【ゆのみん企画・ ,(コンマ)】


『祈り』1

ガチャと勢いよく扉が開く。

「ユノ。気をつけてな。」

「ありがとうございます。行ってきます。」

開いた扉の隙間から、そんな会話が聞こえた。

僕は、窓の外を見ていた。青い空、きつい日差し。夏の景色。暑い。

「ごめん、チャンミン。待たせたか?」

「いえ、僕も今来たところです。」

ここは、SMのトレーニングセンター。

今日は、ヒョンが入隊前の挨拶をするためこちらに来ていた。

ダンスの講師陣や振り付けのスタッフ、ヴォイストレーナー、そして様々なスタッフに挨拶してきたのだろう。ヒョンの顏が少し高揚していた。

「みんなに会えたんですか?」

「ああ、ちゃんと挨拶もできたよ。」

「良かったですね。」

「ああ、みんなに会えて、嬉しかったよ。」

シアワセそうな笑顔で答える。

ヒョンは、大人だな・・・そう思った。

まあ、もう30歳なんだから、当たり前か・・・。

僕は・・・どうなんだろうか?28歳は・・・大人か?

ヒョンが28歳の時は・・・そこまで考えて、ふっとため息が出た。

間違いなく、僕より大人だったな・・・そう思ったからだ。

「忙しいのに悪かったな。」

僕の横の椅子に座りながら、そうヒョンが僕に言った。

「え?そんなことないよ、ヒョン。」

心配そうに僕を見るヒョン。

「疲れているのか?ドラマ大変か?」

「ヒョン、大丈夫ですよ。」

僕がぼうとしていたから、心配してくれているのかな、ヒョン。

「やめておくか?飯食いに行くの?」

「なんともないです。ヒョン、心配しすぎ。夏だなーっと思って、外見てただけですから。」

「ホントか?」

「ホントですよ。それより何食べますか?ヒョンのおごりなんですよね。」

「おお!任せておけ!!チャンミナの好きなもの食べていいぞ!!」

「やったー!!」

「じゃあ、いくぞ!」ヒョンが椅子から立ち上がった。

「了解!」僕がヒョンを見上げて言う。

「ほれ!!」

そういってヒョンが掌を差し出した。

「はい!」僕も手を差し出す。

パチン!掌同士が音を立ててぶつかった。その瞬間、ヒョンの掌が僕の掌をしっかりと握りしめた。そのまま勢いよくひっぱられて、僕は立ちあがった。

ああ・・・この感じ・・・。

あの時もそうだった。僕は、ヒョンに・・・。

そう思うと、胸の奥から何かが込み上げてきた。何なんだろこの感じ。込み上げてきたものを必死で押さえこむ。

「どした?チャンミナ?」ヒョンの心配そうな顔。

「何でもないっすよ。外、暑いでしょうね。ビールかな?やっぱり!」

おどけて言いながら、ヒョンより先に歩く。こんな顔見せられない。

「おう、なんでも飲みやがれ!!」後ろからヒョンの声。

「支払いで泣かないでくださいよ!!」とガッツポーズで返す。

いつもと変わらない僕達・・・だけど、こうやって二人で食事に出かけるのは、今度は、二年後なんだね・・・ヒョン。



 散々、二人で飲んで食べて・・・まあ、ヒョンはあんまり飲まないんだけど、でもお酒を飲んでるのかなって思うほど、よく喋るし、よく笑うんだ。

あの独特の高い声で大笑いする。ヒョンの笑い顔が、僕は好きだ。なんだか、こちらも嬉しくなって笑ってしまうから。

ライブのツアー中は、お互いツアーの成功に集中しているから、羽目を外すってわけにはいかない。けれど、ソウルでのアンコンを最後に、二人でのステージは、ない。

ヒョンは、ユニバでのステージが最後で、そのあとはドラマの撮影とアルバムのプロモーションの取材などがあったが、それも昨日すべて終了していた。

僕は、ドラマの撮影に追われていた。そう言えばヒョンも去年はこの時期に、ドラマの撮影に追われていた。今年は二人して、ドラマに追われていたわけだ。

「チャンミン、明日、飯行かないか?」そうヒョンから昨日SNSがきた。

ヒョン、僕のスケジュールをマネージャに聞いたんだな・・・そう思った。

なぜなら、この日しか、ヒョンの入隊の日までで、僕の空いている日がなかったからだ。

そして、僕もこの日、ヒョンをご飯に誘おうと思っていた。

僕達は、近くて遠い。ステージの上では、あんなに近くにいるし、お互いになんとなく目を見れば、その日の体調も考えている事もわかる。けれど、いったんステージを降りて個々の仕事が始まると、そのスケジュールのタイトさに、会うこともままならなくなるからだ。特にヒョンは、交友関係も広いから・・・誰と遊んでいるのかも全く僕にはわからなくなる。僕は、だいたいキュヒョン達とつるんでることが多いから、いろんなとことで情報が漏れてくるけど、ヒョンの交友関係はあまり漏れてこない。

それは、ヒョンが一般人である友人たちを守っているからに他ならない。ヒョンの優しさだ。

「いろんな人と接したほうがいい。チャンミンのためにも。」そうヒョンに言われたことがある。その当時は、ヒョンに突き放されたような気がしたけど、今は、その意味がよくわかるようになった。

 ご飯の後、ヒョンのマンションで飲みなおすことになって、タクシーでヒョンのマンションへ移動した。

 

TO BE CONTINUED・・・・


10分後に続きが上がります


【ゆのみん企画第78回お題:,(コンマ)】
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