ハイスクール・オーラバスター
スペシャルCD台本
OVAプロジェクト全購入特典「秘密の鉄拳!スペシャルCD」


《登場人物》
崎谷亮介
水沢諒
里見十九郎
和泉希沙良
七瀬冴子
神原亜衣
斎伽忍


*ミニドラマに兼用して、「留守電応答メッセージ」「めざましボイス」等としても利用可能な内容になっています(そのためCDでは頭出しチャプターが各所に入ります。チャプター位置=▼Cと表記)



▼C・1
◎高陵高校・教室(昼休み)
SE ポカポカ良い天気、ハトの声、窓から校庭の音


諒 「晴れてるねぇ…のどかだねぇ…こんな日は縁側で亮介くんとお茶などすすってると幸せだねぇ(ズズッとお茶を飲む)」
亮介「ここ、学校だけどね」
亜衣「縁側? どこに?」
諒 「きみたち寒いこと言ってたらいけませんよ。心の眼で見るのよハッピーな縁側を」
亜衣「水沢君、そのお茶、崎谷君のなんだけど。それに、勝手に崎谷君のお弁当つまみぐいするのやめてくれる?」
諒 「俺と亮介くんの仲で何をいまさら」
亮介「まあまあ亜衣ちゃん、俺のお茶くらいはさ…」
諒 「ねええ。おっと卵焼きウマイわ、もひとついただき」
亮介「でも食べ物のうらみは怖いよ」
諒 「ごふごふ(咳こむ)」


SE ガラッと教室のドア開けて、足音近づき


冴子(オフ→オン)「諒、ちょっと聞いて!」
諒 「(縁側モードで)おおどうした、婆さんや」
冴子「だーれーが婆さんよ!」
諒 「のどかにお茶すするヒマくらいくださいよう。のほほん、のほほん」
冴子「なにボケッとなごんでるのよ! あら、でもちょっとおいしそう…」
亜衣「あ、冴子さんも食べてね。たくさん作ってあるから」
亮介「おいしいよ。亜衣ちゃんの手作り」
冴子「きゃー、いやーん、亜衣ちゃんのお弁当ってかわいいわ!(小声で)ねえ今度タコさんウィンナーとウサギちゃんリンゴのやりかた教えて。あたし苦手なのよね」
亜衣「(小声)大丈夫、簡単。冴子さんも大変ね、ありがたみのわからない相手だから」
亮介「ふたりで何の内緒話?」
冴子「さあねっ。豪華な三色おにぎり、もらっちゃおっと」
諒 「差別だ」
冴子「(もぐもぐ食べながら)諒、グレてる場合じゃないわよ!」
諒 「おのれが食いながらゆーても説得力ないわ」
冴子「忍様が行方不明なのよ。ずーっと留守番電話のままなの」
諒 「いつものことでしょ」
冴子「いいからあなたからも電話して!」


SE 携帯電話のボタン、ピピッと操作


諒 「教室でケータイは使用禁止」
冴子「やかましいわね。もう繋がっちゃったもの。ほら(と押しつける)」
諒 「出前迅速、問答無用かい…(電話に)もーしもーし」


SE 電話の呼び出し音……ガチャ


▼C・2【留守電1】

忍 「もしもし。斎伽忍の、魅惑の館へようこそ。だが僕は今、留守をしているんだよ。残念だな。あなたの愛の力で、僕を次元の狭間から呼び戻してくれないか。合言葉 は、愛ひとすじ。発信音のあとに、愛ひとすじ、だよ。いいね」


▼C・3
SE ピーッと発信音


諒 「なんっじゃあ、そりゃあああ!」


SE ピッと通話切る


冴子「ね。忍様ったら、お茶目でしょ?」
諒 「あのな冴子、おまえただ単に忍がお茶目だから聞かせたのかコレ」
冴子「それに美しいわ、忍様のお声。うっとり」
諒 「それだけかい…がっくり」
亮介「いったいどういう留守電なんだろう…」
亜衣「崎谷君も電話してみたら?」
亮介「なんだか、怖い気がするんだけど」


SE 電話の呼び出し音……ガチャ


▼C・4【留守電2】

忍 「もしもし。電話をありがとう。待っていたよ。しかし今、事情があって、電話に出ることができない。すまないね。もしよければ発信音のあとにメッセージを残してほしい。この孤独な心を癒すために。頼んだよ」


