テーマ:
ながすぎる髪をもてあましている
なにひとつまだ決められないままに…


襟足にふれた指さきがひんやりとして
おもわず身震いをする

風はもう、春をつげているというのに



わたしの優柔不断をきみが笑ったのは
いつのことだっただろう…


ひゅう、と
耳もとで風がないた気がした
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故郷(ふるさと)

テーマ:
後ろ手に
手を振る父の丸い背に
ふいに涙こぼれる帰京の朝(あした)


別れ際、
「元気でいろよ」と手渡しの
無造作なみやげが父らしく…

「ごめんね」の言葉は、
いつもそっと
心のなかだけで呟く


故郷(ふるさと)の空は、
昔と変わらぬ寡黙な灰色をして

不器用な私たち父子によく似ている
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馴染む。

テーマ:
並んだ肩のこぶしひとつ分の高さとか、
言葉を継ぐときにできるちょっとの間とか…

少しずつ、少しずつ、
この場所に馴染んで行くということ。

あなたの側で。
少しずつ。
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雨上がり

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たっぷりとした雨が、
夜の空にぶら下がっている。

なんてひどい空だろう…。
逃れられない重さに
身体ごと包み込まれてしまいそうになる。


雨上がりの夜の街は
底がひんやりと冷たくて、
私はいつだって逃げ出したくなる。


早く…少しでも早くと
駆け出す足先に夜が絡みついて。

それでも早くと
絡みつく夜を振りほどいて。


あぁ、
すぐにでもあなたに触れたいと思う。

こんな雨の日に…

テーマ:
こんな雨の日に
外に出るつもりはなかった。

もうずっと…
傘をなくしたままで。


雨の匂いが染み込んでくる。


雨の匂いは嫌いだ。

雨はあなたの匂いだ。
あなたの濡れ髪の匂い…。


色を失った街が感覚を狂わせる。


あぁ、こんな雨の日に外に出るなんて。

あなたという傘をなくしたままで。

行く先を、
もうずっと見失ったままで。