gataro
2006-12-08 02:04:08 テーマ:教育への権力の不当介入

根津さんの教育への教育委員会・校長・教頭の執拗な「不当な支配」

http://www2.tky.3web.ne.jp/~norin/kimetsuke.htmlより転載。

教員処分を検討する東京都多摩市教委

「偏向授業」と決め付け

意図的な「事情聴取」に疑問の声

【前文】「授業について市民から苦情があった」ことを理由に、市教育委員会が教員を処分しようとしている。ただ「苦情があった」というだけで事情聴取を進め、苦情内容さえ明らかにしようとしない市教委に、市民や同僚教員からは「あまりにも意図的だ」と疑問の声が出ている。

●問答無用の事情聴取●

 市教育委員会から事情聴取を受けているのは、東京都多摩市立多摩中学校の家庭科教諭・根津公子さん(五○歳)。「男女共生」のテーマを、社会的事象を通して考えさせる授業に取り組んでいることで、家庭科教育の研究者や教員仲間に知られる先生だ。

 「授業の進め方などについて、市民から苦情の申し立てがあったので事情聴取します」──。

 今年四月下旬、多摩市教委は根津さんを市庁舎の委員会室に呼び出した。しかし、具体的にどんな苦情がどんな形であったのか、内容を一切知らされないままの状態で、根津さんは事情聴取を受けようとしていた。そのことを知った市民や保護者ら数人が心配し、市教委を訪問して事情聴取の姿勢を問いただした。

 「市民からの苦情とはどういうものですか。もし授業に問題があるのだとしたら、まずは先生と市民が話し合って現場で解決すべきではないのですか」

 ところが、応対した市教委の原田美知子・指導室長は「(苦情や事情聴取の)内容については言えない。服務の問題も授業内容の問題もある。保護者と根津教諭が話し合うように校長には指示してあるが、指示通りに実施したかどうかの確認はしていない」などと繰り返すだけだったという。

 これに対して、根津さんは「授業内容に苦情や疑問が寄せられているのなら、きちんと説明したいと校長に何回も提案したが、その必要はないと言われて話し合いを拒まれた」と話しており、市教委の説明と校長の対応は完全に食い違っている。

 事情聴取は断続的に、これまで三回にわたって行われた。代理人の弁護士が必ず根津さんと同席して、手続きの正当性や公正さなどを一つずつただしながら、毎回二時間近く行われている。だが「市民からの苦情」の中身はどういうものなのか、相変わらず何も示されないままだ。

●子どもたちを扇動?●

 ことの発端は今年二月、卒業式実行委員会の中で、委員の生徒たちが「日の丸・君が代」の問題を話し合ったことだった。

 同僚教員と二人で実行委員会の顧問になった根津さんは、委員会の席で生徒に尋ねた。

 「みんなはどういう卒業式にしたいの?」

 委員会担当の顧問教員としてはごく自然な問いかけだ。「子どもたちが自分たちの力で作り上げたと感じられるような、自分たちが一番望むような卒業式を経験させたい」との思いから、根津さんは「実現できるように先生たちも協力するからね」と話した。

 「『君が代』はやらなくちゃいけないのかな。何となく暗くて嫌だ」と発言する生徒がいた。

 「自分たちで作る楽しい卒業式にしたい。やらなくていいのなら『君が代』はなくしたい」


 生徒たちが卒業式原案をそんな内容でまとめようとしたので、根津さんたちは「何となく暗いからというだけでは理由としてどうだろう。いろんな大人に意見を聞いて、もっと調べて考えてから結論を出したらどうかな」と指導して宿題にした。

 数人の生徒が校長のところに質問に行った。しかし、それがきっかけで「根津教諭は生徒を扇動して利用している」などと非難されることになった。以後、実行委のトーンはがらっと一変した。

 「学校主催で来賓もたくさん来るのだから、これまでのような伝統的な卒業式にしたい。この前の原案は変えて『君が代』もやりたいと思います」

 校長室に質問に行った生徒たちが、その次の実行委でそんな提案をした。卒業式は「従来通り」の形で行われることになった。

 そのうちの一人の生徒が根津さんのところにやって来た。「先生は『日の丸・君が代』をやめさせるために、私たちを利用したんでしょう。校長先生がそう言っていました」と話し始めたので、根津さんはびっくりした。