▼C・5
SE ピーッと発信音


亮介「あ、亮介です。えーとあの、頑張ってください。応援してます」


SE ピッと通話切る


亜衣「水沢君と反応がぜんぜん違うのはどうして?」
諒 「合言葉は愛ひとすじ、に『頑張ってください』と返せる亮介が一番怖いわ」
亮介「ええっ? そうじゃなくて、励ましたくなっちゃう留守電だったよ」
亜衣「内容が違ったってこと?」
諒 「差別だ」
冴子「ってことは他にも忍様のお言葉があるかもしれないのね」
諒 「んな何パターンも録音してるヒマがあったら電話に出やがれですよ」


◎新宿駅(放課後)
SE プラットホームの雑踏
SE 電車通過、発車のメロディなど~FO


十九郎「希沙良、こっちだ」
希沙良「なんだよおまえ、俺より先に待ち合わせ場所に来んなよ! 待たせて悪いって思っちまうだろ俺が!」
亮介「…希沙良って変わった謝り方するよね」
希沙良「ああ!? ナマイキな口きいてっと遊んでやんねーぞ(ヘッドロックをかける)」
亮介「痛たたた希沙良ーっ」
十九郎「(微笑)よくわかってるね、崎谷君」
希沙良「うるせーなぁ。ちゃんと謝りゃいいんだろ…。何やってんだ十九郎」
十九郎「冴子さんに頼まれて、ちょっと電話をね」


SE 公衆電話のプッシュ
SE 電話の呼び出し音……ガチャ


▼C・6【留守電3】

忍 「もしもし。僕だ。すまないが、僕はまだ永い眠りについている。発信音のあとに、優しく起こしてくれないか。優しくだよ。優しくしてくれないと、怒るよ」


▼C・7
SE ピーッと発信音


十九郎「……」
希沙良「(小声)おい、なんか青ざめてねえか十九郎」
亮介「(小声)何かショックなことでもあったのかな」
希沙良「(小声)あ、でも持ち直したみたいだぜ」


▼C・8【目覚まし1】

十九郎「おはようございます。もう、お目覚めになりましたか。あなたの幸せな一日が、この俺の声とともに始まることを祈っています。心をこめて、里見十九郎でした」


▼C・9
SE 電話のフック降りる、テレカが出る


希沙良「十九郎、何だ今のモーニングコール?」
十九郎「よくわからないが、斎伽さんのリクエストだ」
希沙良「ああー? またあの野郎、ふざけやがってんのか。よーし、俺もかけてやる」
亮介「里見さん、疲れてるみたいですけど…大丈夫ですか?」
十九郎「俺なりに頑張って応戦したつもりだけど、あのひとにはかなわないな」
亮介「(小声)…そういうものなんだろうか」


SE 電話の呼び出し音……ガチャ


▼C・10【留守電4】

忍 「もしもし。僕の声が聴きたかったのかい。だが、これは留守番電話だよ。言いたいことは発信音のあとに頼むよ」


▼C・11【目覚まし2】

希沙良「こらーッ! 起きろー!! 起きやがれー!! もうこんな時間なんだよ、いつまでも呼ばしてんじゃねえよ!! 起きたか!? 起きたら返事しろー!! おい、そうか、起きる気がねえんだな、知らねえぞ俺は。じゃあな」


▼C・12
忍 「…もう一度言うが、メッセージは、発信音が鳴ってからだよ」


SE ピーッと発信音


希沙良「(絶句)てめェなぁ…性格悪すぎるぜ、いくらなんでも」
十九郎「さすがは〈空の者〉伽羅王ということかな」
亮介「(小声)…関係あるんだろうか」


SE 大きく電車の通過音~FO


◎忍のマンション(夜)
SE 静寂、足音がフローリングの床を横切る、ブラインドを上げる
SE 電話が鳴る~


忍 「やれやれ。もういいかな」


SE 鳴っている電話~受話器、とる


忍 「もしもし。僕だ。夜も更けたので、本当に眠ることにするよ。楽しい遊びの続きは、 また明日だ。おやすみ。文句は、発信音のあとに」


SE ピーッと発信音


諒(遠くから、テレホンボイス)「忍ーっ! やっぱりおまえ最初っからそこにいたんだろうっ! しーのーぶーっ! 答えろ、この迷惑男ーっ(以下アドリブ)」


SE (諒のセリフ途中で)受話器、置く


忍 「(笑み)たまには平和を楽しむ機会も、僕達には必要ということさ。…おやすみ」


M(ブリッジ~FO)



