北海道のワインと食、観光に関する知識と情報を中心にお届けします。
  • 01 Jun
    • 「しりべしアグリツーリズム」(2017年6月1日 北海道新聞掲載)

      北海道の縮図とも呼ばれる後志地方は、北海道をイメージさせる美しい自然の風景と魚介類や農産物、酪農製品が揃(そろ)う。さらにはウイスキーや日本酒、ビールにワインの酒類があり、「酒と肴(さかな)」の組み合わせにも事欠かない。札幌や新千歳空港からの距離感も含め、道内外からの旅に最適の地域と感じる。   後志の魅力や強みを生かし、私は8年前からワインを旅のメインテーマとした小樽発着のワインツーリズムを手掛けている。ワイナリーやブドウ畑の訪問とテイスティング、地域の食材にこだわったおいしいランチを組み合わせ、ワインを中心とした地域の魅力を五感で楽しむ旅がワインツーリズムである。   一方、表題にある「しりべしアグリツーリズム」とはワインツーリズムと同様に後志の農産物の品質の高さと多様性を伝える産地訪問の旅であり、サクランボ、トマト、ワイン用ブドウ、ユリ根などをテーマとしている。   畑を訪ねて見学や試食をし、生産者や料理人による新しい食べ方や料理を味わうなど、多くの人の協力を得て実施する学びとグルメを融合させたツアーである。参加者が驚くのは南米の原産地と同様の環境を再現して作られる高糖度のトマトや47種類も植えられているサクランボ、13の品種が順に旬を迎えるプルーンなどだ。   旬のおいしさや品種による違いを体験するとみんな笑顔になる。食の安全や産地、作り手の人柄を知り、後志の良さを実感していることが伝わってくる。今年も道内外、そして地元の方にも食の感動と笑顔を届けたい。(シニアソムリエ・小樽)   ------ しりべしアグリツーリズム 2017年7月9日(日)のツアー紹介URL http://winecluster.org/archives/5289/

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  • 03 May
    • 「時間旅行」 ①予告編

        今回からしばらくにわたって、「時間旅行」と題してここに書くのは私の人生の大きなターニングポイントとなったMBAの取得と会社員からの独立・起業に至るストーリーである。  これらは人に伝えるというよりも、私が独立・起業した背景に何があって、どのような想いと夢を持ち、どのようなことをどのくらいの年月にわたって行ってきたのかについて、私自身が確認する目的で書いてみたい。    このブログでは、2001年に執筆した「ホテルマンから葡萄畑へ」の3回連載と2017年4月に執筆した「えぞふじ ~新しい取り組み~」を掲載した。また、恩人との25年振りの再開についても書いた。これらを通じて、なぜ自分がワインの道を歩んでいるのか、そしてずっと北海道のワインにこだわり続けてきた背景や、常にプロとしてアップデートを続けていかなくてはならないという私の生き方を自分自身で再確認することができた。    いわゆる「よそ者、若者、馬鹿者」である私が北海道のワインに光のあたらない時代に北海道が世界有数のワイン産地になると確信して北海道に移住し、そこから今日現在の時点までの自らの取り組みや根幹にある考えは強烈だと我ながら思う次第だ。  ホテルマンから北海道のワイナリーへの転身、百貨店でのソムリエの登場、社会人学生としての小樽商科大学での6年、会社や北海道のワイン業界にとって前代未聞の社外活動、NPO法人という組織形態でのベンチャー設立、中核資源に特化した持たざる経営。型破りな生き方、従来の常識にとらわれない発想と行動はその当時においては突飛と思われても、やがて時代がついてきたように感じるのである。    次回以降、そうした具体的なエピソードを取り上げながら、そのエネルギーと信念、集中力の維持とスピード感を自分自身で振り返ってみたい。それらを通じて、いまの私がブレていないか、立ち止まっていないか、目指すものは何なのか、そうしたことを頭のなかで整理する。そして、誰にどのようにお世話になって今日があるのか、感謝と誠実を心に振り返っていくことが、社会人として25年目であり独立・起業して5年目のタイミングにふさわしいのではないかと考える。  こうしてみると、これは「私の履歴書」を自著するようなものだが、よろしければお付き合いをいただきたい。(本編に続く) (2012年の金環食の朝 静岡県熱海市にて)

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  • 22 Apr
    • ソムリエの道に導いてくれた恩人との再会

      1992年に超生意気な新入社員としてホテルサンルート蔵王に入社した私に、フランス料理の美味しさとワインの魅力、そしてプロフェッショナルとしての仕事のありようを叩き込んでくれた方が、現在は「ゆと森倶楽部」のシェフをされている佐藤浩三さんです。   目をかけていただきながら、その厳しさに反発し、たったの5年足らずで、若かった私が飛び出すように辞めてから20年。手紙を書いてこれまでの歩みを報告し、家族を食事に招待いただき、2017年3月30日の夜にお会いすることができました。 シェフの作る料理は、とても丁寧で優しくて美しく、素材への感謝と愛情があり、何よりもおいしく、お客様に向けたものでした。 大好きだったサーモンのリエットにはじまり、私が死ぬ前にもう一度食べたいと思っていた「マトウダイのポワレ ブールブランソースにエピスの風味」。 丁寧に湯むきしたトマトと、いまの時期ならではの三陸の新わかめ、軽くポシェした帆立と季節を感じさせる菜の花が添えてあり、バターと白ワインとエシャロットをベースにしたソースの美味しさは泣きそうなくらいに変わらない。カリッと皮目からの焼きかた、塩気とやわらかさ抜群の白身魚の風味。盛り付けと香りにも刺激され妻と子供たちに隠れてそっと涙しました。   25年前に佐藤浩三シェフに出会わなければ、いまの私はありませんでした。ありがとうございました。 この旅では、このほかの先輩方とも嬉しい再会がありました。和食の道を歩まれ、当時のホテルでも厳しさのなかに兄貴のように接してくれた高橋さん、芦立さん。私が世話係として毎年来るオーストラリアからのワーキングホリデーのスタッフといつも遅くまでお邪魔していたレストラン「えんそう」のマスター。20年振りに何も言わないで店に入った私に「阿部君かい?」と声をかけてくれた木村酒店さん。   いま振り返ると、私が遠刈田温泉で過ごしたのはほんの少しの期間でしたが、その後の人生においてどれだけ重要なものであったか。 ありがとうございました。心から、このたび宮城蔵王に来られたことに感謝し、私は北海道でしっかりとワインの未来に向かって頑張ります!   --- 前日に訪れたホテルサンルート蔵王の跡地は、「宮城蔵王高原教会」だった建物だけを残してすべて取り壊され、素敵だったホテルも中庭のプールも噴水もなにもありませんでした。   ホテルがあったことの痕跡は撤去しわすれたサイクリングロードの看板1枚のみ。 ---

