lf 突然機首が北西に向いた。再び機長らしきアナウンス。どうやら燃料が少なくなったので、別の空港に向かうらしい。時計の針は6時半を指していた。
私「あーあ、時間過ぎちゃったね」
S「どうしましょう」
私「どうしようもないじゃない」
後にS君はその時の私を(動じない人だなあ)と思ったらしいが、なんのことはない、諦めが早かっただけのことだったのだ。

1時間も飛んだだろうか。ローカル空港と思われる所に着陸、給油が開始された。乗り換えではないので空港ターミナルに行くわけでもなく、各自の席で給油が終わるのを待つばかり。2時間近くかかって、再び離陸した時には時刻は11時を回っていた。

wd それから約2時間、ようやくダラス国際空港に到着。午前1時。最後の到着便だったらしく、到着スポット以外はほとんどが照明を落とし、売店ももちろん全て閉まっている。テロ対策のため、機内持ち込みができなかった手荷物を取りに2人で手荷物コンベアで待っていた。30分待っても私達の荷物が出てこない。コンベアが止まり、そこの照明も落ちた頃、空港の制服を着たおじさんが私達に近づいてきた。
おじさん「日本から来た人かね?(もちろん英語)」
S「はい、そうです」
おじさん「あんた達の荷物はこっちで保管してるよ(むろん英語)」
3回目の不幸になるところだった。荷物はおじさんの詰め所のような所にあった。
空港内で夜を明かす人の為に職員が毛布を配っていた。私達もそれを受け取り、タバコが吸える建物の外へと向かう。
私「腹減ったね」
S「売店も開いてませんからね。自販機でなんか買いましょう」
日本の空港ならホットドックかなんかの自販機があるんだろうが、ここはアメリカ、スナック菓子の自販機があるだけだった。
それでもビスケットやらプリッツェルを買い込み、アメリカっぽい缶ジュースで上陸後最初の食事となった。まさか真夜中のダラス空港で大の男が二人、空港のベンチに腰掛けて晩飯食うなんて想像もしてなかった、しかもスナック菓子で。

sd それから夜明けまでの時間の長いこと。明け方5時過ぎには、清掃の人達がR&Bのリズムに合わせてクリーナーを動かす姿を観察し、7時過ぎに開いたチェックインカウンターでは、「ゆっくりもう一度繰り返してください」とお願いした相手に、スロービデオの再生のような繰り返しをされて、顔ではニコニコしながら日本語で「なめんなよ、にーちゃん」と毒づいたりして、ようやくローカル線の構内に入った。その頃には売店もチラホラ開き始めており、夜中に到着した時に確認していたマクドナルドでやっとまともな食事にありついた。


8時半のローカル便に乗り込み、約1時間、ようやく目的地に到着した。そこは一つの大学が中心となって町を形成しているところ。町の名前も「カレッジステーション」ときたもんだ。さすが、アメリカ。空港からは日本で言う「白タク」しか交通手段がない。町で唯一のホテルに向かって、やっと一息ついた。

と思ったのが大間違い。最大の悲劇はこの後私を襲うことになるのだった。

                                       (続く)



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