[textend]
text written by mio wakagi

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●イエロウ・グラシア・エフ・エンディ
美人さんのハッカー。宇宙冒険者の紅一点となればセクシー部門担当のような気がした……のですが話が進むうち、ひきこもり度が高いことが判明。セクシーなヒッキー。(そんな……)


●航宙船メタルバード
全長111メートル。ラダと船長の二人で飛ばしていますが、候補生が来る前のお手入れは誰がやっていたのか。実はお掃除ロボットがいるのではないか。というか本当はロボットを置きたい。ロビタみたいなやつ。でも多分いない。


●沢渡カイト
「保ちが良い」「使い勝手がいい」「叩いても壊れない」そんな若者。地味で頑丈な人。いうなればジャガイモ系キャラ。名前は漢字書きすると「海人」でしょうか……サンズイだらけになる。名は体を表して、船乗り。主人公。


●ジェリイ・ザ・キッド
白靴下の黒猫アニマロイド。笑い上戸。笑い方は「あっはっはっはっは!」。滑舌よさそう。中身はD3と同年代の人。アルカディア号に入ってるトチローのような?(ちょっと違う)


●シュシュ・リンウッド
士官学校教官。カイトの見る限りヒステリーでお気の毒な人のようですが……。案外、レイアードとはイロイロあったかもしれないな……。


●スタンリー・キック・スキップ・キングス
のっぽさん。ナーヴの友人。真面目に生きて貧乏クジな人。こういう損な人、いるよね……。


●ソーラーフリート
太陽系連邦軍。簡単に呼ぶと「宇宙軍」。寝ぼけると「太陽系宇宙軍」と書いてしまう……それはマチガイ。


●ディアナ・ウラーノワ
某所で書いてます『エクサール騎士団 詩編69』に出てくるバレリーナ、ディアナ・シトニコワと同じ人。同じ女優が演じていると思っていただければ。しゃべり方がマイペース……というか自分の答えたいことしか答えない。思考中は返事が遅い。


●デイヴィッド・ダグラス・ドミニオン・フォックス(D3・フォックス)
某所で書いてます『エクサール騎士団 詩編69』に出てくるジャーナリスト、デイヴィッド・ダグラス・フォックス(通称D2・フォックス)の子孫? 同じ俳優。むしろこれは同一人物というべきですか、そのまんまだし……。このオッサンは好きです。自分をオッサンと呼ぶのがなんだか良い。


●トゥエンティ
メイン・コンピュータ二十号。サブが十八号。緊急時に出てくるのが十九号。たまに二十と十八を書き間違えて、慌てて直します。「今オモテにいるのどっちだ?」となる。


●ナーヴ・ストラディバリ・エフ・エンディ
メタルバード=ギターの暗喩(布袋寅泰GUITARHYTHMからの引用)。よって船長のセカンドネームも楽器。コドモたちを預かる船長として、シブいオトナの代表かと当初は思われたが、スマップの人々と同年代で、まあそんな感じ。


●パウダーコーン・キングス
スタンリーの父。執筆も佳境にいたり、モーローと寝て、目が覚めたらパソコンの前にこの名を書いたメモがあったのでございます。無意識下の産物? お笑いキングのギャグは彼らの共用語から日本語に翻訳してございます。


●ベアトリス・クローチェ
八千草薫系のキャラだと思う。森光子じゃなく。


●ラダ・ピー・ブライアン・フォース
地蔵顔のイイ人。老成したキャラですがナーヴより若い。彼らの名前の「ピー」とか「エフ」とか「ズィー」などは要するにPでFでZで、頭文字。「フォース」は「四世」。ラダピーは愛称。ラダっちも愛称。


●リリ・マル
お隣の年上のお姉さん。カイトの文通相手。美人ではないがふくふくとして優しい。故郷のコロニーでいちばん仲良しだった女性。カイトは自分の趣味を「特に美人を好きになるわけじゃない。面食いじゃない」と思っている節がある。しかし「美人の標準=レイアードくらい」と勘違いしているのではないか。