 「やめようなんて私は一言も話してないよ。みんながどうしたいかを聞いただけだよ。『君が代』のことは実行委員の子が言い出したんだよ」

 さらに、同じく校長室に行った実行委員の生徒が、家庭科の課題リポートを提出したくない理由を書いて持ってきた。「今やっている家庭科の授業は、校長先生が見せてくれた学習指導要領には一言も書かれていない内容だからやめてほしい」と書かれていた。

 それまで、授業中にも自分から積極的に発言していた生徒だったので、突然の変わりように根津さんは驚いた。

 どうやら生徒が校長室に質問に来た後で、校長は改めて何人かの実行委員の生徒を呼んで、「日の丸・君が代」や家庭科の授業のことで話をしたらしい。PTA役員の保護者数人にも、同じような説明をしたのではないか。その後の校長らの言動から、根津さんや同僚教員たちはそう推測する。

●授業内容にクレーム●

 それから間もなく、卒業式実行委員会の指導方法のほか、家庭科の授業内容について校長からクレームが付いた。

 根津さんは三年生の三学期の家庭科授業で「男女共生」をテーマに、従軍慰安婦や同性愛、男女差別の問題を取り上げた。義務教育最後のまとめとして、過去から現在まで続くレイプや差別の事実を知ったうえで、男女が一緒に生きていく社会の在り方を考えようというのが授業の趣旨だった。

 授業では合計六時間をこのテーマにあてた。賃金・昇進による女性差別の訴訟記事、韓国の従軍慰安婦を訪ねたビデオ、元日本軍兵士の証言をまとめたプリント、同性愛者が中学生に向けて書いた手紙などを教材として使った

 ところが、校長は「男女共生社会なんて学習指導要領のどこに書いてあるのか。家庭科の学習指導要領から逸脱している」と決め付けた。また、教頭は「六人の生徒が、先生の考えを押し付けるから家庭科の授業はもう受けたくないと言ってきた」と根津さんに告げたという。

 従軍慰安婦の問題について、生徒の一人が「うちのおじいちゃんは、そんなことやってないよね」と質問したのに対し、根津さんは「分からない」と答えたという。それが子どもの心を傷つけたのだと批判された。ところが、その応答がいつの間にか「みんなのおじいさんは人殺しだ」と根津さんが言ったことにされ、さらには生徒が「ぼくのおじいちゃんは人殺しだ」と受け止めて傷ついていることになっていた。

 ことの成り行きに、同僚教師たちも戸惑いと怒りを隠さない。

 「授業がこんなふうに一方的な受け止め方をされて処分されるのなら、教員は生徒に何も話ができなくなる。もの言わぬ教員が作られるだけではないか

 三月中旬になって、市教委指導主事と校長、教頭の三人が、根津さんの担当する二年生の家庭科の授業を見に来た。不審に思った生徒たちから、校長らに疑問の声が矢のように浴びせかけられた。

 「どうして教育委員会が授業を見に来るんですか」「ほかの先生の授業ではこんなことはないじゃないですか」

 授業が終わってからも、授業監視に対する生徒の怒りは収まらなかった。休み時間や放課後に、十人以上の男女生徒が次々と校長室へ抗議に行った。

 「先生が自由にものが言えないなんておかしいよ。社会科で習ったけど、これじゃあ、戦前の治安維持法とまるで同じ状態じゃないですか。現実がこんなふうになっているのに、私たちが何もできないなんて納得できません

 女子生徒の一人は、根津さんにそんな話をしてから友達と一緒に校長室に向かったという。

 「根津先生を辞めさせたら、おれはもう絶対にこんな学校には来ないからな」「なぜ、教育委員会は根津先生の授業だけ見に来たのですか」

 校長室で、二年生の生徒たちは指導主事や校長に食い下がって一歩も引かなかった。あまりの剣幕に、指導主事は「根津先生の授業について保護者から苦情の電話があったから見に来たんだ」と答えたという。

