前へ出る。左を見ると電車が近づいてきているのが見えた。もう一度、レールに視線を戻す。そして、もう一歩、足を前に踏み出す。

ぐらり、と視界が傾いた。

 

(あ……)

 

電車のクラクションの音。減速がようやく始まったばかりの電車が目と鼻の先にあって……

 

 

 

 

ふいに物凄い力で左腕を引かれる。そのあまりの力の強さに少女は肘から先がもげてしまうのではないかと、ぼーっとした頭で思った。

同時に、その腕「に」付いている身体がホームの中ほどへと飛ばされて冷たいコンクリートに鈍い音を立ててぶつかった。

 

「っ痛……ったーい…」

 

「大丈夫?」

 

地面に打ち付けられた衝撃に驚いた体が言うことを聞いてくれないようで、少女は目を開けられなかった。しかし耳はすぐに機能を取り戻したようで、自分を覗き込むようにしている誰かの気配とそれからとても澄んだ声が降ってくる。

目の筋肉をフル稼働させてゆっくりと瞼を持ち上げると、そこにはローレライ顔負けの声にも劣らない美しい少女が1人、こちらを見ていた。

 

透明感のある肌。この寒い中でコートも羽織らず薄着をしているその少女の腕は今にも折れてしまいそうなほど細く、けれどしなやかさがある。太ももの露出している脚もまた理想的なほど美しく、柔らかそうな肉感があるがモデルのように細い。髪は「アルビノ」のウサギのように色素が薄く、同様にその瞳もどこか青みを帯びているようだ。

 

 

 

 

「なぁに?そんなに私のこと凝視して。見覚えでもある?」

「え、あ、いえ、ごめんなさい」

「ふふ、面白い子。いいの、謝らないで。私はライラ。あなたは?」

「ちる。綾峰ちる」

 

ライラの背後で電車止まり、扉が開く。しかし、ちるの視線はこの少女にくぎ付けになっており動くことができない。

 

「そう、ちる。初めまして。よろしくね」

 

差し出された手を取るとひょい、とその手を持ち上げられる。気づくとちるの体は持ち上がっていて。すとんと地面に両足で着地した。体はまだ痛むが機能は完全に回復したようだ。

 

「よろ……しく…?」

 

ライラの華奢な腕が自分をいともたやすく持ち上げた事実に、先ほど線路に吸い込まれるように飛び降りかけた自分を助けたのもこの人物なのだと薄々合点がいく。

 

電車の発車ベルが鳴り出して、ちるは我に返った。3本も電車を見送ってようやく来た各駅停車。逃しては帰宅時間がかなり遅くなってしまう。

 

「この電車、乗るの?」

「う、うん」

「じゃあ、急ぎましょ」

 

ライラは繋いだ手をそのままにちるを引っ張って電車に乗り込んだ。またしても文字通り「体が宙を舞う」ように引っ張られたちるは相変わらずライラから目が離せない。

 

2人の後ろで電車のドアが静かに閉まる。

ゆっくりと車輪が回転をはじめた。

 

 

 

 

 

イベントに合わせて小説UP?

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真空管ドールズイベント参加中

 

皆さまこんばんは、お久しぶりです(´・ω・`)

ただいまSHOWROOMにて「真空管ドールズ」メインヒロインのキャラクターオーディションイベントに参加中でございます!!

かなりの激戦ですが「10:00,12:00,15:00,18:00,21:00」の全5回(時折+0:00にもやります)配信するのでぜひ応援に来ていただければ幸いです。

https://www.showroom-live.com/srv-izumi

 

はてさて、このイベントは2/26から3/11までとなっておりますがせっかくなのでこの期間中毎日このブログにてちょっとした小説をUPしようかなと思ってます。

このイベントの最終日(もしくはその翌日)に完結するような形でつながったお話を作ろうかなと思っております。

明日から初めて最終日まで……続けられるか…私……

 

いつかこの小説の朗読配信もやろうかなと思うので(場合によってはUPした翌日の1回を朗読配信にするかも…?)小説読んで私に興味を持ってくださった方がSHOWROOMにも足を運んでくださるようになれば「いず民」の輪が広がるのかな、なんて思ってます♪

 

とりあえず今日は今から配信してプロット作って寝る!!

