2009-11-23 02:33:45

心がおぼつかない夜に

テーマ:ブログ
酒井若菜オフィシャルブログ「ネオン堂」Powered by Ameba-091119_2105~01.jpg


記憶を辿ったら、私はなかなか恵まれている、と気づかされました。
数ヶ月前の深夜。
なかなか眠りにつけなかった私は、ベッドから這い出て、真っ暗なリビングへ行き、テレビを点けました。
NHKの番組内で、ファッションデザイナーさん(を目指しているかたかな?)が0円で作ったオリジナルの洋服を出演者のかたが審査する、というようなコーナーが放送されていました。
賞をとったのは可愛らしい女の子。
名前を呼ばれた瞬間からポロポロと涙を流しました。
そして泣いている彼女の傍らで、ある出演者のかたが「良かったな。ほんとに、良かったな」と何度も声をかけていらっしゃいました。
私は、その放送をみて、暗いリビングに灯ったテレビの光と同じくらいの眩しさの気持ちの光に「あったかいなー」ともらい泣き。
そして、何も言葉を発せずただただ涙をこぼす女の子の姿に、私の頭と心から、記憶がワッと出てきて、リビングを更に明るく照らしました。
「私もこの人に、良かったな、と言われたことがある」
と。彼女に優しく声をかけていた出演者。
それは、テリー伊藤さん。
今となってはご存知のかたは少ないと思いますが、私の芸能界の育ての親は、テリーさんです。
今日は、テリーさんのお話。
10年ほど前でしょうか。
エキストラと平行して、うっすらグラビアを始めた頃の私に、テリーさん司会のある深夜番組でアシスタントをやらせていただけることになりました。
会社のスタッフも私も「テリーさんのアシスタントだ!すごい!」とみんなで抱き合って喜んだことを今でも憶えています。
そして初めての収録日。
テリーさんを中心に、出演者のみなさんが六畳一間のタタミの上で、それぞれの席につきます。
ところが、私の席が見当たりません。
不慣れな私が現場でおろおろしていると、スタッフさんが私のところにやってきて、一本のマジックを渡しました。そして「きみはここで立って、出演者のみなさんが言った言葉をホワイトボードに書いて。あと、収録中に、資料をみなさんに配って」と言われました。
そうです、私は、MCアシスタントではなく、番組アシスタントだったのです。
基本的に映りこんではいけない、黒子のような存在。
てっきりテリーさんの横で番組に参加できるものだと思って、浮かれてマネージャーと抱き合ってしまった手前、とてつもなく恥ずかしくなりました(今考えると、黒子だって大事な仕事なんですけどね)。
その後、ただ黙々とホワイトボードに言葉を書く収録が何週も続きました。
数ヶ月たったある日の収録。
視聴者のかたからの悩みに答える、という企画の収録中、私が出演者のかたの言葉をいつものようにボードに書いていると、突然テリーさんが「あなたはどう思う?」と突然私に質問してくださいました。
黒子の私にです。
ありえないことなので、音声さんが慌てて私のほうにマイクを向けます(ピンマイクなんてつけてもらえる立場じゃなかったの)。
私は、思ったことを答えました。
一瞬の間があってから、テリーさんは言いました。
「今日から、若菜の席は、俺の隣りな」
これが、芸能人(といって良いのでしょうか)のかたに呼ばれた最初の「若菜」です。
スタッフさんの戸惑いが、私にも伝わってきます。
でも、テリーさんは「この子、面白いよ。間違いないから」と私を横に置いてくださいました。
この瞬間から、私は番組アシスタントから、念願のMCアシスタントに昇格したのです。
これ、すんごいことです。
そんな例、いまだに聞いたことありません。
そしてその後、テリーさんはたくさんの番組に私をキャスティングしてくださいました。
私のテレビの仕事の9割がテリーさんのおかげで決まりました。
私は当時、今よりもさらにダメなタレントで、自分からは一切発言できず、いつも下を向いていました。そりゃ司会のかたも私を諦めます。そんな甘い世界じゃないし。
でもテリーさんは、何かあるたびに「若菜はどう思う?」とふってくださいました。
それは、番組を成立させるということだけではなく、単純に私の意見を楽しんでくださっているように思えました。
私が意見を言うと、みんなが首をかしげます。
でもテリーさんは「分かる!」「そうか!」「なるほど!」と必ず肯定をしてくれて、言葉が下手くそな私に代わって「若菜が言いたいのは」とフォローしてくださいました。
ある日は「若菜はね、若者言葉を使わないんだよな、今どき感がない。それがいいんだ」と言ってくださいました。10代のアイドルに求められるのは、昔も今も変わらず現代っ子感。当時の今どきといえば、ガン黒のコギャル。一方私は黒髪の色白。しかも利口じゃない。番組から求められる要素なんて一つも持っていない。でも、テリーさんは「面白い、面白い」と言ってくださいます。
ある日は、私が珍しくテリーさんとは関わりのない番組に出させていただくことになった時、その番組のスタッフさんに「実はこの前テリーさんがゲストで出てくださったんですけど、その時『酒井若菜っていう子がいるんだけど、面白いんだよ』っておっしゃってたんで、今回声かけてみたんです」と言われ、驚きました。もう、バーターどころじゃない、と。ここですごいのが、当時、愛人疑惑まで囁かれていたらしいのだけど、私ね、疑惑が出たときに初めて「テリーさん結婚してるんだ~」と思ったくらい、っていうかいまだに既婚者か未婚者か知らないくらい、プライベートのつながりがなかったんです。電話番号すら、交換したこともないんですよ。すごいですよね。
そして、特に思い出に残ったある日。
ある番組の収録で、海に行ってみんなで絵を描きました。
私はものすごく絵が下手です。そして、色彩感覚というものがありません。
ただ、すごく天気が良かったので太陽が海に射して、とても青だけには見えなかったので、赤や茶色やグレーを混ぜて海を描きました。
出来上がった絵を見て、自分で「気持ちが悪い」と思う・・。
芸術的な絵ならともかく、単純に下手だからタチが悪い。
そしてみんなで出来上がった絵のお披露目。
みなさん、すごくお上手。
一方私は、気持ち悪い。
自他共に認める真面目人間で機転の利かない私は、気持ち悪がられることを「おいしい」とは思えず「青だけで書けば良かった」とひどく後悔。
が、ここでテリーさんおっしゃいました。
「だめだなぁ、俺いつの間にこんなつまんない感覚持つようになったんだろ」
と。そして、
「5分ちょうだいよ。書き直し!」
とまた浜辺に座り込んで絵を描き始めました。
5分後。
テリーさんが見せてくださった絵を見て、泣きそうになりました。
赤や茶色やグレーをメインに、色という色を全て使って、画用紙いっぱいに、大きくてカラフルなエビが、どおーんと描かれていたのです。
もちろん浜辺からエビは見えません。だけど、テリーさんは海を見ながら、圧倒的なイマジネーションでそのエビを描かれたのです。そのエビがすんごい存在感で、またかっこよくて、カラフル具合も含め、私にはそのエビがテリーさんの自画像に見えて、めちゃくちゃ感動。
テリーさんは言いました。
「これくらいがいいんだよ。ありがとな、若菜」