 しかし二年生の生徒たちは、校長や指導主事の説明に納得することはなかった。

 翌日、校長と教頭は「辞めさせられると生徒に言ったのか」と根津さんを詰問した。職員会議の場でも「子どもたちの状態が不安定になっている。生徒が騒いでいるのは、根津教諭が扇動したからだ」などとすごんでみせた。

 一方、この日に開かれた市議会予算委員会では、自民党と公明党の議員が「中学校の家庭科で不適切な教材を使う教員がいる」「自分の主義主張を押し付けて洗脳して困る」などと質問した。実名こそ出さないものの、根津さんを批判しているのは明らかだった。これに対し、生活者ネットや共産党の議員は根津さん擁護の論陣を張った。

●処分前提に材料探し●

 根津さんは八王子市立石川中学校に勤務していた二年前の一九九九年、家庭科の授業で「自分の頭で判断できる人間になろう」などと教えた。それが「校長の学校運営方針を批判するに等しい」との理由で、八王子市教委から文書訓告を受けた。昨年四月に、多摩市立多摩中学校へ異動。今年二月に「不当処分で精神的苦痛を受けた」として、八王子市を相手取り提訴した。

 当然のことながら、こうした経緯は多摩市教委もよく知っているはずだ。根津さんが「日の丸・君が代」の強制に反対して、職員会議などで積極的に発言しているのも把握しているだろう。

 市議会開会中の三月上旬。生活者ネットの吉田千佳子市議は、石川武・多摩市教育長と市庁舎内の廊下で立ち話をした時に、教育長が根津さんのことで愚痴をこぼしたのをはっきり覚えている。

 「多摩中は子どもが荒れていて大変だが、もっと困るのは教員の問題だ。根津教諭は問題教員なんてもんじゃない。子どもたちを扇動するようなことを言う。何とかして現場を外せないかと考えているんだが、なかなか証拠を残さないから困っているんだ」──。

 根津さんを学校現場から追い出すために、市教委と管理職が連動して何ごとかを画策しているのがとてもよく分かったと、吉田市議は証言する。

 多摩中の同僚教員の一人は「結論が先にあるんです。処分を前提にして材料を探している。とても同じ職場で働く人間の姿勢だとは思えない」と言って、市教委や管理職の姿勢を批判した。

 「根津さんの授業は指導要領に沿っていますよ。それなのに根津さんを辞めさせたい保護者の声は持ち上げて、好意的な保護者は追い返してシャットアウトするなんてフェアじゃない。事情聴取されるべき教員は、ほかに何人もいるはずでしょう。根津さんは市教委や校長に逆らう悪い先生だという前宣伝が、着任前から浸透しているのも問題だと思います」

 三年生の女子は「生徒の気持ちを全然無視する先生が多いけど、根津先生は親身になってちゃんと聞いてくれるから大好き。みんな信頼している。授業も楽しくて分かりやすい。絶対に辞めてほしくないです」と訴える。

 文部科学省初等中等教育局教育課程課では「新学習指導要領の改訂基本方針の中で、男女共同参画社会の推進がうたわれているが、これは家庭科の現行指導要領にも根底に流れる考え方だ。男女の性を認め人権尊重する授業内容なら、具体的な教材は子どもの実情に応じて現場に任される」と説明する。

 多摩市教委は「何もお話することはありません。議会で質問された事実もない」(原田指導室長)などと取材拒否を繰り返し、多摩中学校の前島俊寛校長は「市教委と相談してお答えしないことになりました」と述べた。都教委職員課は「市教委の対応をみて判断する」と話している。

初出掲載(「週刊金曜日」2001年6月1日号)

=雑誌掲載時とは表記や表現など一部内容が異なります。

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http://www2.tky.3web.ne.jp/~norin/kimetsuke2.htmlより転載。

「偏向授業」と決め付けた都教委の「いじめ」

つくられる「指導力不足」教員

学校を混乱させているのはだれ?