明日から本気出します(真顔)

壮大な夢を見ました

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外は霙だそうで、明日大雪で学校休みにならないかなーなんて思ってます。
皆さんこんばんは。

はてさて、今日はひっさびさにすさまじい夢を見たのでそのお話をちょこっとだけ。

夢を見るとき壮大な夢だったりすると「あ、この夢、昔見たことある」ってなることありませんか?
私は今日サバイバル系の夢を見てミッション的なものをこなしながら生き延びるというハードな睡眠時間を過ごしていたのですが、昔見たことがある夢だったようで「次はこうすれば助かる、このミッションでこの人が死ぬ」とかなんとなくわかって、ハラハラドキドキが苦手な私でも普通に楽しめていたんです。

でも、とあるシーンになって大変な事態が発生しました。
仲間もだいぶ少なくなり、立て籠もっていた建物が焼かれ、外の草むらで息をひそめていたとき、ふいに「あ、これ、私が死ぬシーンだ」って気づいたんです。

何とかか回避しようと思ってもどうしようもなくて、とうとうまもなく運命のシーンっていうときに、奇跡が起こりました。
なんと、そこに私の愛する六つ子が……!!!!!!!

彼らが出てきたことに驚いて「あ、運命が変わった」と気付いた喜びで目が覚めてしまったので結末はわかりませんでしたがたぶん回避できたんじゃないかって思います。

人との出会いが運命を変える、なんてドラマチックなことをと思いますが夢の中の出来事がなんとなく現実の私自身へのメッセージのようなものなのかなって思うと、ちょっと考察してみようかななんて思いましたw

いず民が私の運命を変えてくれているのか、それとも運命が私といず民を引きあわせているのか。
人生って本当にドラマみたいで面白いですよね♪

今日はどんな夢が見れるでしょうか……楽しみです。

そろそろ本気出す(* ´艸`)

テーマ:
年が明けてもう2週間が経ってしまいましたΣ(゚д゚;)
改めまして、皆さま、あけましておめでとうございます!!

大学の授業もいよいよあと3週程度でおしまいだそうで、まもなくテスト期間になるそうな(ノω・、)
学年が上がると内容の専門性が高くなるので結構苦戦しています(TωT)

野球はオフシーズン、ディズニーも夏祭りとハロウィン以外のイベントのときはさほどお熱にもならず……と、そんな最近の私の楽しみは一日一篇短編小説を書くこと。

元々高校時代、文芸部に所属していて趣味で書いてはいましたが大抵長編ばかりだったんです。
時間がない中で、あえて「A4用紙1枚に収まる作品」という制限を自分に課して小説を書くのですがこれがもう非常に難しい(((( ;°Д°))))
二次創作であれば元の設定が出来上がっているので小噺感覚で作れますがオリジナルとなると本当に大変です。

二次創作小説も書いてはいますが、あえて自分の過去作のリメイクを書くのが楽しみになっています。いや、小学生時代の私の文章力って恐ろしいですね(目一杯の皮肉を込めて)
でも子供の発想って大人が思いもしないような素敵なものが多いのは確かで、設定だけでいうなら最近作った作品よりずっと面白いな、と思ってます。

ここで皆さんにそのうちの一篇を、と思ったのですが大どんでん返しがある作品が多くって、この小説の面白さを伝えようと思うとネタバレしてなくてはならなくなるので我慢です(* ´艸`)クスクス

いつかそれなりにちゃんと書いてお見せ出来る機会があれば、そのときに♡


皆さんもぜひ素敵なマイブームをさらに素敵にアレンジして毎日を楽しんでみてください!!
(ちなみに私はバイト中が1番ネタが浮かびますw)

おそ松ナンジャ\(´ω` )/

テーマ:
皆さんこんにちはー\(´ω` )/
今日は二度目ノおそ松さん in ナンジャタウン行ってきましたので前回のと併せてご紹介♡



今日食べた「どうぞ、お好きな松を☆トト子に捧ぐ6つ子餃子」
それぞれのキャラのタレはキャラのイメージカラーになっていてタレの食べ比べできるのが魅力!! 真ん中のトト子ちゃんは白身魚でした。:+((*´艸`))+:。