●レイアード・ステッツェン・ズィー・ブレイクスターズ
ビジュアル系の人。ネジの飛んでる人。当初モデルに想定した人がいるんですが……似ない。レイアードは私のキャラのなかでも特に未熟者度が高い。二十歳男子、ここから育つ……はずですが、ヤツの迷惑な性格は変わらないかもしれん。菅原さんの描かれる「火の玉型」の髪型が愛おしくてたまりません。



※初出 2002年8月 (商業誌未発表)

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――最近何してるの? 近況を教えてください。


 わかんない。さっきご飯食べてたことはわかってるけど他のことって今いちわからない。あっそうだあのね、僕のこっちの指、バンドエイド貼ってあるのわかる? 楽譜の紙で切ったらしいんだけど、地味に流血してたらうちの坂本君が「まわりに迷惑だから」とバンドエイドを貼ってくれたのですが、そのシチュエーションにすこしドキドキしました。そういう近況です。


――出身はどこですか?


 日本です。


――それは国籍では?


 あっ海外にいたこともあります。子供のとき。でも日本生まれ。


――和食と洋食どっちが好き?


 和食のほうがヘンな音階を感じます。特にご飯とお味噌汁に。


――ゆるせないことはありますか。


 ありすぎる。特に自分について。自分で買ったものはまだいいとしてもね、人から貰った物をなくしちゃうと自分が許せない。後悔で一晩くらい悶々とします。そうすると次の朝にベッドの下から出てきたりします。


――他人にゆるしてほしいことはありますか。


 才能。
                               
――日常生活で気にかけることは?


 とりあえず服は着よう。つまりね、あんまりくだけた恰好じゃなくていつ突然外出してもいいくらいの服は着ておこう、です。


――最近、泣いたことはありますか。


 ゆうべ泣きました。電話の、留守録の内容を聞く前に消しちゃって。


――尊敬する人は?


 手塚治虫さん。あっこれ僕の師というより友達の影響だ。僕が全般に尊敬するのはね、女の人。どうやっても勝てないから。


――作詞・作曲の悩みを教えてください。


 僕、ヘタだから。いやになる、ほんとに泣きたくなる。いつもうんとがんばってるんだけど誰かに「フン」とか「ケッ」とか言われるかもしれないので……あのね、ここ笑うとこじゃなくて本当に悩んでる。
 これだ! ってのが上から降ってきたときはやっぱり僕天才だなと思うんだけど……なんだろう、自分の手が天才さに追っつかない感じ? ごめんね、何言ってんだかわかんないね。もっと向上したいという話です。


――好きな女性のタイプは?


 タイプって何? 血液型とか? 勇気と誇りのある人は好き。でもこの条件は人類全般にあてはまるよね。そうじゃなくて誰が好き? って訊いてよ。


――今、好きな人は?


 朱音ちゃんと坂本君が好き。高岡君とは昨日けんかしたので除外。おとなげないけど、あのねえ、ほんとにねえ、あのひと俺に対しては随分ねえ……。心の傷が癒えたらまた好きになります。


――悲しいときはどうしますか?


 どうしようもない。


――あなたにとって音楽とは何ですか?


 …………………………音楽は音楽で、それ以外ちょっと言えない。


――あなたのファンをどう思いますか?


 僕、本当のところ「ファン」て言葉を使うのあまり好きじゃない。なんか集合体っぽいから。それってひとりひとりの顔が見えなくなる感じがする。「ファンレター」って言葉もやだ、手紙は手紙でしょ。
 僕たちの音楽を聴いて価値を認めてくれるひとがいることはとても嬉しいです。そういう大事なひとたちにお金を出してもらうのが恥ずかしいような仕事は、僕は絶対にしない。


――いちばん大切にしているものは?


 生命。僕の。とにかく死にたくない。ここは踏んばらなくちゃと思ってる。だって僕の知りあいみんな、僕がうっかり足をふみはずすのを怖がるから。


――最後に訊きます。今、いちばん欲しいものは?


 …………ミルクティー。熱いやつ。そんな感じ。(笑)


――けっこう無欲なんですか?


 ええっ!? そんなこと絶対にないよ!!