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  • 21 Apr
    • 月浦ミュラー・トゥルガウ2015(テイスティングコメントと綺麗な写真)

      月浦ワイナリー(洞爺湖町) 月浦ミュラー・トゥルガウ2015  青みを帯び、洞爺湖の湖面を思わせる神秘的なまでの透明感と 艶やかさが特徴的。月浦ワイナリーならではの低圧でのプレスに よって得られる清澄で粘性豊かなミュラー・トゥルガウの優しい果実の香りが最初は控えめに、スワリングをしてグラスの内側をワインが空気に触れていくことで香りが増してきます。    青リンゴ、メロン、フリージアなどフローラルな香りの印象。ミュラー・トゥルガウは清楚で健康的な女性のイメージ。このワインの香りはグラスの中でだんだんと強くなり、前述のアロマに加えてグレープフルーツや、柑橘類のなかでも少しあたたかな印象となる オレンジのピール(皮)のニュアンスもあります。それはこのブドウ畑の樹齢の高さと土の肥沃さ、そして洞爺湖周辺の地熱の影響によるものと思います。  注いでからすぐに飲み干すのではなくグラスに10分ほど置くと内側にとても小さな気泡が少しあらわれ、このワインは若々しく、冷涼な環境で丁寧に発酵と熟成をさせてきたことが外観からもわかります。香りの変化を含めて、時間をかけてゆっくりと楽しみたいワインです。    口に含むとアタックにはやさしい甘み、しっかりとしていて軽快な酸味が感じられ、少しオイリーで口の中でさらに香りが膨らんできて鼻腔に抜けていきます。  優しさの中に芯の強さや力強さがいっぱい備わっており、甘みはしつこくなく、キレのいい酸味が豊かで「やや辛口」の表記通り。心地よい余韻があり、アロマティックでふくらみのあるリッチな印象です。噴火湾産のホタテのソテーにブールブラン(白ワインとバター)ソースをかけた料理や、若鶏のフリカッセ(クリーム煮)などにとてもよく合います! (2016年10月に開催された「とうや湖・月浦ワイン&グルメ祭り」にあわせてツアーを運行。会場にて岸本社長との記念撮影) (その日は洞爺湖に虹がかかり、中島をまたぐような虹の出現は神秘的でした!)  

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  • 20 Apr
    • ホテルマンから葡萄畑へ 3回連載最終回(2001年 日本ソムリエ協会機関誌掲載)

      「Australia wine is No. 1!」  オーストラリア人の友人ラッセルは主張します。ロバートたちも口を揃え、いかに南オーストラリアの気候が素晴らしいぶどうを育て、豊潤でしっかりとしたワインを生み出すかを語ります。  ワーキングホリデーで来日している4人のオージーは、いつでも明るく気さくで、何よりもビールとワインが大好きでした。私はリゾートホテルに勤務し、彼らに冬季アルバイトとしてレストランサービスやイベントスタッフをしてもらっていたのです。ワーキングホリデーでやって来る彼らの多くは熱狂的スキーヤーでもあり、毎年そのようにして3ヶ月、南半球から新しい友人がやって来ました。  冬の時季のスキーリゾート地では、外国人スタッフはお客様に人気があり、彼らのフレンドリーなサービスや愛嬌の良さはホテルに明るく楽しい印象を与えてくれました。    そのホテルでワーキングホリデーを受け入れて2年目にラッセルとの出会いがありました。それはいまから8年ほど前のことです。 (※1993年頃を指します)  当時、ワインに興味を抱き始めた私とラッセルの間には、特にワインについての意見の衝突が繰り返されました。レストランのワインを見ているときのこと。「フランスのワインが好きだ」という私の意見にあきれたように、「日本ではワインは造っていないのか?」「なぜ自分の国のワインに自信を持てないんだ?」というラッセル。さらに、「なぜ、酒販店で1000円で売っているワインを、ホテルでは3000円で販売するのか?」「このワイン産地にお前は何か関係があるのか?」と続きます。まるで、日本のお客さまがワインを敬遠するのはお前のせいだと言わんばかりに……。    また、彼は、街の看板や印刷物などに英語が書いてあることや、歌謡曲の歌詞に英語と日本語が混在していることなどについて常に辛口で、「なぜ、そうなのか」と問い詰めてきます。ワインについても、こういった事柄についても、いくら説明しても彼は絶対に納得しませんでした。  そのころの私は、彼が日本のことをすべて批判しているようにしか感じなかったものです。お互いに歩み寄りのない喧嘩を毎日しているようなもので、3ヶ月後に彼が帰国するときにも、形式的な別れをしただけになってしまいました。 ハウスワインにこそ国産100%のワインを……  私が北海道ワイン株式会社のワインと出合って、ワインの普及をいままでと別な視点で考え始めてから、ラッセルとの議論をたびたび思い出しました。  それまでは外国の安くておいしいワインを提供することや、原価率の見直し、ワインフェアの開催などでワインのおいしさと魅力を伝えていくことを行ってきましたが、日本人に愛される国産ワインや日本流の楽しみ方を一般の人に伝えていくことも、ワインをより普及させていくのに必要な課題だと感じるようになってきたのです。    その取り組みとして、業務店に対しては、これまでどちらかというと安価な輸入ワインが選択されることの多かった「ハウスワイン」に、国産100%のワインの導入を提案していきたいと考えています。ワインは本来、リーズナブルで親しみやすく、おいしいアルコール飲料であることを消費者に伝えるためにも、国産ワインのおいしさを知ってもらう機会を増やさなくてはならないでしょう。   日本のワインにも原産地呼称を  さて、最近は、長野県、山梨県などで「原産地呼称管理制度」に向けて着実に進展が始まりつつあります。実際、国産ワインと呼ばれているもののなかで、全体の約85%が輸入ワインや輸入濃縮果汁から造られている現状では、これらのワインと国産原料100%のワインを区別する基準が存在しませんでした。  ワインがその土地の農産物であることを明記する原産地呼称は、消費者に正しい情報を伝えていくうえでも必要なことでしょう。しかし、北海道にはそのような動きがないのが非常に残念です。私個人の考えですが、農業、酪農も含めた原産地呼称が北海道にこそ必要だと感じているからです。    いま、北海道では新しい取り組みが始まっています。安定した農産物としてのワイン用ぶどう作りへの転換が北海道各地で行われているのです。このような流れのなかで、堂々と自信を持って日本のワインを造り続けていくためにも、やはり原産地の表記はきちんと行われなくてはなりません。 ワイン造りを根付かせる  北海道ワイン株式会社では畑の開拓から30年間、一貫して農作物としてのワイン造りを主張してきました。自社で植えたぶどう、農家の方に植えてもらったぶどうはすべて買い取り、北海道にワインという農作物が確実に根付くように、北海道ワインは責任を持ちます。    北海道は広い大地と気候条件に恵まれ、垣根式の大規模なぶどう栽培地帯へと成長を続けています。ヨーロッパ系ぶどう品種は全国1位の収穫量を今後も維持していくでしょう。農業機械を活用することにより、ぶどうの生産コストも世界のワイン産地に比肩できるまでになっています。このようにして北海道ワイン株式会社では、北海道で育ったヨーロッパ系ぶどう品種100%のワインを、従来の1200円から800円台に引き下げて販売できるようになってきたのです。  北海道以外にも、後の世代にワイン造りを残していける基軸は日本の各地に存在しています。そこで植えられた樹からは毎年ぶどうが実ります。この恵みを棄てることなく、日本の産業としてしっかりと育てていかなくてはなりません。国産ワインの未来には会員のみなさまの協力も必要です。いままで述べてきた私の意見にご理解とご賛同をいただける方は、ご連絡いただけるとありがたいです。    私は、ホテルマンからぶどう畑へと、いままでと違う視点からワインの魅力を伝えられるチャンスに恵まれたことに感謝しています。現在はホテル勤務をしていたころと比較して、ワインに没頭できる毎日を過ごせる環境にあります。これらの幸運を大切にして、ものごとを自分一人で占有するのではなく、人と分かち合うように心がけたいものです。    何十年後か、日本人が誇りを持って外国人に「日本のワインがNo.1だ」と言っている光景を夢に、私は北の大地でのワイン造りを歩んでいくつもりです。(完) <著者プロフィール(当時)> 1974年1月30日生まれ。97年ソムリエ資格を取得。宮城蔵王のリゾートホテルを経て、仙台市内のホテルに勤務。日本ソムリエ協会では東北支部総務副部長を担当。 現在は小樽市に在住し、北海道ワイン株式会社総合企画室勤務。 ※記事中の記述は2001年当時のものです。人物の役職、イベント等の実施内容など現在とは異なっている場合がありますのでご承知おきください

