パワーヘルス大元帥様万々歳 | Study Hard

パワーヘルス大元帥様万々歳

 今年のはじめ、家の傍に「パワーヘルス宣伝会場」が出来ました。
 平成17年1月23日~3月末日までの予定が、近隣の好評を得て、現在に至るまで継続して治療・宣伝にあたっているようです。会場は期限が来そうになるたびに追加で期間を伸ばして利用しているようです。
 パワーヘルスは株式会社ヘルスの開発した画期的な医療機器で、マイナスイオン生体電子75%とプラスイオン生体電子25%という人体に最適な生体電子バランスを保つ医療用具であり特許取得済の装置です。

 さて、そこのあなた。怪しいと思ったら負けです。
 そうやってすべてに疑いのまなざしを向けて生きて行くのですか?
 まあ落ち着いて、そしてちょっと今日の出来事を聞いて下さい。

 コトの発端は祖母がこの器具を買ってきた所から始まります。誤解の無いように言っておきますが、宣伝会場は販売所ではありません。少なくともそう書いてあります。
 祖母は50万円也でこの器具を買ってきました。そのとき私の脳裏に思い描かれていたのは、祖母の故郷釜石(のそのまた外れ)を訪ねた際に見た「温熱療法機販売業者」です。「温熱療法機販売業者」は最初「88円ショップを近くで開く予定でありその宣伝に来た、裏の車庫を貸してくれないか」と、そのとき私と高校の同級生K君が泊まっていた家に頼みにきました。気になった私とK君が裏の車庫に行ってみると、そこには近所の老婦人たちを集めて「88円商品」の説明をする中年男性と周りを囲む数名の青年がいました。
 私たちはさっそくその輪に加えてもらい商品の説明を聞くことにしました。中年男性の説明は見事なもので、その出てくる「88円商品」が健康の話題に繋がっており、だから温熱療法機を買えというメッセージになっていました。例えばスライサーは「これで野菜を切って食べて抗酸化作用が」云々、でもってこの商品は云々、あの商品は云々、でも大丈夫、そんな面倒なことをしなくてもこの温熱療法機を買えば楽々健康になれる。それでお値段はと言うと18万云千円。高いと思われましたか奥様方。でも大丈夫。この貯金箱(男根を彷彿とさせる形、紹介しながら股間にその貯金箱を当てて笑いをとる)に500円玉を詰めて行くとちょうど20万円くらいになります、こつこつと貯めていけば一年くらいですぐに貯まります、という調子。そして温熱療法機の試用に移り、最後に放り投げるように温熱療法機を配り出す中年男性。何となく受け取るとそのまま青年が寄ってきて契約フェイズへ移行。
 私とK君はすっかりこの集団に魅了されました。私たちは訝しがられて後ろの方に隔離されていたのですが、それでも一所懸命その場を盛り上げようとしました(泊めて頂いた家の方からは「ウチがつるんでると思われるからやめてよ」と諭されましたが)。例の「88円商品」は中年男性が気前良く配っていたので、快く受け取りました。特に男根の形をした貯金箱は私の大のお気に入りになり、今でも使っています。
 余談ですが、この貯金箱は東北の旅先でも大活躍し、ある駅で停車中に列車の窓辺に置いておいたら、対向列車に乗っていたバカ中学生が貯金箱を発見し大爆笑、さらに折り曲げたり伸ばしたり縮めたりしたところ(この貯金箱は伸縮自在です)学友を巻き込んで列車をも揺るがさんばかりの勢いではしゃいでいました。また貯金箱をチャックに挟んで乗車していたところ、トレッキング帰りの中年女性が「分かっててやってるのよ、いやらしい」などと噂し、あるいは先ほどとは別の列車の窓辺に置いておいたら、明らかに不自然な動作で子供の目から遠ざけようとする母親がいたりするなど、貯金箱は行く先々で大人気者でした。そうそう、深夜の仙台の繁華街を貯金箱をチャックに挟みながらインターナショナルを高歌放吟しつつ闊歩していた若者もいましたね。それにしても仙台はよそ者を警戒する街なのでしょうか。東北大に行ったS君と旧交を暖めつつ、ペドフィリアで同級生のA君の話をしていたら居酒屋中の視線がこちらへ集まってくるのを感じました。別にその旅では何もする気がなかったのに不愉快な話です。
 話が逸れすぎました。ただ、今でも心残りなのが、10秒前に聞いた温熱療法機の値段を忘れるような老婦人方が、果たしてあの緻密に構成された「誘導トーク」の全体像を理解出来たのかということです。

 それで話をパワーヘルスに戻しましょう。
 祖母が買ってきた装置や説明書を読んで、これは非常に興味深いなと思いました。それで私は今日とうとう宣伝会場に行って来ました。

 続く