25日で発生から5年となった、兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故。命を救われた青年は前へと歩む決意をした。惨事の現場に設けられた献花台では、献花や記帳の列が終日、続いた。そこには共通した願いがあった。悲劇を二度と繰り返さないで--。

 足の大けがで後遺症が残る、大阪府豊能町の中野皓介(こうすけ)さん(23)は今春、作業療法士の国家試験に合格。高齢者らのリハビリを補助する仕事を始めた。事故で心身に深い傷を負ったが、約40日の入院中、自分を救ってくれた医師や看護師が夢を後押ししてくれた。この日、現場で手を合わせた中野さんは「事故の経験を強みに変え、早く人の役に立てるように頑張りたい」と誓った。

 事故当時、中野さんは作業療法士を目指して大学に進学したばかり。大阪府大東市の大学に向かう途中、2両目で事故に遭った。つぶれた車体のわずかなすき間から出した手を、レスキュー隊員は見逃さなかった。「すぐ助けるから」と強く握ってくれた。中野さんは「ここで僕の人生を終わらせられないんです」と、強く握り返したという。

 車体には約4時間半、閉じ込められた。挟まれた足は、長時間の圧迫で筋肉が壊死(えし)するクラッシュ症候群と診断され、神戸市の病院に入院。全身に腫れが出て、トイレに行くだけで体力を消耗した。自分の皮膚を足に移植する手術を繰り返し、今も左ももの一部に感覚がない。

 107人が亡くなった現実に「僕が代わりに死ねばよかった」と苦しんだこともある。救ってくれたのが担当の男性医師だった。

 昼夜問わず病室を訪れ、足をくすぐっては「ちゃんと神経が通ってる」と声をかけてくれた。救いを求める人を明るく励ます医師を見て、自分も事故以前の希望通り、作業療法士になりたいとの思いを強くした。「患者にとって、コミュニケーションが一番の薬」と学んだのも、この病室でだった。

 中野さんは今月から、大阪府内の保健センターで働いている。高齢者や、病気の後遺症で障害が残った人らのリハビリを助けるため、食事や手などを使った遊びで機能の回復を助けるのが仕事だ。

 この日、現場に立った中野さんは思ったという。「自分が生き残って、ごめんなさい。だけど、生かしてくれて、ありがとう」。せっかく助かった命だからこそ、「あなただから、何でも相談したい」。そう言ってもらえる作業療法士になりたいと願っている。【大沢瑞季】

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