旅行2日目の縄文杉ツアーの帰りのバス(バスと行っても同じツアーで同方向の何組かを同じワゴンで送り迎えするというもの)の中で、同乗したガイドさんの一言「明日はどこへ行くの?」から、3日目の予定が決まりました。「白谷雲水峡へ行ってみたいんですけど、足の調子と相談して…」と口にしたら、「丁度明日女性二人組を案内する予定なので、行けそうだったら一緒に連れて行ってあげるから電話して」と名刺を手渡されて。その名刺の肩書きがまた凄いんです!『太古 屋久の島 夢前案内人』。こんな名刺を貰ったら、行くしか無いでしょう!名刺に書かれた携帯に連絡し、夢前案内されることとなりました。

縄文杉登山がトレッキングなら、白谷雲水峡はハイキングという事になります。あの宮崎アニメ『もののけ姫』の舞台になった事で有名な山林は「雨の直後が最も美しい」と言われており、苔むす森が神秘的な光景を織りなしています。

運動不足の私は勿論この日は極度な筋肉痛になっていて、しかもレンタルしたトレッキング・シューズも踵が当たるので痛い・痛い!踵と爪が食い込んだせいで傷付けてしまった指にバンドエイドを2重に張り付けて、出発進行!この日は朝9時発で、もののけの世界(?)を目指しました。

今回の旅行で運が良かったのは、縄文杉登山の日は“雨が多い”と言われる屋久島では珍しく、ほとんど雨に降られずお天気に恵まれた登山をし、しかも“雨の直後が美しい”と言われる白谷雲水峡へ行く日は、朝方まで大雨だったんです!午前中も小雨が降りしきり、遠方から雷の音が聞こえていたせいか、お盆の時期にも関わらず白谷雲水峡は人影が少なくて。前日の縄文杉ツアーがすごいラッシュだった事を考えると、ものすごく静かな時を過ごせたと思います。

ここではいきなり沢を渡るのですが、巨石の上を這うように登り(花崗岩は滑りにくいらしいのですが、雨の直後だったのでかなり怖かった覚えが)、吊り橋を渡るとそこからはなんと、江戸時代に木の搬出に使っていたという石段。石段をクリアするとなだらかな山道を歩いて、目指すは“もののけの森”。白谷雲水峡は広大な休養林で、どこを見ても苔むす石と古い木々に囲まれていて、まさに『もののけ姫』の舞台そのものなのですが、一般的に“もののけの森”と呼ばれている所は、入り口から1時間半ほど歩いた場所にあります。ガイドさんが「来る人は皆。口を揃えて『“もののけの森”だけは絶対に見る』と言って聞かない。もっと入り口から近い場所を“もののけの森”と命名してくれたら助かったのに」と冗談交じりで仰っていたのが笑えました。雷が鳴っているので“太鼓岩”には行くのを止めようと話しつつ、森の奥地へ。

飛流おとし


途中“くぐり杉”や“二代大杉”など、縄文杉登山の途中に見掛けた屋久杉と負けず劣らず大きな杉と沢山出会いました。屋久島は1年に数ミリずつ隆起しているそうで、数千年の時をかけて成長している杉は、地形の変化に伴って根を地上にさらし、根と地上との距離が大人が十分通り抜けられる高さなので“くぐり杉”と呼ばれたり、江戸時代に伐採された木の上に根を出し、数百年かけて育った杉を伐採された初代、上から芽吹いた2代目とが合体したように見える木々が“二代杉”“三大杉”などと命名されています。元々痩せた土壌の屋久島、切り株も養分として新たな命を支え、根を幾重にも張り巡らして地形の変化にも負けず、堂々とした体躯を空に向かって伸ばす木々の姿に、植物の生命力って計り知れない力があるな、とつくづく実感しました。

お昼前に目的地“もののけの森”の到着。本当にそこここに“こだま”達が潜んでいそうな、そんな雰囲気を醸し出す深い森でした。苔の種類も豊富で緑の濃い『スギゴケ』と黄緑色の『ヒノキゴケ(別名いたちの尻尾)』の先端には、直前まで降っていた雨が滴となってぶら下がり、何とも言えない風情が。この苔についている雨水、とても甘くて美味しいそうなのですが、ガイドさんに勧められてもちょっと物怖じしてしまい、試さず終い。今となって思うと、挑戦しておけば良かった、と感じるのですが。

もののけの森


もののけの森から辻峠まで出て、ここでお弁当を広げました。お昼頃には雨もほぼ上がり、雷の音も聞こえなくなったので、当初中止する予定だった太鼓岩まで行ってみる事に。この辻峠から太鼓岩まで、正規のルートでは無く時間短縮の為の“ショートカット”なる道を通ったのですが、ここが前日の縄文杉登山でも通らなかったようなもの凄い獣道で。筋肉痛で痛む足腰に鞭打って、という言葉のままに登った先で迎えてくれたのは、信じられないようなパノラマでした。