前回食べたカラ松くん↑



これまた前回食べた「僕とデートしない?キュートな末っ子☆トド松パフェ」!! いちごソースとマシュマロがふんわり甘くて女子力高めスイーツ\(´ω` )/



今日食べた「ニャンコが友達☆寂しがり屋の一松クレープ」
下の方に入っているキウイソースと上のオレンジシャーベットとで1つで2度美味しいクレープでした!! 生クリームが美味しかったー〃´∀`)



そして前回食べた「松野家長男☆おそ松兄さん餃子」と「カラ松ガールズに捧ぐ☆カラ松の肉食系・肉!餃子」です
これ両方食べるのは結構ボリューミーでした……((((;゚Д゚)))))))←なおこの後に上記のトッティパフェを食べた模様

これらを食べるとそれぞれにオリジナルブロマイドが付いてくるんです!! 全コンプしたい(*´∇`*) 全13種類!! あと2回は行かねば(´゚艸゚)

明日が新商品入荷日らしいので今日はグッズがほとんどありませんでしたが、おみくじ屋台も1回400円で楽しめてオリジナルグッズが手に入るのでオススメです♡

ぜひ遊びに行って見てください!!そして推し松ができたらぜひ教えてください笑

VENUS PROJECT live

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さる金曜日、VENUS PROJECTのライブに出演させていただきました\(´ω` )/

SHOWROOMの仲間である都築さん、なつみさんと「ユメノツバサ」を歌い、A応Pさんも含めて全員で歌ったエンディングの「天使の一撃」、アンコールの「SMILE ON YOU」「ユメノツバサ」にご一緒させていただきましたー(*/ω\*)



秦さんとは前回のお披露目ライブの頃からたくさんお話しさせていただいて、お会いしてすぐ思わず抱きついてしまいました。:+((*´艸`))+:。 どうやら私のTwitterも見ていらっしゃる模様で(゚Д゚;≡;゚Д゚) 美しすぎて尊かったです♡



姫崎さんとは実は生まれ年が同じなんです٩(๑>◡<๑)۶ 人見知りだと仰ってましたがこの日私が最初に会ったメンバーが姫崎さんで朝一にとってもとっても愛らしい笑顔で「おはようございます」と……内心激しく悶えました。



本番近くにバタバタしていた中でも、一緒に写真映るのを快くOKしてくださった根本さんですがとっても面白い方でした笑 根本さんがお話なさると楽屋の雰囲気もパーっと明るくなってまさに天使!!



お披露目ライブでお会いした時も優しく話しかけてくださった早瀬さんですが、今回も凄く凄く優しくしてくださって、緊張してる私をたくさん褒めて癒してくださって惚れそうでした、いや、惚れました╭( ・ㅂ・)و グッ !




中西さんはもう本当に「お姉様!!」とお呼びしたくなる程、頼りになってとてもかっこ良くて、けれどフレンドリーに話してくださって思わず拝みたくなりました〃´∀`) 前回のライブでのダンスがすごく素敵で憧れていたのでその事をご本人に伝えられて良かったです(*´艸`*)




そして、小野さん!! VENUS PROJECTの前から声優さんとして存じていたのでお話出来て幸せでした♡ 小野さんの歌う「Girl」にどハマりしていてその事を熱く語ってきました!! ドレスのように透明感!! 白い!! ふわふわ!! な女子力の代名詞のような方でした(ฅ'ω'ฅ)♪




そしてそして、A応Pさんともお写真撮らせて頂きました♡ 荻野さんとお話しさせていただく時間があったのですが(というかリハでそのダンスと笑顔に胸キュンしてしまい話せる機会をうかがっていたのですが)、好きなアニメの話など少しですがお話出来ました!! 皆さんとっても笑顔が愛らしくてMP全回復です\(´ω` )/

そんなこんなで私の人生初めての「ライブのステージに立って歌う」という経験は最高に楽しい思い出になりました(ू•ω•ू❁)