【前文】「自分の頭で考えて判断できる人間に」──。そんな授業を実践してきた中学校の家庭科教員が、学校現場から排斥されようとしている「偏向授業」と決め付けられ、事実をねじ曲げた情報が流されて、地域ぐるみで吊し上げられる光景は、まさに「いじめ」やファシズムそのものではないか。

●保護者会が糾弾会に●

 学校現場から排斥されようとしているのは、東京都多摩市立多摩中学校の家庭科教諭・根津公子さん(五一歳)。「授業について市民から苦情の申し立てがあった」などとして、今年四月に東京都多摩市教育委員会から事情聴取を受けていた。

 根津さんの授業を、多摩中学校の前島俊寛校長と市教委が「偏向教育」だと決め付け、授業監視などの介入をしたことは、本誌365号(六月一日号)で背景も含めて詳しく報じた通りだ(→記事「『偏向授業』と決め付け」)。あまりに不自然で意図的な校長や市教委の姿勢に対し、同僚教員や子どもたちの間から反発する動きが出た。

 しかし校長はその後、「根津先生は子どもを扇動している」「根津先生の授業は学習指導要領を逸脱している」などと生徒に伝えるとともに、PTA役員など一部の保護者と連携して根津さんへの非難を強めた。その結果、根津さんに反抗的な態度を見せる生徒も出てきた。今年九月、校長からの調書提出を受けて市教委は、根津さんを「指導力不足等教員」として東京都教育委員会に申請した。

 多摩中学校の体育館で六月二十二日の夜、全学年を対象にした緊急保護者会が開かれ、百人ほどの保護者が出席した。

 約二時間半の会議のうち、およそ三分の二の時間が、「根津先生は子どもたちを利用した」「子どもたちの心を傷つけた」という批判に費やされた。三月中旬に、市教委の指導主事らが根津さんの授業を見に来たのを疑問に思った生徒たちが、校長室へ質問に行ったことが問題になった。一方的な授業監視に対する純粋な憤りの気持ちから出た子どもたちの行動が、いつの間にか根津さんが「子どもたちを扇動した」ことにすり替えられたのだった。

 さらに、「慰安婦なんて生々しいものを授業で取り上げないでほしい。うちの子どもは出席させたくない」といった意見のほか、教職員組合のチラシを非難する声もあった。市教委による授業介入など、根津さんをめぐる一連の出来事に対して組合が説明チラシを配ったのだが、多摩中の恥を外にさらすことになるからやめてほしい、というのだった。

 根津さんを批判する保護者グループ十数人が、泣いたり絶叫したりしながら次々とマイクを握って話し続ける。中には「みんなが根津先生に反対しているわけではないんじゃないか。一方だけでなくいろんな意見を聞きたい」「どうしてこんな大騒ぎになってしまうんですか」といった発言もあったが、話がはぐらかされ、またすぐに根津さんを批判する発言が繰り返されたという。根津さんは事実誤認の部分について釈明したが、理解は得られなかった。

 出席していた保護者の一人は、この時の様子を振り返り、冷めた口調でこう話した。

 「進行がとても作為的でした。やらせと言うか、吊し上げや魔女裁判みたいな感じで、一人の教師を追放する方向に持っていこうとしていて不自然なんです。問題になっている学級崩壊を解決しようとせず、こんなことに情熱を傾ける。多くの親はあきれて見ていたように思いました

 七月に入って三年生の保護者会が二回開かれた。根津さんは保護者への弁明を希望したが、出席はいずれも認められなかった。

●子ども市議会で質問●

 多摩市の市制施行三十周年を記念し、八月二十三日に「子ども市議会」が開かれた。市内在住の中学二年生十五人が「子ども議員」として質問し、市長や教育長らが答弁する。子どもたちに市政を身近に感じてもらおうと、多くの市で実施している行事の一つだ。

 この中で、多摩中学校の女子生徒からこんな質問があった。

 「私の通っている中学校のある教師が、国旗・国歌について、教師にあるまじき発言をしたことについて市はどういう対応をしたのですか。国の象徴を汚すような発言をする教師の授業は受けたくありません。市はどのように考えているのですか。入学式や卒業式の朝、校門の前で『日の丸・君が代はいらない』と書いたビラを配る大人たちがいました。やめさせてほしいと思います。市はこのような大人たちをどう思いますか」