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  • 19 Apr
    • ホテルマンから葡萄畑へ 3回連載第2回(2001年 日本ソムリエ協会機関誌掲載)

       北海道は日本の新しいワイン産地として、ぶどう作りからワイン造りへと着実に歩み始めています。ワインを造る仕事にかかわることで、学ぶことはたくさんありますが、何よりもぶどうとワインへの愛着が深まりました。  今回は、北海道ワイン株式会社でのぶどう栽培について、ご紹介します。   ぶどうの栽培地域  北海道小樽市は北緯43度に位置しています。これはフランスではマルセイユに当たりますが、マルセイユの地中海性気候とは異なり、寒冷気候に属する北海道では、ヨーロッパの北緯49度辺りと同様の気候条件を備えています。  このぶどう栽培の北限に近い気候条件では、ドイツ、オーストリア系の品種が栽培に適しています。昭和47年から、ヨーロッパより入手したワイン専用種の苗木を試験栽培してきた結果、日照量や積算温度から赤ワイン用のぶどう栽培に適するのは限られた品種のみであることがわかりました。  当社のワインの生産比率は白が70%を占め、原料ぶどうの糖度に応じてワインの品質を区分するドイツ式のワインづくりを行っています。スタンダードクラスのワインは辛口に仕上げ、遅摘みした完熟ぶどうからはアウスレーゼクラスのワインが醸造されます。    現在は、北海道の32市町村で、ワイン用ぶどうの栽培が北海道ワイン株式会社(本社・小樽)とともに始まっています。浦臼町は日本最大のワイン専用ぶどう畑「鶴沼ワイナリー」、三笠氏は未来につなぐ試験用ぶどう畑「みかさワイナリー」を擁し、余市町の契約栽培農家は最高品質のぶどうを生み出しています。  深川市、歌志内市、厚沢部町、網走市、岩内町、岩見沢市、遠軽町、奥尻町、置戸町、小樽市、北桧山町、北見市、共和町、倶知安町、札幌市、士別市、島牧村、壮瞥町、滝川市、月形町、中富良野町、仁木町、ニセコ町、沼田町、東川町、美幌町、蘭越町、留寿都村、小平市。  実りの秋、各地で育てられたおいしいぶどうから、輸入原料を使用しない純粋な国産ワインが、小樽の地で造られます。 栽培ぶどう品種  現在、北海道の白ワインといえば、ミュラー・トゥルガウが主力品種となっており、ケルナーがそれに続いています。よくリースリングの栽培について質問を受けることが多いのですが、不安定な特性をもつことから栽培が難しく、また、晩熟性のリースリングには雪の影響があり、北海道ではほとんど栽培されていません。  ミュラー・トゥルガウ、ケルナーは、ともにリースリングの交配種ですから、そこから受け継いだ気品のよさがあります。しかし、生育過程やワインの特性には明らかな相違があり、繊細で上品なミュラー・トゥルガウに対して、ケルナーは糖度も上がりやすく骨太な印象です。  赤ワインの品種は、ツヴァイゲルト・レーベ、セイベル13053が主力となっており、栽培管理の難しいシュペートブルグンダーやレンベルガーは自社農場の鶴沼ワイナリーで栽培しています。  フランス系の品種に比べて、なかなか知られていないドイツ、オーストリアのぶどう品種について解説していきましょう。   <ミュラー・トゥルガウ> 1882年ドイツのガイゼンハイム研究所でヘルマン・ミュラー博士によって開発された品種。リースリングとグートエーデル(シャスラ)の交配種です。(※) 寒冷地での栽培に適しており、北海道ワインにおいても主力品種として栽培されています。香気に富み、酸のすっきりとしたワインが醸造されます。 ※現在は、リースリングと シャスラ・ド・クルティリエール(=マドレイヌ・ロイヤーレ)の交配とされています   <ケルナー> 白ワイン用ぶどう品種。1969年にドイツのヴァインズベルグ試験場で開発。トロリンガーとリースリングの交配種で、ドイツの白ワイン用品種として最高級とされるリースリングの個性を失わず、近年の大傑作と評価されています。貴腐菌がつきやすい品種でもあり、甘さと酸のバランスのよいワインが醸造されます。   <セイベル> ワイン用ぶどう品種。フランスのセイベル博士により開発された交配種で、交配番号によって区別され、それぞれ異なる個性をもっています。耐寒性に優れているのが特徴です。 白用の9110からはすっきりとした白ワインが醸造されます。一方、黒ぶどうの13053からは軽い赤ワイン、ロゼワインが醸造されます。他に5279(白)、10076(白)があります。   <バッカス(バフース)> ローマ神話の酒神「バッカス」の名を冠する白ワイン用ぶどう品種。ドイツのガイルヴァイラーホーフ研究所で開発されたショイレーベとミュラー・トゥルガウの交配種です。 非常に香り高く、フルーティーなマスカット香を特徴とします。軽いながらも余韻の心地よいワインが醸造されます。   <ペルレ> パールを意味する白ぶどう品種。ドイツのアルザイ州立研究所で開発された品種で、ゲヴュルツトラミナーとミュラー・トゥルガウの交配種。果皮の色はゲヴュルツトラミナーやルーレンダーと同様にピンク色をしています。 まろやかな酸味とふくよかな広がりのある味わいをもち、よく熟成するワインとなります。   <ツヴァイゲルト・レーベ> 黒ぶどう品種。1922年にオーストリアのクロスターノイブルグ研究所でツヴァイゲルト博士によって開発されました。ブラウフレンキッシュ(レンベルガー)とサン・ローランの交配種。北海道以外では、ほとんどがオーストリアで栽培されており、オーストリアの黒ぶどうでは最も作付け面積の多い品種となっています。   <レンベルガー> ドイツとオーストリアで栽培される黒ぶどう品種で、オーストリアではブラウフレンキッシュと呼ばれます。小粒のぶどうからは、比較的色の濃い、ボディのしっかりとしたワインが醸造されます。  この他に、白ワイン用品種としてシャルドネ、トラミナー、ヴァイスブルグンダー(ピノ・ブラン)、オルテガ、黒ぶどう品種としてトロリンガー、シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)などが栽培されています。 <光芒(こうぼう)1999>  北海道でのグレートヴィンテージとなった1999年には、単一畑の単一品種で醸造した「光芒」が誕生しました。光芒とは光の筋を表す言葉ですが、日本の「国産ワイン」を照らすという意味も込めています。  パンフレットにはぶどう生産者、醸造者、糖度、気候、ワインのデータに至るまで、このワインにかかわるすべてを掲載しています。  鶴沼ワイナリーの今村直(なおる)農場長は北海道ワインの結社以来、日本で初めての試みを成功させてきた方です。ここで収穫された遅摘みのミュラー・トゥルガウは、気品のある辛口に仕上がりました。  契約栽培園である余市町藤本農園が育てたケルナーは香気高く、天然の甘さと酸がマッチした銘醸ワインとなりました。ツヴァイゲルト・レーベは余市町の北島秀樹農園が育てたもので、畑の個性を感じさせる秀逸なワインに仕上がっています。    「ワインづくりは農業」という、毎年ごく当たり前の繰り返しのなかで、ぶどう生産者、ワイン醸造者の情熱が天に通じた証しが、グレートヴィンテージの喜びなのでしょう。  その土地の風土、気候がそのまま酒になるワインには、瓶詰めされてからも熟成していく神秘があります。どんなに素晴らしいワインへと成長していくかが楽しみです。    生産者にとっては当たり年もあれば、苦労した年もあります。身近なワインも、その一滴一滴は自然がはぐくんだ味わいです。たとえ現在、名前が知れわたっていないぶどうやワインでも、宝石の原石のように輝きを秘めたものがあるかもしれません。ワイン生産者の情熱をくんでくださり、大事にしていただけることがワインにも一番幸せだと思います。ぜひ、ワインに愛情を抱いてあげてください。 <著者プロフィール(当時)> 1974年1月30日生まれ。97年ソムリエ資格を取得。宮城蔵王のリゾートホテルを経て、仙台市内のホテルに勤務。日本ソムリエ協会では東北支部総務副部長を担当。 現在は小樽市に在住し、北海道ワイン株式会社総合企画室勤務。 ※記事中の記述は2001年当時のものです。人物の役職、イベント等の実施内容など現在とは異なっている場合がありますのでご承知おきください  