太鼓岩は、『もののけ姫』に登場する白い狼(と言うか神様)・モロのねぐらの前に張り出していた岩そのものです。“もののけの森”は映画に登場する森と雰囲気がそっくり、という感じで、一方の太鼓岩は本当に“モロの巣”そのもの。傷付いたアシタカが、巣から起き出してモロと会話するシーンが本当に目の前で実演されている錯覚さえ抱きました。私は特に高所恐怖症という訳では無いのですが、深い谷と屋久島の山々が展望できるここでは、足がすくみました!本当にこれは実際に目で見た人にしか味わえない感動で、私の稚拙な文章ではとても表すことは出来ない!

太鼓岩


でも、ガイドさんが「ここへ来ると本当に景色にだけ浸れる。初めて訪れた時の感動を忘れられない」と言った時、私、実は「あぁ、明日には屋久島から東京に帰って、明後日からは仕事の日々が待っている…」とか考えていたんですよね~。仕事とか日常の雑務に追われて心が渇く、どころか干からびている状態なのか、縄文杉を見ても太鼓岩からの壮大な景観を臨んでも、多分中高生の頃に訪れるような純粋な感動を味わえていないように思いました。確かに、数千年の時に渡って根を張ってきた古い樹や信じがたい眺望を見ると、自分が本当に小さな存在に思える。悩んだり迷ったりしている卑小さに嫌になる。けれど、目の前に繰り広げられる壮大な自然と対峙しても、自分が所詮小さな世界から出らる訳が無い、この感動も一瞬で走り去ってしまうものなんだ、と何処か醒めた気持ちがある事を否定出来ない。世界遺産に登録されている自然を目にしても、言葉に言い表せない程感動している訳では無い自分に、ある意味ちょっとガッカリしました。決して縄文杉や白谷雲水峡が期待外れの産物だった訳では無いのですが。

縄文杉ツアーから2日に渡ってお世話になったガイドさんとは仲良くなれて、縄文杉ツアーの帰りのバスで話している時に耳にした「ガイドさんが最近建てた、屋久杉で出来た新築のお家」をご厚意で見せて貰う事にしました。仕事柄、どうしても家に屋久杉を使いたい!と思っていたそうで、なんと家の中心に屋久杉の柱が!「大工さんにやってもらうと高くつくから」と自ら磨いたという柱の立つ家は、家中が杉の香りに包まれていて「住んでいるだけでアロマ効果の恩恵を受けられそう」と思えるような素敵なお家でした。庭にマンゴーやアセロラなど、南国の果樹が植えられていて本当に羨ましい生活…。「東京で大地震が起きて家が潰れたら屋久島に移住する」と言ったら「地震になる前においで。でも地震が起きた後は来るな。地震まで連れて来られそうだ」と言われてしまいました。

屋久杉御殿


後から来る人の為に大急ぎで記念撮影し、焦って登って降りて、とした縄文杉登山に比べると、ゆっくりしたペースで森の雰囲気を楽しみながら歩いた白谷雲水峡散策の3日目はとても気持ちの良いものでした。次に屋久島に行く時はしゃくなげの季節が良いな~と思っているのですが、その時もこの白谷雲水峡には足を運びたいな、と思います。

蛇足ですが、屋久島はこれだけ杉が多いのに花粉症が東京程騒がれていないそうです。その理由は、雨が多いので(月に35日)花粉が舞う前に土に返ってしまうそう。あんなに美しい自然に囲まれていて、しかも花粉症が無いなんて、なんて羨ましい!
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学生の頃は「ゴールデンウィークやお盆みたいに、旅行代が普段の倍額になっている時に旅に出るなんて愚の骨頂!」などとほざいていましたが、社会人になってしまった現在、長期休暇を取れるのはゴールデンウィーク・お盆・年末年始ぐらいしか無い!

