個人的に「この人なら間違いない」という本や映画がある。


小説だと、作者で選んでしまうのは梨木香歩、ダイアナ・ウィン・ジョーンズ、北村薫など。
映画では、クリント・イーストウッド、スティーブン・ソダーバーグ。


そんな「この監督ならハズレは無い」という根拠の元、観に行って来たのが「インビクタス 負けざる者たち」。モーガン・フリーマン、マット・デイモンと演技派俳優陣を揃えているので、まぁ映画の内容が期待外れだったとしても役者を観に行くだけでも良いかなと上映第1週で映画館に足を運びました。


物語は南アフリカ大統領・マンデラが刑務所から釈放されるシーンから展開。アパルトヘイトの影響が色濃く残る南アフリカでは、ラグビーの試合でも自国を応援するのは白人、黒人は自国と敵対する国を応援するという、人種の対立が国が一丸となるのを阻む状況を招いており。そんな中、ラグビーワールドカップで自国を国民が一つになって応援する事により、人種の壁を乗り越えようと大統領は画策します。


スポーツを通じて国民の愛国心を高めるという手法は安易だな、と思えなくも無いけれど、作品を重厚な物にしているのは、何と言っても「自分達が受けた仕打ちに対し報復するのでは無く、相手を許す器量を見せろ」というマンデラの信条であり。彼が30年に及ぶ服役という過去を水に流そうと自ら寛容の精神を見せる事が、人種対立の溝を埋める橋渡しになって。


印象的なのは物語が進むに連れてマンデラのボディガード達が打ち解けて行く様子。当初は白人のボディガードを黒人の警備担当者達は「信用ならない」と言ってあからさまに警戒していたのに関わらず、白人ボディガード達は徐々にマンデラの人柄に魅了され、肌の色に関わらず一丸となって大統領を守る内に、互いに肩を組み、ラグビーボールを投げ合って親交を深める様は本当に「自ら手本を示す」マンデラの言葉そのもので。


マンデラ自身は、相手に「何をすべきか」気付かせる指導者で、一から十まで言葉で指示するタイプでは無い。マンデラに与えられたヒントをもとに、自ら答えを見つけるからこそ、マンデラの周囲の人々の決断はとても重い物になる。


国を変えるには、まず自らが変わらなければならない。どんなに困難な状況でも自らが諦めなければ道は開ける。人は誰もが「我が人生の指導者」であり、各自の生き方は己の責任であると認識する事がもっとも大切だと静かに語りかけてくるモーガン・フリーマンの姿に静かな感動を覚えます。


ちなみに一番大笑いだったシーンは、ラグビーワールドカップで強豪と言われるニュージーランドの情報収集時に出てきた、ニュージーランド対日本の試合成績。コケにされていると言っても過言では無い会話のやり取りをお楽しみ下さい。


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Dr.パルナサスの鏡

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物語の登場人物が自ら思い描いた空想の世界を旅するという小説や映画は多い。


今思いつく物では、外国の小説なら『ネバー・エンディング・ストーリー(はてしない物語/ミヒャエル・エンデ著)』、日本の小説では『裏庭(梨木香歩著)』。


この『Dr.パルナサスの鏡』の中でも、登場人物は自分が思い描く空想の世界に“パルナサス博士の鏡”を通じて入り込み、冒険する(試練に向き合う?)というストーリーが展開する。


映画を観た感想は一言で言うと「難しい」。


パルナサス博士の鏡の国は、鏡の中に入り込んだ人々の想像で創り上げられる世界なので、入る人によって全く違う世界が展開する。この“鏡の国”の情景は色鮮やかなおとぎの国であっても、ほとんどモノクロかと見まごうような色の無いおどろおどろしい世界であっても幻想的で美しい映像が繰り広げられる。ただ、本来一人で入るべき鏡の中に複数の人間が入った場合の影響範囲や、鏡の世界で各々が直面する“選択”に際し、一緒に入った人物が助言したりする事がどの程度まで許されるのか、映画を一見しただけではその規則性が分からず終い(私の理解力が足りないだけなのだろうけれど)。


パルナサス博士が鏡の世界へ人を導く能力を持ったきっかけは悪魔との取引で、したたかな悪魔は博士の欲や望みが変わる毎に、勝負をしかけ、自ら望む物を博士から取り上げようと罠をしかける。悪魔との取引で望みを叶える、という展開はゲーテの『ファウスト』にも通じる物を感じるが、最終的に悪魔が博士から手に入れたかった物が何だったのかも正直イマイチ理解できず……。


ヒース・レジャーの遺作という事で観る人も多いと思うけれど、彼が演じるトニーもまた、最後まで謎が残る人物で。ロシアマフィアから逃げてきた過去に曰くつきの人物なのは分かるけれど、最終的に彼が新聞に載るまでに至った犯罪について、自らがどの程度罪を認識して着手した物なのか、何故悪魔が彼に目を付けていたのか、やっぱりよく分からない。


何とか理解できたのは、鏡の世界で悪魔の囁きに打ち勝ち、正しい選択ができた人は類まれな体験をでき、逆に誘惑に負けると鏡の世界に閉じ込められてしまうということ。一番笑えたのは、正しい選択ができるか、誘惑に負けるかの確率が男女により明らかに差がついているという点。


登場人物の想像する世界での旅、悪魔との取引と、映画や小説で使い古された手法のオンパレードであるはずなのに新しく感じるストーリー展開は見応え満点(ただし私のような洞察力の足りないタイプには解読が難解)。文章では表現しがたい摩訶不思議な世界観を堪能でき、ミュージカル風に展開するシーンは『チャーリーとチョコレート工場』のような面白さもあるので、鏡の世界の規則性がよく分からなくても映画としては十分楽しめた。


ちなみに世界観が理解できなかったのでパンフレットを購入しようとしたところ、完売で入手できず。上映2週目でパンフを買えなかったのは初めての経験。映画を観たのは新宿の某映画館。今度地元で探してみたいと思う。


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