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  • 18 Apr
    • ホテルマンから葡萄畑へ 3回連載第1回ー後半(2001年 日本ソムリエ協会機関誌掲載)

      北海道でのぶどうの生長記録  北海道でのぶどうの栽培は5~10月に集中します。冬の間、樹は地面に横たわり、雪に覆われることで越冬します。春は雪溶けとともにぶどう畑での作業が始まります。まず垣根の架線を張り、ぶどうの枝上げが行われます。この作業は本社からも手伝いに出向き、総勢40名程の人数でも、鶴沼ワイナリー全部の畑を終了させるのには10日間以上かかります。    5月中旬を過ぎると、ぶどうは芽がふくらみ、展葉と呼ばれる新たな葉を伸ばす時期を迎えます。そして、6月下旬から品種ごとに開花の季節が到来します。ぶどうの花は白い小さなもので、この時期に雨が降りにくい北海道は、やはりぶどう栽培に適している土地柄だといえるでしょう。  7月はぶどうが生命力を誇示する季節です。畑では防除や除草、垣根の枝切りなどの作業に追われます。8月に入ると黒ぶどう品種が色づき始め、ふくらんだ実に甘さをたくわえます。夏といっても、北海道ではお盆を過ぎる頃には、朝夕に冷え込みが感じられるようになります。緩やかな丘でさえぎるもののない強い日差しはぶどうの糖分を増し、朝夕の冷え込みは酸が抜けるのを抑えています。台風が来ないので、収穫までの間の雨の心配もほとんどありません。  生食用品種は、早いものではお盆過ぎから収穫が始まり、ワイン専用品種は1ヶ月ほど遅れて収穫が行われます。ワイン専用種は食べてもおいしくないとよくいわれますが、実際に食べてみると、甘さと酸味が濃厚で、香り高い味はなかなかのものです。ただ、ぶどうを運んでくる500㎏入りのバケツにはスズメバチが寄ってくるので注意が必要です。    収穫は畑によって糖度が上がる頃合いを見計らって行うので、最終は10月の下旬まで続きます。1999年には余市町で、2000年には鶴沼ワイナリーで、ケルナーに貴腐状態が発生しました。北海道では11月上旬から雪のリスクがあり、アイスワインは期待できません。  私たちのワイン造りの中では、貴腐状態がもっとも糖度の高いぶどうを収穫することができますが、それでも完全貴腐化してから収穫することは、これまでに一度しか行われていません。通常は、完熟果実の貴腐状態が30~40%程度になった時点で房ごと収穫します。その割合を貴腐36とか、貴腐39と表現します。これは、トカイアスーが貴腐果をどのくらい混入するかでプトニュスの表示が決まるのと同様です。  完熟果実を遅摘みしても貴腐状態が訪れない年もあります。北海道ワインで貴腐状態のぶどうが収穫できたのは、10年間で3~4回だけでした。  すべての収穫を終えた畑では、落葉とともに翌年のための剪定が進められ、雪が降る前に架線降ろしが行われます。 北海道の魅力  さて、北海道はアウトドアでワインを楽しむのが、どこよりも似合うところです。自社農場鶴沼ワイナリーのある浦臼町では、8月の最終日曜日にワインフェスティヴァルが開かれます。これは鶴沼ワイナリーを見渡す丘での食べ放題、飲み放題のイベントです。羊の丸焼きやジンギスカン、ジャガイモなどの野趣たっぷりの料理は野外で食べるのに最高です。  9月の第2日曜日には、小樽の北海道ワイン工場向かいの広場で、ワインカーニヴァルも開催されます。こちらは入場無料で、お客さんたちに会場内の屋台で料理や飲みものを買ってもらうスタイルです。見晴らしの良好な広場からは小樽の海と街並みが見渡せ、北の収穫祭として恒例となっているイベントです。    現在、この広場の下側20haを果樹園として整備中です。この果樹園は原料調達が主目的ではなく、りんごやぶどうを植えて、市民がピクニックなどに訪れる公園として整備します。海だけではない小樽の魅力を楽しめる場所にしていこうという計画なのです。ぶどうの丘を越えるとワインの工場が見えてくる、そんな風景があと4年くらいで完成する見込みです。    このようにおいしい食材に恵まれた北海道で、純粋な北海道産ワインを青空の下で楽しめることは、実際に北海道に来るまでは知り得なかった喜びです。楽しさを共有する風土、この土地のおおらかさ、自由と環境の素晴らしさは、私に生きる喜びを実感させてくれました。  おいしく食べられることは人生の幸せです。余談ですが、この土地に住んでみてわかったことのひとつに、昼食がおいしくて、食べれば食べるほど、夕食にも食欲がわくということです。ここには雄大で恵まれた自然環境、海からの新鮮な魚介類、羊や牛などの肉類、酪農がはぐくむ乳製品、風味の濃い野菜や卵など豊かな食材、そして農産物としてのワインがあります。日差しを浴びて過ごす休日はとても健康的で、気持ちに余裕が生まれてきます。そんな魅力もあるところが北海道のよさでしょう。  開道100余年の若い国、北海道。稚児がゆくゆく大人になるように、これからの可能性をたくさん秘めている土地なのです。 ドイツスタイル  北海道ワイン株式会社は1974年に小樽市に創立されました。その2年前から浦臼町鶴沼地区の原野を開拓し、ヨーロッパからもってきたぶどうの苗木を根付かせるところからワイン造りをスタートしました。当時の日本では、ヨーロッパ系品種の栽培実績はほとんどなく、役に立つ情報もあまり得られなかったようです。  植えつけた6000本の苗木は枯れていき、また、野ウサギに食べられて、根づいたのはわずか300本だけでした。そんな暗いスタートに陽光が差し始めたのが、ドイツに留学していた社員2名の帰国だったといいます。さらに、ドイツ人技師グスタフ・グリュン氏を日本に招き、彼の指導のもと、北国の大地にドイツ系ぶどうの樹がしっかりと根づいていったのです。    最初のワインは、畑作りから7年後にようやく誕生しました。79年のミュラー・トゥルガウは、日本で最初にドイツ系の同品種で醸造した国産ワインとして、非常にプレミアムの高いワインです。昨年11月にはNHKの1時間の生放送番組で、その貴重なワインがテイスティングされました。21年の時を経た白ワインは琥珀色の格調をたたえ、香りにも味にも穏やかさと気品を備えていて、味はまったく劣化していませんでした。本物のもつ熟成の喜び、誇りがここにはあります。   ドイツ、フランスへの研修  グスタフ・グリュン氏は、現在、ドイツに帰国。ヴュルテンブルグのホーホルツ村ワイン醸造所のケラーマイスターとして勤務されていますが、今でも毎年北海道を来訪して、技術指導をしてくれます。また、北海道ワイン株式会社にもドイツへの研修制度があり、昨年は苗木技術の習得のため社員が1年間の研修に赴き、私は今年5月17日から9日間、ドイツ、フランスに行かせてもらいました。  インターヴィティス(ワイン博覧会)の見学、ヴュルテンブルグ、バーデン、ブルゴーニュ、アルザスの醸造所、畑を訪問しました。  これまで書物のなかで得てきた知識、憧れてきたヨーロッパでのワイン造りに直に触れることができ、また、実際にその風土の中で料理を楽しむなど、生きた体験をすることができました。ヨーロッパではまさに「ワイン造りは農業」という言葉を実感した次第です。   <著者プロフィール(当時)> 1974年1月30日生まれ。97年ソムリエ資格を取得。宮城蔵王のリゾートホテルを経て、仙台市内のホテルに勤務。日本ソムリエ協会では東北支部総務副部長を担当。 現在は小樽市に在住し、北海道ワイン株式会社総合企画室勤務。 ※記事中の記述は2001年当時のものです。人物の役職、イベント等の実施内容など現在とは異なっている場合がありますのでご承知おきください

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    • ホテルマンから葡萄畑へ 3回連載第1回ー前半(2001年 日本ソムリエ協会機関誌掲載)