数年後。
その頃私は、グラビアを卒業して、演技をメインに仕事をしていました。
テレビ局で、偶然テリーさんとすれ違い、私はご挨拶をさせていただきました。
が、テリーさんは「あ、うん」と言うだけ。
簡単に心が折れた私は「私のことなんて忘れちゃったんだろうな」と思いました。
次の日。当時やっていたブログにこんなコメントが。
『今、テリーさんのラジオを聞いていたら、若菜ちゃんの名前が出ましたよ。好きな女優を聞かれて「酒井若菜に決まってるじゃないか」って』
ちょうど自信を失っていた時期でした。
私は、テリーさんにタレントとして育ててもらったのに、女優の道を選んだので、私を女優として、更に「好きな」と聞かれて名前を出してくださったことがあまりにも嬉しくて、コメントを読みながらポロポロ泣きました。

更に数年後。
私は休業あけ。仕事もうまくいかず、俯く日々。
姉から電話がきました。
「今、テリーさんがあなたの名前をテレビで出してくれたよ」
「え?なんて?」
「テリーさんの先見の明についての話をしてたらね、テリーさんが『俺が見つけた子はみんなすごいんですよ、酒井若菜とかね』って言ってた!」
・・・ポロポロ。
当時の私は「酒井若菜を見つけたんだ」と引き合いに出したところで「あの酒井若菜を」とはとても言えないくらいの存在(今もだけど)。でも、当たり前のように名前を出してくださっていたことが、信じられないくらい嬉しかった。
そして、まさかの数日後。「あ、うん」以来、テリーさんと偶然テレビ局で会いました。
私の控え室を、別の番組でいらしてたテリーさんが訪ねてきてくださったのです。
顔を見た瞬間に号泣した私。
ラジオの件とテレビの件のお礼を言うと、テリーさんは「当たり前のことを言っただけだよ。酒井若菜に決まってんだろ」と笑いました。
泣き止まない私に「よく頑張ってるな。いいぞ」と声をかけてくださいました。
そして、「良かったな」と。

数年に一度、極端に自信がなくなった時、必ず目の前に現れてくださるテリーさんは、私にとっての救世主。
本当に、嬉しい。

そして最近。
ニュース速報の監督が「なんでみんな酒井若菜に気づかないんだ、って憤りを感じる」と言ってくださいました。
それを横で聞いていたマネージャーのテキーラ娘が「私はとっくに気づいてます!だから悔しいです!」と地団駄を踏んでいました。
その光景を、私はしっかりと目に焼き付けました。
テリーさんの言葉を今でも思い出すように、数年後まで、この光景が私の支えになることは間違いないからです。
そしていつか、今度こそは
「あの時から、この人達だけは、私に気づいてくれていたのよ!」
とみんなの名前を出すんだ。
「すごいでしょ、あの人たち」って。
そう言えるようになるまでは、私、頑張る。

昨日今日と、珍しく電話がたくさん鳴った。
他愛もない話ができる彼女達も私の支え。宝物。
よく考えたら、ずいぶん多くの人に支えられていました。
何だかすごく嬉しいね。

心がおぼつかない夜に、優しさを確認する。

よく眠れそう。
ありがとう。

明日も温かみのある1日を。

ごきげんよう

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