 この日、質問のため登壇したのは市内に十校ある市立中から選ばれた十人と、私立中に通う生徒ら公募による五人。一人当たりの持ち時間は、答弁も合わせて十五分ずつ。ほかの生徒がごみ問題や図書館、ボランティア活動、部活動などについて質問する中で、この質問は異色だった。

 これに対し、石川武教育長(当時)は次のように答弁した。

 「現在までの途中経過ですが、校長をはじめ関係者が授業を参観し指導を行い、よりよい授業となるよう努力しています。学校では学習指導要領に基づき、入学式や卒業式などの学校行事において国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱することとなっています。学習指導要領を無視する態度は、教員としては許されない行為です」

 「学校の校門の前で学校批判のビラを配るということが、どれほど子どもたちの心を痛めることになるのか、そんなこともおもんぱかれない大人がいることは、きわめて残念です。これからもし、そのようなことがあったら、すぐに先生方に伝えてください。先生方は、すぐに駆けつけて行ってやめさせてくださるはずです」

 今年三月に開かれた多摩市議会予算委員会で、自民党と公明党の議員が「中学校の家庭科で不適切な教材を使う教員がいる」「自分の主義主張を押し付けて洗脳して困る」などと質問したのと同じように、実名こそ出さないものの、この質問と答弁が根津さんを批判しているのは明らかだった。

 もちろん、子どもの意見表明権は最大限尊重されなければならない。この生徒は「子ども市議会」の場で、自分なりの率直な思いを述べたのだろう。

 だが、国旗・国歌についての発言を「教師にあるまじき」と断定して、「ビラを配る行為をやめさせてほしい」と行政に求めるのは、憲法で明確に定められている思想・信条・表現の自由の観点から、かなり問題のある質問だと言わざるを得ない。

 そういう意味では、むしろ批判されるのは教育長の答弁だろう。憲法順守義務を課されている公務員として、思想・信条・表現の自由を尊重する立場から、教え諭す内容の答弁をすべきだった。

 議場で「子ども市議会」を傍聴していた市議会議員の一人は、教育長答弁を厳しく批判する。

 「疑問があるなら先生と十分に話し合ってください、というふうに教育長は子どもに答えるべきです。大人たちの配っているビラを一方的に批判するのもおかしい。世の中にはいろんな考え方があるということをフォローするのが本当の教育でしょう」

 多摩市教委の原田美知子指導室長は「子どもたちのいろいろな考えが『子ども市議会』では出たと思う。子どもたちの質問内容は学校ではチェックしていない。教育長答弁は、教員が襟を正さなければならないということを述べただけだ」と説明している。

 「子ども市議会」の様子は、地元ケーブルテレビ局が夏休み特集として一時間番組に編集し、九月初旬から一週間にわたって一日四回、合計二十八回放送した。同局には多摩ニュータウンを中心に約五万世帯が加入している。

●延々と続く授業監視●

 七月中旬から始まった市教委や都教委の指導主事らによる根津さんの授業参観は、二学期に入っても続けられ、すべてのクラスを見に来るようになった。

 前島校長は九月十四日付で、根津さんに授業改善の職務命令を出した。内容は、年間指導計画の書き直しを求めたのに提出していない、学習指導要領と授業の関係が明確でない、生徒に討論させたり新たな課題に気付かせたりしていない、生徒との応答を一問一答で終わらせている、授業開始時の生徒の把握が不十分、一部の生徒しか授業に参加せず私語したり眠ったりしても放置している、途中で教室から出て行く生徒に声かけをしない──など。

 九月下旬には前島校長から市教委に、根津さんの「指導力不足等教員」申請調書が上がり、市教委から都教委へ申請が出された。

 それまで根津さんに向けられていた批判が、授業内容から指導方法へとシフトしていった。「授業で慰安婦や同性愛の問題を扱うのは偏向している」「『日の丸・君が代』に反対するなんてけしからん」などとされていたのが、いつの間にか「指導力不足等教員」ということになっていた。

 校長が出した「授業改善命令」に対して、根津さんは「授業は指導要領の趣旨に則していて問題ないはずです。授業監視などの影響で動揺が見られる中、子どもたちは授業によく参加して発言も活発だったし、一人二人が私語をしていたが注意したらすぐに止めました」と反論している。

