イミテーション・ゲーム

テーマ:
生前に評価されず死後、その功績が見直される例は少なくない。ガリレオしかり、ゴッホしかり。

この映画も世界的な数学者であり、第二次世界大戦終結の功労者の一人でありながらも、近年になるまでその功績が秘匿されていた人物を描いた物語である。

ストーリーは主人公の学生時代、第二次大戦下、戦後の様子が入り混じり進んでいく。ドイツとの戦争に打ち勝つには暗号解読が必須であると考えた軍部に招かれたチューリングは、彼等の期待する暗号解読そのものではなく“暗号解読のキーを見つける”機械の開発に没頭する。即結果に結びつかない研究に専念するチューリングに同僚は反発、軍上層部も良い顔をしない。しかし、暗号解読チームの増員メンバーに新たに選ばれた女性数学者が加わった事で、チームは少しずつチューリングの目指す方向に動くようになり…。

映画はチューリング一人の人生に焦点を当てているだけでは無い。ナチスが使っていた暗号エニグマ解読までの道のりだけを描いた物語でも無い。物語はあくまでもエニグマ解読の立役者であるチューリングが中心の構成ではあるけれど、様々な立場の登場人物の思惑や背景が丁寧に描かれている。暗号解読に成功したのに関わらず、実の兄弟の危機を救えない事に絶望するメンバーの表情は涙無しに見られない。

また、人と容易に馴染めない性格のチューリングを認めてくれた学生時代のストーリーもこの上なく良い趣を添えている。チューリングに友人がくれた言葉は、その後チューリングから暗号解読の仕事に就く事に迷う女性数学者に渡り、巡りめぐってまたチューリングに戻ってくる。

性的嗜好が原因で戦後、有罪判決を受けたチューリングは21世紀に入り功績を再評価されることになる。戦時下、冷戦時代には公に出来ない事情が多々あったことも推測できるけれど、彼にとって生きにくい世の中で生涯を終える事になってしまった事実はあまりに切ない。

いかにエニグマ解読を成功させたか、イギリスがナチスとの情報戦に打ち勝ったかを楽しんでも良し、チューリングの生き様を観る事を楽しんでも良し、1本で様々な楽しみ方ができる傑作だと個人的には思える。

チューリングだけでなく、未だにその功績が秘匿されている大戦下の功労者は多々存在するのだろう。現在の生活は彼等の血のにじむような尽力の上に成り立っている事を忘れたくないと思う。

AD