と言う訳で、学生時代はバカにしていた大人の代表・お盆真っ盛りの8月中旬に行ってきました。世界遺産の島・屋久島への旅。

何故屋久島へ行く事になったかと言うと、数年前縄文杉を観に行ったという友人の話を聞いてから、行きたくてたまらなかったからです。今年に入ってからは、どこぞの不届き者が縄文杉を傷つけるという、とんでもない事件も発生し「よっしゃ、立ち入り禁止になる前に行って縄文杉を見て来るぞ!」となったのです。

東京から屋久島へ直行する飛行機はありません。羽田→鹿児島へ飛行機で、そこで飛行機を乗り継いで屋久島へ向かうのですが、この鹿児島→屋久島間の飛行機の小さいこと!
ジャンボ機だと空港の搭乗口から直接飛行機に乗れますが、この小型プロペラ機だと搭乗ゲートからバスに乗って飛行機の前に移動して乗り込むという、何とも旧式の小型飛行機で屋久島へと向かいました。

今では飛行機に載った際の、シートベルト着用・救命胴衣の収納場所の説明なども、全て映像で流しますが、この屋久島直行プロペラ機は旧式でそんな映像を流すテレビなど付いているはずも無く。一番前列にスチュワーデスさんが立って、シートベルトの締め方や救命胴衣の着用方法を実演して見せてくれました。乗ってるだけの客は楽ですが、客室乗務員って本当に大変そう…。密かに「マイナー路線のスッチーに異動になるのは、どんな場合なのだろう」などと考えてしまった私って、変?

屋久島は鹿児島から飛行機で約40分の、亜熱帯の島です。なんと月に35日(!)雨という、雨量の多い事でも知られる島。ちなみに日本で5番目に大きな島なのだそう。

大半が花崗岩で構成されている島の土壌は痩せており、それが原因で樹木の生長が遅く、その為秋田など他の地方で育つ杉に比べてかなり年輪の細かい、樹齢が1000年を越す木々の生い茂る島となったそうです。

メインの縄文杉エコツアーは2日目でした。当日は朝4時半起床、5時に宿泊先の民宿までエコツアーの担当者が迎えに来てくれて、民宿近くのお弁当屋さんで朝食・昼食2食分のお弁当をピックアップすると、いざ出発!縄文杉登山をする人が多いので、屋久島のお弁当屋さんは朝4時過ぎから9時までの営業、というお店がとても多いとか。

まるで日光のいろは坂のような、くねくねした山道を車で揺られて小1時間、縄文杉へと続く登山口へと到着。乗り物酔いに弱い人にはかなりキツイと思われる山道でしたが、この途中で丁度屋久島のお隣・種子島から昇る朝陽が見えて、これが本当に幻想的な光景でした。種子島はとても横に長細い島なのですが、その島が全体的にオレンジ色に染まり、島を覆う雲の隙間から太陽がゆっくりと昇る光景は、初日の出を拝むよりも余程ご利益がありそうで。一緒に行った友人が「これで絶対に途中でリタイアせず縄文杉まで行き着けるよ!」と言っていた程、この日の出は雄大な眺めでした。

登山口で朝食用お弁当を食べ、軽く準備運動をしてから縄文杉を目指し山を登り始めます。屋久島は、豊臣秀吉など戦国武将も自ら建立した城や社寺仏閣にこの屋久島の杉を使いたがったという、木の産地。今でも林業用のトロッコが走っています。幸い私が縄文杉登山をしたのがお盆時期で林業もお休みだった為、特にトロッコとすれ違う事も無く線路の上を延々と歩けたのですが、線路の脇に定期的に“避難所”なる空き地がある事に笑えました。普段、樹木の搬送が行われている時はトロッコが通るのをこの避難所で待つとの事。ちなみに屋久島は大半が国有林で伐採は基本的に禁止されている為、お土産屋さんなどで売られている杉の大半は倒木などで、このトロッコで運ばれるのも主にそういった台
風や雷で倒れてしまった木なのだそうです。

トロッコ道


歩き始めて1時間も経たない内に、右方向の梢で何やら動く物の気配が。と思ったら猿でした!屋久島には“屋久猿(ヤクザル)”という品種の猿が居て、この縄文杉へ向かう山道も彼らの生息地なのだそう。ガイドブックには必ず「噛み付かれる恐れがありますので絶対に餌をやらないで下さい」と書かれており、屋久島のお土産には「エサをやらないで下さい」という交通標識風のサルのイラスト入りTシャツも売っていました。でも登山客が「サルだ!」と騒ぐのも、どこ吹く風、と言わんばかりの飄々とした態度は、まさに山の王者?トロッコ道は多少歩き難い場所はあっても、まだ周りを見ながら歩く余裕があり、ガイドさんの植物の説明等、色々な話を聞きながらの散策は楽しかったです。

屋久猿!