※初出 1998年7月(商業誌未発表)

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◎インタビュアー・旭那美里(A) 水無月あお(M)


A 今後、若木さんの作品世界はどんどん広がっていくのだと思いますが、執筆の予定を教えて下さい。

若木 どんどん外の世界で戦っていきたいんです。まるで宮本武蔵の武者修行のようですけど。いろんな流儀の人たちと戦って、自分を強くしていきたい。
 今まで私は、十年くらい、コバルト文庫とスーパーファンタジー文庫という場所で、ライトノベルの、それもちょっと女の子側が多いっていうところでやってきたわけですよね。それは自分の中でもすごく大事な場所なんですが、ひとつの流儀でずっと戦ってるような感じがあって。ひとつの流儀の中でも、今日はちょっと竹刀を持たずに木刀で戦ってみようとか、いろんな戦い方を試してはきたんですけど。
 もっといろんな戦いをして強くなりたい。
 強くなるっていうことは、良い作品が書けることだと思ってるんです。
 だから、作品のためですね。ハイスクール・オーラバスターとかが更に進歩するたるめ、もっといいものを書いていきたいからです。
 作品しか大事じゃないです。
 そうやって私が外で戦いたいと言うと、じゃあ若木さんはコバルト文庫を卒業しちゃうの、ハイスクール・オーラバスター書かなくなっちゃうの、と心配する人もいるんですけど、逆なんですよね。私の場合は、世界は自由に広げたいですけど、それでライトノベルを書かなくなっちゃったら意味ないなと思ってます。だから、大丈夫ですと言ってあげたい。大丈夫って言われてもまだ安心じゃないという人には、じゃあ書くから現物を読んでくれと。
 今後の予定は……何月に何が発売とはまだはっきり言えないんですが、徳間デュアル文庫で始めた『メタルバード』の2巻が、近いうちに出るかなと思います。これは、去年から新しく書きはじめたスペースオペラで、エンターテイメントを意識した作品です。私の既存のシリーズには長く続いているものが多いので、気軽に途中から読みだすのってむずかしいだろうなと思うんです。この作品は、今まで若木作品にふれたことがない人でも、あまり苦労しないで入ってもらいたいなと。そういうポジション付けの新作です。
 今までの作品の続きをどんどん書いていくということだと、今年は『オーラバスター』と『グラスハート』が中心ですね。それと『イズミ幻戦記』を再開したいと思ってます。今、『イズミ幻戦記』はしばらく休んでしまってるんです。諸々事情がありまして、発刊元のスーパーファンタジー文庫そのものがなくなっちゃったりしたので……いろいろ大変ではあるんですが、ちがう場所に移して、また始めるつもりです。この3本が、今年中に進めていきたいシリーズです。
 それと、まだみんなが見たことがないような、若木さんこんな挑戦もするのね~みたいな、ビックリしてもらえることもやりたいな、と。
 「文学メルマ!」でやっていること自体、ビックリなのかもしれませんが。何してるの~? って感じかもしれないけれど(笑)。これからまたもっと、良い意味で驚き続けてもらいたいんで、そういうことをやっていきたいです。

編集長 不滅っていうことに興味がありますか? 滅びない、ということについて。普通の小説や映画というものは、崩壊と再生みたいなところを描くでしょう。喪失と再生とか。でも若木さんのはもっと強くて、滅びないという。『ラッシュ』もそうですね。今度の本は『不滅の王』というタイトルだし。何かものすごい強いコアを欲しているんだなっていう。
 そういう人って珍しいよね(笑)。

若木 ああ、そうですね、本当ですね。不滅は私にとって大きい言葉ですね。気がつかなかった。これは珍しいんでしょうか。
 でも、たしかに絶対不滅なものがあることを信じていますね。それは、全部のものが滅びないわけはないというのは分かっているうえで、何かは崩れていくし何かは無くなっていくけど、絶対不滅なものはある。そう信じてますね。
 『ラッシュ』は、ふだんから私の作品を読んでくださっている方には、一瞬ビックリされるかもしれませんね。どこに行くんだ? って印象かもしれないです。だけど根本が結局そこですよね、最後に何を欲するかというところが。