 都教委は根津さんに「弁明の機会」を設けた。根津さんは弁護士同席で弁明に臨んだが、市教委が都教委へ出した申請内容がなかなか明らかにされないことから、話がかみ合わない。根津さんは「手続きを進める前提として、指導力不足の理由を特定してほしい。何が審理の対象になっているのか明確にされなければ弁明できない」などと主張した。

 これに対し、都教委は「農薬などを扱った授業内容は学習指導要領とどう関係するのか、授業参観の学習指導案を出さなかったのはなぜか、生徒の授業ボイコットへの対応はどうだったのか」など四点を示した。だが、根津さん側は「争点が少しずつずれてきていている。本気で弁明に耳を傾けて判定材料として受け止める気があるのだろうか」と、都教委の姿勢に疑問を投げかける。

 さらに、公の場での弁明であるのに、指摘するまで都教委が記録を残そうとしないことも、不信感を募らせることになった。

 数回にわたる弁明を、隣に座って聞いていた根津さんの代理人の萱野一樹弁護士はこう話す。

 「校長がデマやうそを流し、ことさらに保護者や生徒を煽って不信感や反感をつくり出しているのが最大の問題点です。従軍慰安婦や男女共生社会を取り上げた授業が指導要領を逸脱しているなどと言って、根津さんへの不信感を意図的につくっている。教員が保護者や生徒とトラブルになったら、冷静な話し合いをするように調整役に入るのが校長の果たすべき職責でしょう。教員を教育現場から排除するのを前提に、自らバッシングを組織して旗振り役を演じるなんてとんでもない話です」

 多摩中学校の前島校長は「いろいろと影響があるので対応しません」と述べ、取材拒否した。

●明確でない判定基準●

 都教委は「指導力不足等教員」の定義を「要綱」で、「児童・生徒を適切に指導できないため、人事上の措置を要すると決定された者」としている。都教委人事部は「管理監督者である所属長が問題を整理して改善指導し、様子を見た市町村教委からの申請を受け、都教委の判定会の審議を経て決定する」と説明するが、どのような事例が「指導力不足等教員」に当たるのかという具体的な判定基準は全く定められていない。

 一方、文部科学省は、改正地方教育行政法の来年一月からの施行にあたり、今年八月に都道府県教委と指定都市教委に通知を出したが、この中で指導力不足教員について三項目を示している。専門的知識・技術等が不足しているため学習指導が適切にできない、指導方法が不適切である、児童生徒の心を理解する能力や意欲に欠け、学級経営や生徒指導が適切にできない──の三点だ。

 根津さんのケースについて、都教委の新井清博・職員課長は「市教委から申請が出ているので、意見陳述の場を設けて本人の話を聞いたうえで、客観的事実に基づいて判定することになる。文部科学省の通知に当てはまるかどうかも見ていく」と話しているが、明確な基準がなければ恣意的な判断も可能になるだろう。

 「指導力不足」で学校を混乱させているのは、そもそもだれなのだろうか。

初出掲載(「週刊金曜日」2001年11月16日号)

=雑誌掲載時とは表記や表現など一部内容が異なります。


◇【編注=固有名詞の読み方】根津公子(ねづ・きみこ)/萱野一樹(かやの・かずき)

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【heart】

根津さんへの「イジメ」は、驚くべきことに1995年から始まっています。

第1次処分(1994・3)……八王子市立石川中学校
  校長は職員会議の決定を破り卒業式に日の丸を揚げた。生徒が「下ろして」と叫ぶ混乱の中で根津さんは下ろし、減給処分

第2次処分(1995・3)……八王子市立石川中学校
  職員会議の決定を踏みにじって揚がった「日の丸」について学級通信で触れて、訓告処分

第3次以降、第9次まで続く処分についてはhttp://www.okidentt.com/nezu/rireki.htmlをご覧下さい。

「根津公子さんのページ」というのもあります→http://www.din.or.jp/~okidentt/nezusan.htm
ここには、根津さんの写真も載っています。
とても優しそうなお顔の方です。
信念をもって教育をして、処分される。
処分されてもされても、信念を曲げずに、不当なものと闘い続ける。

こういう先生は、尊敬されこそすれ、「指導力不足」教師などとは対極にあるでしょう。

校長の前でびくびくしている先生と、堂々と意見を述べ、生徒にも自由に意見を言わせ、考えさせようとする先生。
どちらの先生に貴方なら習いたいですか?