かつて林業が盛んだった頃の集落跡地で休憩し、山の中最後のトイレ(トイレは登山口と途中の2箇所しか無い)を過ぎると、そこからは本格的な山登り。急勾配の山道は、ある所は木の板が敷かれていたり、石が並べてあったりしますが、休む場所も無い狭い階段を延々昇り続ける事になります。「縄文杉を見に行く山道は、相当キツイ」と聞いていたので、覚悟していた割に歩きやすいという印象を受けたのは、多分観光地化されていてある程度上りやすい道筋が出来ていたからなのでしょうが、普段デスクワークで座りっ放しの私には、やっぱり4時間半歩きっぱなし、昇りっぱなしの山は、か~な~り~大変でした。

急勾配の山を登ると、まず最初の名所・ウィルソン株に到着。ここで記念撮影すると、息吐く間も無く縄文杉へ。途中、夫婦杉やら色々名所はありましたが、日が暮れるまでに下山するには「最低12時半には縄文杉に辿り着く」のが鉄則らしく、ひたすら足元に注意しながらの山登りでした。大抵縄文杉へ向かうコースはガイドさん付の場合であれ、そうで無い場合であれ、3~6人ぐらいのグループなのですが、登山慣れしている人はどんどんスピードを上げて歩き、定年過ぎのご夫婦連れなどは、ちょっとしたスペースを見つける度に休憩を取る、というゆっくりしたペース。早く歩く人が後ろから追いつくと道を譲り、下りてくる人は登ってくる人を優先するなど、本当に人通りが多くて、通勤ラッシュとまで行かなくても観光地化されているのも何だか趣が無くなるものだなと、ちょっとがっかりした面もありました。かく言う私も世界遺産を一目拝もうと、登山が趣味でも無いのに屋久島に繰り出したミーハーな輩の一人なのですが。

ウィルソン株


縄文杉直前で、11時頃にお昼を食べて、そこからはお弁当など入れていたザックも全て道端に置き去りにしてカメラ一つ手に持ち再度山登り。ガイドさん曰く「山で物を盗む人なぞ居ない」との事だったのですが、確かに貴重品なんかは持ち歩かないし、カメラさえ手にしていれば、荷物は邪魔になるだけ!山歩きに慣れていない観光客対策で、こうして途中で荷物を置いていくのは既に常識らしく、お昼を食べた界隈には、同じように置き去りにされたザックが大量に散乱していました。

そこから小1時間。縄文杉到着は12時直前。10年程前までは、縄文杉のすぐ側に行って樹に触る事も可能だったそうですが、今では樹の周辺に展望台が設置され、実際に樹に触れたりする事は出来ません。巨木なだけあって、周辺はかなり太い根が地を這うように隆起しているのですが、こういった根を踏むだけでも樹にとってはかなりのダメージになるそうで、展望台を作って樹に近づけないのも縄文杉を守る為なのでしょう。5時間半かけて昇ったので、少しばかり時間を掛けて観察していましたが、ここも次から次へと観光客が到着。長居しても邪魔になるだけな上に、日没までには登山口に降りなければいけないので、感慨に浸る暇も無く「はい、降りましょう!」と下山することに。

縄文杉


帰りは何だかんだ言って楽でした。私はこう見えても小心者で怖がりなので、石段一つ降りるのもおっかなびっくりだったのですが(ただ単に運動神経が鈍いという節も)、一行を先導した私の友人はどんどん歩いて行って、休憩を取った回数も行きの1/3、時間も3時間に短縮され、どんどんと下りました。屋久島も一番人気なのはゴールデンウィークで、この頃が登山客は一番多いのだそうですが、多分お盆も2番めに多いシーズンなのでしょう。私と友人が付いて貰ったガイドさんは、なんと7日連続で縄文杉のガイドを敢行(!)というハードスケジュールで、ひたすら降りるのを急かしたもガイドさん本人が早く帰りたかったのでは無いかという節も…。他の登山グループで比較的早く下山した人たちは、登山道の途中で沢に降りて川遊びしたりしていたのですが、そんな楽しい寄り道もせずに直行・直帰の縄文杉登山でした。私も川で遊びたかった~!

恐れていた程の筋肉痛にもならず(2日後ぐらいに猛烈な痛みが来るかと思いきや、そんな事もありませんでした)、世界遺産を拝むツアーは無事終了。翌日行った白谷雲水峡ツアーに付き添ってくれたガイドさんには「昨日トロッコ道を歩く夢を見なかった?」とも聞かれましたが、夢も見ずにぐっすり眠れました。観光ルートとして整い過ぎているきらいもありましたが、それでも一見の価値のある、雄大な自然の作り上げる景観だと思います。

最後に一つ、縄文杉ツアーのガイドさん達は、恐らく全員体脂肪率1桁に違いない!あんな山登りを毎日していたら、嫌でも痩せる!健康的なダイエットをしたい人は、縄文杉ツアーガイドに転職する事をお勧めします。

次回は「もののけ姫」の舞台、白谷雲水峡散策の話を…。
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