編集長 今日のインタビュアーの二人は高校生ですが、そういう世代の人達にとって、小説や音楽……つまり表現から受け継ぐものがすごく少ないと思うんですよね。ぼくなんかは70年代のアンダーグランドカルチャーとかロックカルチャーの洗礼を受けて、ストーンズとかね。彼らが兄貴分で彼らから表現のコアみたいなものを教わって、その結果ぼくは作家になったわけです。あの頃は、若い世代のフラストレーションとか閉塞感とか、そういうものを受け取ってくれる表現者達がたくさんいたんだけど、今はそれが少ないような気がします。
 文学の世界でも、文学は滅びると言われて久しいけど、小説で高校生が読んで僕らにとってのロックの代わりになるようなものはすごく少なくでしょう。若木さんの作品は、そんな中で数少ない表現のひとつだとぼくは思います。
 それに『ファイナルファンタジー』や宮崎さんのアニメなんかは、たぶん3百人くらいで作っているわけだけど、いや、もしかしたらもっと多いかもしれないけど。でも若木さんは一人でつくっている。それはやっぱり、すごいことだと思う。今はひどい時代じゃない? アフガニスタンの空爆もひどいし、人間が遺伝子から改変されるという状況になってる。そういうことを、若い子達はみんな知ってるわけですよね。希望というものを見出しにくい時代だと思うんだけど、そんな中で若木さんの作品は数少ない希望のひとつだと思います。そういう立場の若木さんから、バトンを渡す意味で、私についてこい、でもいいしさ。なにか読者へのメッセージはありませんか。もっと苦労しろ、でもいいし(笑)

若木 世界とか人間の状況については、あまり気楽なことは言えないです。絶対だいじょぶだよ~とか。まあ、安心しとけーとか言うと、その場はなごやかになるけど、ウチに帰って3、4時間経つと、いややっぱりちょっと、と思うでしょう。今、だいじょぶだよ、ヘーキヘーキ、そっかー、お茶飲んで楽しいねー、と言い合っても、帰ってからしょんぼり、とかなるじゃないですか。
 そういう意味での、3時間くらいしか有効期限がない言葉っていうのは、言いづらいんですよね。それをあえて言い続けるのも立派な仕事なんでしょうけど……。たとえば大怪我して生きるか死ぬかの瀬戸際に、3時間だけでも麻酔薬が効いたら、すごく助かりますよね。ただ、そういう薬は、常用すると危険じゃないかなと。
 私はやっぱり、自分の小説や自分の言葉で、短い一瞬だけ安心させることとか、簡単にその場だけなぐさめることとかは、あんまり出来ないんです。そうすると読者のみなさんの、「自分はどうしたらいいんだろう」とか「世界はどうなっていくんだろう」っていう不安は、なかなか消えないかもしれない。ひどい時代だなっていう事実は、どっかに、心の中にずっと置かれ続けるんじゃないかと思います。
 そんなふうには思うんだけど、私はきっと、それでも必ず信じているものがあって、だから私の小説を書き続けていくと思うんですよ。
 私が信じているものは絶対消えない、それを絶対書き続けるっていうことだけは、約束出来ると思います。
 ほんとに死ぬまで小説は書くと思うし、死んでも小説は残るし。
 だから、一瞬不安になったり怖いなと思ったりすることもあるかもしれないけれど、私の作品はいつでも絶対ここにあるってことを思い出して読み続けてもらえたら、私はとても嬉しいなと思います。

編集長 うーん、素晴らしい。皆さん、今日はどうもありがとうございました。いいインタビューだったね。

A ありがとうございました~。

M うれしかったです。

若木 こちらこそ、ありがとうございました。

(終わり)


【インタビュー後記】

 ■旭那美里
 めちゃめちゃ緊張してしまいました~。若木先生がいらした時には、もうどうしようかと…。でも、とっても楽しかったです。
 若木先生とお話をして驚いたのは、しゃべりがオーラバの諒ちゃんみたいだったこと。よくとっさに出てくるな、みたいな楽しい言いまわしが。若木先生が書いてるんだから当然なのかもしれませんが、この方が作者様なのね、と実感です。
 先生、これからも楽しみにしてます!