      はじめに  雄大に広がる北海道の大地。澄み切った空気、からりとした気候、さんさんと降り注ぐ太陽、そして豊かで清らかな水。この地こそ、優良ワインの産地として無限の可能性を秘めた宝庫です。北海道は梅雨や台風の心配のいらない日本でも唯一の地域です。そうした点からも、ここはワイン用ぶどうの栽培にまさに最適の大地です。  この北の大地で「ワインづくりは葡萄づくり」として、本物の国産ワインを造る「北海道ワイン株式会社」に私が入社してから早くも1年が過ぎました。前職は仙台市のホテルのソムリエでしたが、その私が北海道ワイン株式会社にやって来て体験したこと、驚きや感動の数々を、今号から3回にわたって掲載します。   北海道産100%との出会い  1999年秋、仙台市でのこと。初めて入った酒販店で、1本の白ワインとの出会いがありました。その酒販店は自宅の近くにありながら、それまで入ったことのない店でした。どちらかというと、日本酒にこだわりのある雰囲気が感じられていたのですが、酒質を吟味したものを正直に売りそうな店構えです。そこの冷蔵ケースで、ふと目に留まったのが「北海道の詩」というラベルのついたワインでした。さほど大きくない店内ですから、お店の方が声をかけてきます。お店の方に勧められたそのワインは、価格も手頃で「一度試してみよう」という気持ちになれるものでした。    それまで私がもっていた国産ワインのイメージといえば、飲むのが恥ずかしいもの、輸入ワインとブレンドして造った偽物という印象しかなく、自分が勤務するホテルでも国産ワインは扱っていませんでした。  そのワインを携えて家に帰り、あらためてよく見て、さまざまなことを感じました。白いすりガラスのボトルに淡い色使いでぶどうが描かれたそのラベルには、ヴィンテージ、ヨーロッパ系品種名が書いてあり、ぶどうの収穫地が深川市と記載されていました。日本のワインできちんと3点表示をしたものもあるのだなと思うと同時に、原料収穫地を明記していることにたいへん驚きました。裏ラベルを見ると、一番下に、このワインの造り手である北海道ワイン株式会社の社長名が書かれ、判が押してあり、そこからも責任感が伝わってきました。    コルクを抜くと、そこには北海道のマークが焼き印されていました。そのコルクの香りを嗅いだ瞬間、鮮やかに幼少の記憶を思い出したのです。昔、北海道の祖父の家で食べさせてもらったぶどう。まるでその時の様子まで浮かんでくるようでした。香りが記憶を刺激したのでしょう。  ワインの味わいには、慈しむような甘さと、フレッシュな酸が広がる生きた風味があり、原料であるぶどうに対して素直にワインを造っている真面目な印象を受けました。  「北海道の詩」を飲みながら、頭の中には、いつしか北海道のワイナリーの様子が連想されてきます。”北海道は高緯度地帯にあるから、ヨーロッパ系品種を栽培するのに適しているのだろう。魚介類や野菜、酪農製品など、おいしい食材と料理に恵まれた土地。冷涼な気候を好むぶどうから繊細な白ワインが造られ、毎年間近でそのワインのできを見守れることは素晴らしい喜びだろう”と、私はこのワイナリーの人々がうらやましく感じられたのです。  まさに「灯台下暗し」です。北海道でワイン専用種が栽培され、日常的な価格で販売されています。ワインは輸入品が本物で、国産ワインは偽物、または自己満足のような高級ワイン。ずっとそんな思い込みがあり、自分のなかに舶来主義があったのだなと気づかされたのです。   ワイン、もっと気軽に  私は、世界中の食文化を取り入れた日本の食卓に、ワインの楽しさと魅力が加われば、新しく楽しい日本の食文化が誕生するだろうと期待しています。ソムリエという仕事を通して、多くの人々にさまざまな食材や料理、ワインの楽しみを伝えていくことを一生かけてやっていこうと決めていました。  ちょうど「北海道の詩」に出会った頃は、赤ワインブームを経てはいましたが、まだ、一般的にワインが抵抗なく浸透しているとはいえない状況で、ワインの魅力をアピールするためにさまざまな方法をホテルで試していたときでした。その多くは、安くておいしい輸入ワインを導入することでしたが、やはりワインには名前の難しさや蘊蓄がつきまとうイメージを払拭しきれずにいたのです。    国内に尊敬すべきワイン生産者がいることを知ってからは、しばらく北海道ワイン株式会社が醸造するワインを探し続けました。ミュラー・トゥルガウやケルナーは日常的な価格で辛口のワインが造られており、その上級クラスになるほど、糖度の高いぶどうを使用しているようです。ワイン専用種以外にも、デラウェアやキャンベルなどの生食用品種もありました。  一概に、生食用品種はワインには不向きといわれますが、果実がそのまま酒になった風味は日本人が慣れ親しんできた味覚です。私たち一人ひとりの遺伝子にも、その風味が好ましいものだと受け継がれているのでしょう。ズースレゼルブによって仕上げる生食用のワインにもよさがあります。  