小さなキャリーケースでお米を買いに行っていることを友人に打ち明けたら、Amazonで買えばよろしかろうと言われまして、目から鱗だったわけです
なんで思いつかなかったのだろう
しかしAmazonって、すごいんですね
お米のラインナップ、充実してました
普段は1,2Kgしか重たくて買えないけれど、せっかくだから2,5Kgのお米を買っちゃおう、あ、以前お店でいただいて美味しかったお米も売ってるじゃないか、んー、迷うけど、一つは無洗米にしちゃえばいっか、でも両方で5Kgか、ふむふむ、そんなに食べられるのか?
などと考えて、結局二つとも購入した私
そして今、私の目の前には、届いたばかりのお米が二つ並んでいます
5Kgが二つ
計10Kgのお米があるのですが、どういうことでしょうか
おそらく、「二つで5Kgか」と悩んでいるうちに、「5Kg」だけが頭に残ってしまい、それを二つ分クリックしてしまったのでしょう
10Kgか…
10Kgだよね…
いけるよ、私!

数日後

10Kgのお米は、外食が続いていたのをやめ、自炊生活を取り戻すきっかけになりました
いつもより少し早く家に帰り、今日はどうお米を美味しくいただこうかな、と考えます
ハンバーグ食べたいな、煮物食べたいな、ではなく、お米をどう味わうかを先に考えて、おかずを決めていくのはとても新鮮です
するとどういうわけか、味つけが更に薄味になり、どういうわけか、粗食になり、そのぶん自然と副菜を多く用意するようになりました

数日後

おにぎりを作って公園で食べたりもします
通りかかったおばあさんが、ベンチでおにぎりを頬張る私を見て、あなた可愛い人ね、と声をかけてくれました
いい年ですんで、と返すと、おばあさんが、女の可愛さについて話してくれました

数日後

おにぎりを作って朝一番のロマンスカーに乗ったら、70才のたいへんお洒落なおじさまと隣りの席になりました
おじさまは、コンサルタント会社の社長だそうで、何故か私に興味を持ってくれ、ひっきりなしに話しかけてくださいました
おじさまは、自らが志を持って起業したその経験から、志ある若者には積極的に融資してあげたいと思っているのだけれど、なかなかそう思える若者に会えないと言っていました
今の人たちはだめ、あなたは賢いけど、今の人たちは知識だけだもの、
と言うので、私が、
知識と同じくらい、知恵が必要ですよね
と言うと、おじさまはそれがたいへん気に入ったらしく、上手い!と声を張り上げ、そうなんだよ!知恵がないんだ!知恵だよ知恵!知識と知恵!と確認するように繰り返していました
一応追記しておくと、おじさまの若者に対する思いは優しさに満ちたもので、厳しい意見だけではなく、また、志ある若者に出会えたときは感慨もひとしおなのだということも教えてくださいました
聞けばおじさまは元々銀行勤めだったらしく、経済にお詳しいとのことで、私は、イギリスのEU離脱やキューバとアメリカの国交回復について、資本主義の今後についてなど、色々質問させていただき、おじさまも一つ一つ丁寧に答えてくださいました
また、私は今、戦後直後から高度経済成長期が始まる前までの日本について勉強しているのですが、70才のおじさまならギリギリ憶えていることもあるかもしれないと調子に乗ってついでに聞いたら、おじさまはご自身の記憶と、おじさまがお母様から伝え聞いた記憶の話を、やはり一つ一つ丁寧に答えてくださいました
実は私、今小説を書いているんです、と告白したら、おじさまは、あなたは絶対面白い文章を書くよ、だって知恵があるもの、と微笑んで、最後に、頑張りなさい、と言って、ロマンスカーを降りました
厚木で降りたおじさまは、96才のお母様に会いに行かれるとのことでした
今日はもしかしたらお母様と昔話で盛り上がったりされるかもしれないな、とホームを歩くおじさまの背中を見送りながら想像したら、なんだかやけにほっこりしました
それから私は、厚木から箱根に着くまでまだ時間があったので、鞄からおにぎりを出して、ゆっくりと食べました

そもそもはお米を買い間違えただけですが、たまには間違えてみるのもいいもんだな、と思います

ただそれだけの話

皆さん、いかがお過ごしですか?
雪が降ったりなんかして、急速な冷え込みに体がついていかないかたもいらっしゃるのではないでしょうか
そんなとき、なんとなく訪れた「やだな」から、ささやかな「いいな」が生まれたらどんなに素敵かと思います
それはきっと、心許ない日々を鮮やかに彩ってくれる確かなものになるでしょうから
例えば私の、「お米10Kg」からの、「人生の先輩たちとの出会い」「献立づくりにおけるプロセスの変化」のようにね
思わぬできごとから生まれた「いいな」を、私は「必然」と呼びます
お米を買い間違えただけのくせに、なにをまぁえらそうに
わっはっは

皆さんが、例え間違えても、ささやかな「いいな」を見つけられますように

明日も良き一日を

ごきげんよう