2012年10月11日

11月6日投票の米大統領選まで1カ月を切った。再選を目指す民主党のオバマ大統領(51)と政権奪還を狙う共和党のロムニー候補(65)が全米各地を遊説し、論戦は熱を帯びてきている。
 世界経済や安全保障などグローバルな問題に影響力のある米国のリーダー選びは目下、内向きな議論に終始している。景気と雇用など内政問題を優先するのはやむを得ないが、超大国として国際社会との対話も大切にしてほしい。
 両候補には在沖米軍基地問題も真正面から論じ、県民の大半が人命の脅威として拒絶する垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備撤回を決断してもらいたい。
 在沖米海兵隊の「抑止力」や沖縄駐留の「地理的優位性」という論理の虚構性について、日米の複数の専門家が言及している。
 こうした中、日米両政府が普天間飛行場の県内移設に固執するのは時代錯誤だ。両候補が超大国のリーダーとしての大局観を発揮し、普天間の閉鎖・撤去で日米関係の劇的改善を図ってほしい。
 オスプレイ強行配備の理不尽さは米主要メディアも取り上げているが、肝心の大統領選でこうした議論を聞かない。もし中東和平や対テロ戦略などと比べ沖縄問題を些末(さまつ)な問題と捉えているなら、その認識は間違いだ。万が一にも墜落事故が起これば、在沖基地は県民の敵意に囲まれ、日米安保体制への県民、国民の信頼も失墜する。
 オバマ、ロムニー両氏に問いたい。自由や民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった崇高な理念を掲げる米国が、なぜ沖縄ではそれを実行しないのか。
 両氏は政治・経済、安全保障、環境問題など各面で日米中3カ国の戦略的対話の必要性が叫ばれる時代に、「安保マフィア」と呼ばれる一部知日派に対日政策をゆだねてきたホワイトハウスの不作為も正すべきだろう。知日派が米軍の既得権益維持を後押しする一方で、沖縄に過重負担を押し付けて日米関係を危機に陥れた「失政」の責任も問われるべきだ。
 16日に行われるオバマ、ロムニー両氏の2回目のテレビ討論で沖縄問題を含む外交論戦を期待したい。オバマ氏提唱の「核なき世界」の実現を含め、米国のリーダーには国際社会と協調し、真の民主主義と平和を追求する使命があることを片時も忘れてはならない。