また、甘口のワインは料理と合わせにくいとよくいわれますが、ワインの甘さは料理の脂肪分となめらかに調和します。生食用品種のポートランドやナイヤガラは、カマンベールチーズやクリームソースなどの乳脂肪とよく調和しますし、それら特有のマスカット香は、マリネなどの調味に加熱せずに使うと、果実の風味が加わり味わい豊かになります。スペアリブなどの甘味のある味付けや、豚バラ肉の焼肉など脂肪の多い肉料理にも、キャンベルのロゼワインがよく合います。これらは北海道でも食べることの多い食材でしょう。  私はそれまで漠然と意識していた疑問に対する答えを導き出しました。それは、外国から来た文化は、きちんとした国産品が造られるようになってから初めて一般に普及するという事実です。自動車やビールがその根拠といえるでしょう。  ワインだけは、何回ものブームを経てその知名度も高いのに、それでも一般に定着しにくいのは、世界最高級のワインを輸入する一方で、「国産ワイン」に初心者向けや低級品のイメージ、国産ワインを語るのは恥ずかしいという舶来主義が潜在してきたからかもしれません。  私は、今では、日本人が誇りをもてる国産ワインがベーシックになったうえで、一般的な消費量が増大していってほしいものだと願っています。 北海道の大地に到着  初めての出会いから半年。自分の惚れ込んだワイナリーのワインを広く一般に認知させていきたいということと、ワインのある楽しく新しい食文化を伝えていきたいと願う気持ちを、北海道ワイン株式会社の嶌村彰禧(しまむらあきよし)社長に手紙でお伝えし、2000年3月、私は北海道ワイン株式会社に入社できることとなりました。  嶌村社長に手紙を書いた頃は、そこがいったいどんな会社なのかほとんど知りませんでしたが、ワインから伝わってくる真っ正直な姿勢を信じていたので、さほど不安はありませんでした。ただし、妻や両親の説得、友人やホテル仲間に自分の気持ちを理解してもらうには、かなりのエネルギーが必要でしたが…。    北海道ワイン株式会社のことは「おたるワイン」のブランド名でご存知の方も多いかと思います。北海道産原料100%でドイツ式のワインづくりを行っている会社です。全国で第6位、北海道で最大の規模を誇ります。  米作に代わり、安定した北海道農業の未来を支えることを目的に、昭和49年に社長が個人で創立しました。社是は「北海道ワインは北海道に必要な会社となります。感謝と誠実を心に」とあり、北海道ワイン株式会社の社員が持つ知志手帳からは「人生に悔いのない仕事、嘘や偽りのない堂々とした姿勢」を学びました。  本社のある小樽市は、かつて「北のウォール街」として栄えた洋風建築の建物が並び、現在その多くは歴史的建造物に指定されている、異国情緒あふれる魅力的な街です。  北海道ワインの工場は、小樽市からキロロへ向かう山の中腹にあります。ここの工場は山の斜面を利用しており、上部の原料受け入れ口から、製造工程が進むにつれて下側に移動する合理性をもっています。ドイツ式のステンレスタンク309基、5台のプレス機、最新鋭のクロスフローシステム、フローテーションを備えていて、年間300万本以上のワインを造っています。    日本のぶどう生産量を用途別に集計した公的資料や、国産ワインの生産統計から、日本の「国産ワイン」の約85%が国産ではない原料から造られていることがわかります。当社のワインは100%北海道産ぶどうで醸造し、そのぶどうは447haの自社農場「鶴沼ワイナリー」で栽培される、ドイツ、オーストリア系のワイン専用種と、余市町を中心とする契約ぶどう農家が栽培する生食用品種を使用しています。当社のぶどうの受け入れ量は2000年が3675トン。これは生食用、加工用を合わせて北海道で収穫されるぶどう全量の約36%にのぼります。    ワイン専用品種は、主力のミュラー・トゥルガウ、ケルナー、セイベル、ツヴァイゲルト・レーベ、バッカスなどが自社農場以外でも栽培され、ペルレやトラミナー、ヴァイスブルグンダー、シュペートブルグンダー、レンベルガーなどは自社農場でのみ栽培されています。  ぶどう栽培は、北海道の気候と広大な土地だからこそ、農業機械を活用した垣根式栽培を行うことができます。鶴沼ワイナリーではその規模の大きさから、レーザー光線で一定間隔に苗木を植えていく機械、垣根を挟み込むようにして余分な葉を切り落としていくリーフカッター、垣根に枝を固定していく誘引機など、ヨーロッパ同様の設備が必要です。   <著者プロフィール(当時)> 1974年1月30日生まれ。97年ソムリエ資格を取得。宮城蔵王のリゾートホテルを経て、仙台市内のホテルに勤務。日本ソムリエ協会では東北支部総務副部長を担当。 現在は小樽市に在住し、北海道ワイン株式会社総合企画室勤務。 ※記事中の記述は2001年当時のものです。人物の役職、イベント等の実施内容など現在とは異なっている場合がありますのでご承知おきください