P.S.この記事のタイトルに「不当な支配」という言葉をつけたのには、ワケがあります。

現行教育基本法には、

「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」

という規定があります。

改悪案では、これに、「教育は、・・・この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり」という法律の留保がつきます↓

「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。 」

現行基本法下では、教師以外による教育現場に対する「不当な支配」を排除することを意図してあるものが、
法律による「不当な支配」は不当ではない、不当なのは、ある種の教育を実践した教師だ、というふうに、180度変わるのです。

つまり、根津さんのケースで言えば、現行教育基本法下なら、教育委員会や校長らのしたことを「不当な支配」に当たるとして裁判を起こすことが可能ですが、
教育基本法が改悪されると、根津さんのやったことが「不当な支配」だとして告訴される恐れが出てくる
、ということです。

「法律により」決められるということは、何でもできるようになるということです。特に、憲法違反の法律が平気で通ったり審議されたり(例:憲法で保障された思想・良心の自由を国民から奪い取る共謀罪)するこの国においては。
自衛隊がいるからイラクは非戦闘地域なんだと小泉は言いましたが、
それと同じ論理で、
この法律が存在しえているということは、この法律は合憲だということなのだと、
そういう論理で、政治の世界は動いている
わけなのですから。

下記は、私が今日発見したホームページからの抜粋です。
問いの立て方も恣意的ですし、答えの方も、よくもまあそういうことがシャーシャーと言えるな、というようなものです。どこがそうなのかについてはまた後日説明します。

-------------------------------------
「教育基本法改正Q&A~教育基本法に向けた主な論点~(平成18年6月 自 由 民 主 党)」http://www.jimin.jp/jimin/seisaku/2006/kyouiku/qa_index.ht

問13:「不当な支配に服することなく」という規定が残ったのは何故ですか。

1. 「不当な支配に服することなく」とは、教育が一部の勢力に不当に介入されることを排し、教育の中立性、不偏不党性を求める趣旨です。
 しかしながら、この規定は、現行法の「教育は、・・・国民に直接に責任を負って行われるべきものである」や「教育行政は、・・・必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない」との規定ともあいまって、一部の教職員団体等により、教師のみが教育権を持ち、国や教育委員会は教育内容や方法に関われないという誤った主張がなされてきました。このような考えから教育委員会や校長等による指示、指導を認めない根拠となってきました。
2. また、一部の教職員団体等によるこのような誤った考えに基づいて、入学式や卒業式等での国旗掲揚や国歌斉唱に対する反対がされてきました。
3. このため、これらの規定を整理し、「不当な支配」以外の規定は削除し、「教育は、不当な支配に服することなく、法律の定めるところにより行なわれるべき」ことと規定し、法律に従って行なわれる教育行政、教育委員会や校長等の行為が「不当な支配」に当たらないことを明確にしました。
4. このような改正によって、校長の権限を侵すなど教職員団体などの一部勢力による、法律に反する「不当な支配」のための従来のような主張の余地がなくなり、指導内容・方法に関することを含め、適正な教育行政の実施が確保されることになります。

問14:法改正により、北海道や山梨県のような一部の教職員団体による学校現場に対する不当な支配を排除できるのですか。

1. 今回の教育基本法の改正により、一部の教職員団体による「教育権は教師にのみあり、校長等の指示や指導は不当な支配である」という主張は根拠を失うこととなります。したがって、今回の改正を機に、国及び地方を通じて、教育の正常化の取組を強化していく必要があります。
2. 今後とも、文部科学省に対して、学校において適切な管理・運営がなされるよう教育委員会への指導の強化を求めていきます。また、地方自治体でも、議会が中心になって、勇気と気概を持って不適切な管理・運営の是正に積極的に取り組むよう、自民党としても、働きかけや支援を進めていく必要があります。

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