 ■水無月あお
 先生ご自身を前にしても‘この人が小説を書いてるんだ’という実感は湧きづらいのですが、会話をしてみると先生が持っている色々な面を個々に形にあらわしたものがオーラバのキャラであるような気がしました。(私にはインタビューに応じてくださる先生の姿勢、発言がまるで里見十九郎のように見えました・笑)。
 言葉の重さを知っていて深い話が書ける人が先生のような若い方の中にいることを嬉しく思います。本当にお会いできてよかったなと思わせてくださる方でした。

 ■若木未生
 若い読者の人とお会いする機会はときどきあるんですが、こういうふうにインタビ
ューしていただくのは貴重な経験でした。
 せっかく現役の高校生がいらっしゃったので、私からももっとつっこんで質問して
ナマのティーンエイジャーの声をお聞きすればよかったかな、と後から思いました。
でも、短い時間でしたがお話ししているあいだ、お二人の綺麗でクリアな感性が伝わ
ってきました。とても楽しかったです、どうもありがとうございました。


※初出 2002年「文学メルマ!」

◎インタビュアー・旭那美里(A) 水無月あお(M)


A 好きなアニメ映画のベスト3なんて決められますか?

若木 たくさんあるから難しいですね。ガンダムが好きな山川さんのために富野監督シバリで3つあげると、『機動戦士ガンダム2 哀・戦士編』『逆襲のシャア』『伝説巨神イデオン 発動篇』。
 富野作品以外でのベスト3だと、『銀河鉄道999』『マクロスプラス』『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』です。

A コミケに作品をお出しになってますよね。コミケで他の作品のパロディではなくて、『ハイスクール・オーラバスター』とか、あえて若木先生ご自身の作品を書かれていますよね。商業誌じゃなくて同人誌でお出しになる意味は?

若木 商業誌の世界は私にとって、すごく神聖な世界だからだと思うんですよ。商業誌、読者の人に正当なルートでわたるものっていうのは、絶対に素晴らしいものでなければいけない。絶対に。
 それは私の中の聖域、サンクチュアリなんです。
 そうすると、皆さんのところに届く前に、自分の机の上で取捨選択しているものがいろいろあるんです。これはまだその聖域にあげるものじゃない、とか。これは自分なりに良いと思っているけれども、皆さんとの勝負の場所に出すにはふさわしくない方向性のように思う、とか。
 あとコバルト文庫っていう場所の性格もありますから、他の場所ならOKだけど、
コバルト文庫で私がやりたいこととは違う、とか。そういうものが余って。
 で、何か作品を書こうというときに、その手前で、準備の練習、習作っていえばい
いのかな……たとえば『イズミ幻戦記』久しぶりに書くんだけど、ちゃんと書き方を
おぼえているかしら、ウォーミングアップに短いもの1本書いとこう、とか。そんな
ふうに、訓練だと思って書いたものがあって。でも、誰にも見せずに机のひきだしに
しまっておいたら作品が可哀想だったので、じゃあ、それが練習であったり、私自身
がOKでもコバルト文庫にはふさわしくはないなと思ったものは、そういう但し書き
をつけて、この話はこういう意図でこういう風に書いたけど、あえて商業誌には発表
したくないのだ、と説明したうえで、同人誌で出したりしました。
 でも、だんだん練習とかは、あんまりしなくなってきた……というか、しなくても
よくなってきた。また練習したくなるかもしれないですけど。
 それと、同人誌世界の規模が大きくなって、アンダーグラウンドでなく、そこで何
かをやることがオフィシャルな活動であるような印象になってきた、商業誌に近づい
てきたっていう気もします。
 だから、今はあんまり同人誌で作品を出そうとは思ってないんです。しばらくそう
いう試みをしていた時期もあった、ということで。

M 他の作家さんは、先生のライバルだったり、目標だったりしますか?

若木 すごくします、はい。
 素晴らしい作品を見つけると、もう嬉しくって思わず、オマエ素晴らしい~、敵だ
~って、本人に言いに行くんですよ(笑)。
 こんなこと言ってると勘違いされるんですけど、いや、私の言い方も変でよくない
なと思うんですけど、あなた素晴らしいですー、ちくしょうくやしいぞ、オマエなん
か倒してやるぅって言いたくなるんです。若木さんは私をいじめたいのか好きなのか
分からんってなるんですけど、もちろんすごく好きなんで。
 好きな作家がいるってことは、戦うことができるってことなので。私と戦ってくだ
さいって言いに行きたくなるんですね。あとは、自分に自信がないときや、相手のほ
うが本当にずっと格上でどうにもかなわんな、ってときなんかは、憎いなー憎いなー
と小声でブツブツ言ってますね(笑)。しばらく経ってから、ずっとニクかったんで
すって白状しに行くとか。
 好きですね、やっぱり素敵な人達が居てくださるというのは。

(続く)

※初出 2002年「文学メルマ!」