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  • 16 Apr
    • グリューヴァイン(2017年1月20日 北海道新聞掲載)

       グリューヴァインをご存じだろうか。ホットワインと言えばピンとくる方も多いかも知れないが、ドイツ語で「かき混ぜたワイン」を意味する、ワインとスパイスなどを混ぜて温めた冬にぴったりの飲み物である。  ワインの選定やスパイスの種類と量をどうするか、かける時間によっても出来上がりには違いがあり、とても奥が深い。    40年以上も前に小樽市に在住し、北海道ワインの基礎を支えたドイツのケラーマイスター(国家資格のワイン醸造技師)であるグスタフ氏と奥様から、私が教わったレシピはレモンとオレンジ、シナモンとクローブ、アニス、それにグラニュー糖を辛口の赤ワインとともに温めるという本場ならではのものだ。    私はこれを2時間も弱火で温めてスパイスの風味を引き出すのが好きだ。アニスとレモンとオレンジを40分で取り出し、そのまま弱火にかけておくとワインの水分が20%ほど蒸発して凝縮感が増す。全体の味わいが濃厚で複雑なものとなるなかグラニュー糖による艶やかさと味のまとまりが出てくる。意外なことにアルコール分がほとんど飛んでいかないことにも驚く。  特にアニスの不思議な香りと甘みが印象的で強烈な個性を感じさせる味わいは異国情緒に溢れており、体を芯から温めるとともにリラックス効果がある。湯気の立つグリューヴァインを手にして外に出て、雪を見ながら味わうのは格別の美味しさだ。    今冬は雪も多く、厳しい寒さが続いているが、ホッとひと息つけるときにグリューヴァインを試してみてはいかがだろうか。 (シニアソムリエ・小樽)

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    • 白貝とコトリアード(2017年3月2日 北海道新聞掲載)

         明日はひな祭り。ちらしずしと蛤(ハマグリ)の吸い物を召し上がる家庭も多いのではないだろうか。    蛤と同じように二枚貝で、今の時期にはあまり見かけないが、私が北海道に住んでから気に入っているものに白貝がある。北寄貝などと混獲され、価格も手ごろながら味や歯応えもよく、熱を通すと真っ白な殻が開いた姿が蝶(チョウ)のようにみえて美しい。  白貝の正式名称はサラガイで3種類があるようだが、後志の海沿いを走ると白貝の看板も寿都や蘭越でみることができ、白貝と呼ぶことが定着しているのではないだろうか。  トマトソースと白貝を合わせてパスタにするもよし、吸い物や酒蒸し、刺し身など料理の和洋を問わない万能選手だ。    私は「しりべしコトリアード」に白貝を入れたらよいと思っている。コトリアードとは、フランスのブルターニュ地方の郷土料理であり、ジャガイモなどの農産物とエビや貝、魚のスープを生クリームと牛乳で仕上げたものだが、それを後志産の食材でアレンジしたのが「しりべしコトリアード」である。  この料理は後志管内の複数のレストランのシェフによって開発され、普及に向けた推進協議会もあり、基本レシピもインターネット上で公開されている。最近は地域の食育活動などでも紹介されることが多い。    白貝を使った「しりべしコトリアード」は後志の魅力に満ちた皿の上で蝶が舞うようなすてきな様相をみせてくれるだろう。地域性を感じさせる一品として、後志産の辛口白ワインとともに楽しんでもらいたい。 (シニアソムリエ・小樽)

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    • 新しい取り組み(2017年4月13日 北海道新聞掲載)

       春が来た。長く雪と白い雲に覆われていた空が青く澄み渡り、石狩湾の向こうに暑寒別の山々がみえる風景に春を実感する。  毎年、春になると新しいことに挑戦する人も多いのではないだろうか。英会話やジョギング、朝型生活への転換など私も過去にチャレンジしたものは多い。私のジョギングは情けないことにひと月ほどで挫折してしまったが、やはり4月は何か新しいことを見つけ、スタートするのにもってこいの時期である。    私は自分自身がどのような仕事をしているのかを表現する言葉として「ワインジェリスト」を名乗ることにした。北海道のワインと食と観光のそれぞれの職域と地域をまたぐ私の仕事は単にソムリエという資格名では言い表すことができない。  そこでワインの伝道師を意味するワイン・エバンジェリストを短縮した造語として考え出した。このように私の仕事の内容そのものは変わらなくても、視点を変えて、自己紹介の仕方を刷新することで新鮮な気持ちや自覚が高まったように感じる。  また、新しい取り組みとして「プライベートワインレッスン」を始める。これは受講希望者のワインへの関心や知識に合わせて内容と教材を用意する予約制のテイスティング講座である。    新しい取り組み、そして新しい趣味や教養を求めることは若々しい気持ちにもつながり、生活に張りが出るのではないだろうか。物事をはじめるのに年齢は関係なく、きっかけが大事だと思う。みなさまも4月をきっかけに何か新しい取り組みを始めてみてはいかがだろうか。阿部真久(シニアソムリエ)

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  • 22 Mar
    • 榴岡天満宮 3月24日~26日「梅桜祭」で会いましょう!

