だいぶ長い間、ほったらかしておいた衣類を捨てようと思いたった。

 

 古い物だから襟袖が変色しているものが殆ど。でも、綿のボタンダウンのカジュアルシャツがわりと綺麗だったから、洗濯してもう一度着ようと思った。買ったのは15年くらい前か。つけ置き洗いをしようと金盥に水をはって浸した。透けて見える胸ポケットの生地に何か透けていた。黒いそれは、出してみると真っ黒くて平たい、

 

ちいさな石だった。

 

 10年くらい前、離婚後で、下の娘がまだ「彼女の娘」だった頃、まだ2歳位だった。小さな人達は、決まって皆よく石を拾う。上の娘も、小さな頃はよく石を拾った。

 彼女もしきりに石を拾う。不思議に懸命に拾う。つい昨日動くようになったばかりの手と足で、何度も何度も腰を折りながら、幾つも幾つも拾う。ピョコピョコ、拾う。そして、拾った石を、

 

いちいちこ納品にいらっしゃる、こちらに。

 

僕は大人だから、小石など要らないのだ。でも、その小さな人は真面目な顔で納品しに来る。こちらも真面目に受け取らないと文句を言われる。

 

 そんな風にして僕が彼女から納品された小石が一粒、僕の綿シャツの胸ポケットに入っていた。背景と、その時の様子が頭に現れた。

 

手にとってニヤリとした。

声に出してアハハと笑った。

あーぁ、とため息をついた。

 

朝、皆がそれぞれに出て行った家の中。

親父は思い出に生きている。

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