      北海道のワインと食、観光をつなぎ世界に発信する私を表現する言葉として「北海道ワインジェリスト」を使っています。HOKKAIDOをさらに美味しく、楽しく、地域の資源と魅力を活かした世界のブランドにしていきます!   さて、私が生まれ育った仙台の、榴岡天満宮の350周年記念行事「梅桜祭」のゲストとしてお招きをいただき、3月24日(金)の午後から26日(日)の午後まで「北海道・ワインセンター 仙台榴岡店」の模擬店にて北海道のワインのPR、そして26日の13時からは会場ステージにて「ワイン&梅酒のミニセミナー」を行います。 セミナーは予約もいりませんし、北海道のワインのPR用にテント1張りも設けてくださったので、24日の午後から26日の午後までずっと会場内にいることにしました。どうぞいつでもお越しください!(笑)   せっかくなので、このテントは「北海道・ワインセンター」の模擬店として北海道のワインのPR資料や試飲用ワインなどをいろいろと持って行きますね。   26日13時からのセミナーでは、未成年者と車の運転者を除くご来場者に十勝ワインの「梅酒 ブランデー仕込み」をお配りしながら、普段は小樽で行っている人気講座と同じ雰囲気にて私とアシスタントによる40分程度の楽しく役立つセミナーを実施する予定です。 こちらもたくさんの方々にお越しいただけるように「梅酒 ブランデー仕込み」を用意しています!   また、この「梅桜祭(ばいおうさい)」では、なんと全国の100種類の梅酒が飲み比べができます。そして「梅酒の飲み比べ」にご参加の方は会場内の「北海道・ワインセンター 仙台榴岡店(臨時模擬店)」で北海道産ワインの飲み比べも含めて楽しんでいただけます!     ブロマイド販売や著書のサイン会もあります。(笑)   ちなみに、榴岡天満宮の御朱印はデザインが美しいことで有名です! 写真右の350周年記念の御朱印帳は既に売り切れているそうですが、 御朱印は今年一年間はとても貴重な特別デザインとのことでしたので、 見開きいっぱいに和歌と梅の印も描かれた御朱印を書いてもらってはいかがでしょうか?   仙台出身、榴岡で育った私が梅桜祭のゲストを務められることに感謝し、とても楽しみ。 (宮司は3歳のときからの同級生、人生でもっとも長い付き合いの親友です) もちろん梅酒やワイン以外の出店、ステージショーなどもありますので、ご家族で楽しめます。24日から26日まで開催の「梅桜祭」の内容、料金等は榴岡天満宮のホームページからご確認ください。   仙台で、たくさんの方々にお会いできることを楽しみにしております!

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  • 15 Mar
    • 「北海道ワインジェリスト」という自己紹介

      こんにちは。ワインクラスター北海道 代表の阿部です。 世界でも前例のない私自身の仕事や立場、活動内容をどう説明しましょう?   ワインクラスター北海道の代表で道産ワイン業界出身のシニアソムリエで起業家であり、旅行業務取扱管理者でMBAホルダー。事業内容は北海道のワイン全体に特化してワインセンターの運営は旅行業者代理業でもあり、ワインと食と観光をつなぐけれどモノを作っているわけではないし、レストランで働いてわけでもない。どちらかといえば講演やプレゼンテーションが多く、行政機関や大企業との仕事も多い。   うーむ。長いし、つかみにくいですね。(笑) シニアソムリエという資格も、ワイン業界に関心のある人であればソムリエの上級資格で10人に1人くらいしかいないことがわかるのですが、一般の人のなかには介護関係のソムリエと思う人もいるようで、なにか自分の仕事を表現する言葉がほしいなと思っていました。   その議論のなかで「北海道のワイン・エバンジェリスト」という言葉がストンときて、それを短縮した造語の「ワインジェリスト」はどうだろうと。 一発で気に入った。説明もそれほど必要とせず、IT業界での使われ方を参考としても私の実態や立場と合っているように思います。   ということで、「北海道ワインジェリスト」。英文にしてもわかりやすいと思うし、語感もきれいなので使っていこうと思います。尚、エバンジェリストについてはリンクの記事がわかりやすいのでご覧ください!https://jinjibu.jp/keyword/detl/706/

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  • 28 Jan
    • マンジャーレTAKINAMI

      「北海道・ワインセンター」の徒歩圏内には、地域の旬の食材をいかしたレストランや素敵な歴史的建造物がたくさん、そして市立文学館やステンドグラス美術館などの文化施設、ワイナリーもあります。 今日は「マンジャーレTAKINAMI」(小樽市色内2丁目1−16)で魚料理のランチ(980円)をいただいてきました。ソイとカレイのポワレは塩加減やバターの風味、ソイの皮目の香ばしさとカレイの身の柔らかな感じが素晴らしかったです! オレンジジュースやウーロン茶、コーヒーなどのドリンクとサラダも付いていて大満足。ごちそうさまでした!

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  • 27 Oct
    • <1999貴腐葡萄36ケルナーと「北海道・ワインセンター」の新たな展開>

      2015年2月20日、小樽運河ターミナルに「北海道・ワインセンター」を開設することの契約等をすべて済ませた記念に、小樽バインが地下セラーに寝かせてあった特別なワインを開けてくださいました! 1999年。仙台で阿部代表が北海道のワインに出会い、生涯をかけて北海道を世界有数のワイン産地として世に知らしめたいと決意した年のワインです。 --- (阿部代表の生まれ年でもあり、北海道ワインと余市ワインの設立された)1974年から2016年までの北海道の気象データをグラフにしても突出したヴィンテージの1999年。 収穫から16年が経過してグラスに注がれたワインは、その色調からもわかるように、なめらかにして落ち着いており、当初はハーブや柑橘、若いパイナップルと蜂蜜っぽさが印象的だった香りには干した要素も加わり芳醇で馥郁、シャープで単調だった甘さや酸のそれぞれはこなれてしなやかで調和のとれた味わいになっていました。 まだまだ、この倍の年数の熟成にも耐えられるのが北海道の白ワインの可能性だと思います。 --- このような北海道産のワインのテイスティングや味わいの表現、熟成による変化、 そして北海道各地でのブドウ栽培やワインの醸造、気候やワインをめぐる環境の変化を見て来た経験を可視化するため、「北海道・ワインセンター」の展示や提供プログラム等を大幅に強化していきます。 お楽しみに!

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プロフィール

阿部眞久(あべまさひさ)

性別:
男性
血液型:
B型
お住まいの地域:
北海道
自己紹介:
NPO法人ワインクラスター北海道 代表理事。 北海道のワインをさまざまな資格と手法で世界に広める「...

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