生年月日 昭和11年3月23日生れ
犬種 シェパード 褐色斑
性別 牡
地域 兵庫縣神戸市
飼主 梅澤秀夫氏

犬

今回協會創立満五周年記念展に神戸支部牡犬組として出陳致しまして、第三席に入賞した事は、悪天候に苦しみながら活躍した我が愛犬ノルマン號に對して、感謝してゐる次第であります。
去んぬる日、神戸支部第一、二豫選を無事通つてより、今度の東京行まで、胃腸を害しまして一時は東京行出来ずとまで思つたのですが、種々手當した甲斐あり、遂に記念大展覧會に出陳可能となつたのであります。
然し最上のコンデイシヨンでなかつたのが何より残念でしたが、全國優秀犬の牡犬組より第三席をとつてくれた時の感激は實に表現出来ない程でした。
何となく、切迫した現今の國際情勢の下に於て、今後益々軍犬を飼育していたなれば一朝事ある時は如何に望ましいものであらうか、而して今回を良き経験として、尚一歩進んで飼育訓練に精進して行く覚悟でをります。
最後に各審査員の公平なる審査を厚く感謝致します。

梅澤秀雄「手當の甲斐ありて」より 昭和12年
生年月日 不明
犬種 シェパード
性別 牡
地域 石川縣
飼主 林信行氏

犬

去月二十一日の晩、支部の高林君が突然訪ねて来て、支部豫選で決定して居つた辻本氏のエアデールが気の毒にも急死したから、補缺として是非出して欲しいとの事でしたが、ボドーは今尾部に湿疹が発生して塗薬すば舐めて嘔吐だ下痢だといふ騒で、實際啼き出したくなつて居る時で、JSV展では未成犬第一席を得たものゝ、五周年記念展などに出陳して第一席を得るなどゝいふ大それた野心も自信もなかつたのです。只三席にでも入れば幸と軽い気持で出したのが思ひがめぬ第一席と発表された瞬間、嬉しさで全身が思はず震へました。
こんなことなら来たいつて云つて居つた妻や娘や坊やを同伴して来ればよかつたと、今でも残念に思つて居ります。
ボドーが此栄冠を得たのは生後二カ月目より選定に、訓練に、絶へず飼育管理に御指導されし千葉縣富塚氏と出陳に関して御後援を受けし高林氏の御蔭と感謝の念で一ぱいです。

林信行「補缺犬の入賞」より 昭和12年
生年月日 不明
犬種 シェパード
性別 牡
地域 東京府
飼主 塚原幸男氏

犬

人間の心臓などと云ふものは頗る便利調法に出来て居るものらしい。
五周年記念展の記事が會報に報ぜられ始めた頃は「これに出られるのはどこの犬だらうね」などとあれこれ有名犬の名を思ひ浮かべて羨やましいと思つて居た。
まさか、アルゴスが出場出来て栄えある若犬第二席を獲得しやうとは想像もしなかつたのだ。
それが案外に豫選を通つて、いよ〃出場となると何とかして一席を獲得しあければと云ふまでに心臓の大飛躍を遂げたのであるが、しかし「寝ては犬!起きては犬」などと悪口を云はれ、時間のない勤めの暇朝は五時から夜は十時後、帰つての運動を一日たりとも缺かしたことのない私だが、訓練はそう簡単に成功するものではなく、とにかく豫選にだけでも出ずにはと訓練所へお願ひしたのが二月初め。
猛烈な訓練で體型が落ち、それを恢復するのに又大馬力をかけ、危ぶみ乍らも支部の皆様や藤村様達の並々ならぬ御心添に依り、各支部一席犬に互し二席となりましたは望外の幸ひ、一席を失したこととは云へ、誠に感激深く一には支部への面目も立て得、益々軍犬熱に燃えて居る次第です。

塚原幸男「入賞の感激」より 昭和12年
生年月日 昭和11年1月20日生れ
犬種 シェパード 黄褐色斑
性別 牝
地域 岡山縣
飼主 井上正之氏

犬

約十ヶ月前から今回の記念展を目標として飼育管理に努力して来ましたが、其の間雨の日風の日愛犬家の誰しも知る一通りの苦心を拂つて参りました。幸に犬は頑健そのものと云つた丈夫な體質で、一度の病気にもかゝらず、成長し之までに四回展覧會に出場しまして、全回共入賞と云ふ成績で進みました。
先の地方豫選にも幸ひ入選する事が出来て晴の岡山代表となりましたが、檜舞臺ではシエパード犬種若犬牝で第二席の栄冠を獲得し、郷土の人に對しても責任の一端を果す事が出来て何より喜んで居ります。
大阪柳氏の犬舎から迎へた生後二か月の仔犬が自分の手でよく此處まで行つてくれたと思ふ時、筆に盡せぬ幸福感を覚えます。
然し未完成の若犬の事ですから、よりりょき牝犬としての完成に一層の拍車をかけ、協會の與へられた絶大な名誉に永久の光を輝かすべく一段の精進を続け度いと思つて居ります。

井上正之「第二席に入賞して」より 昭和12年
生年月日 不明
犬種 シェパード
性別 牡
地域 熊本縣
飼主 今村佐八氏

犬

今回本部五周年展におきまして、思ひがけなく第三席の栄誉を得まして、あまりの喜びに何も申上げる言葉もありません。
之も皆先輩諸賢の一方ならぬ御指導の賜と深く感謝致して居ります。
今後共御先輩の御指導を仰ぎ、尚一層の努力を致すつもりで居ります。

今村佐八「思ひがけなく入賞の栄誉を得」より 昭和12年
生年月日 昭和10年
犬種 ドーベルマン
性別 牡
地域 埼玉縣
飼主 浅田護馬氏

キングダッシュの母、ジョック號は同じ大会にて入賞しております。
http://ameblo.jp/wa500/entry-11949033151.html

出陳者の浅田さんはレディ・パトリシアの飼主でもあるんですけど、ドーベルマンも飼っていたとは知りませんでした。
http://ameblo.jp/wa500/entry-10325217667.html

犬

生れて以来一年有餘半、其間我子の如く、否、或意味に於てより以上の面倒を見て育て上げた犬の、僅か二十ヶ月足らずの未成犬の身で堂々たる古豪を凌いで優勝なした場合に於ける感じ、夫は總ての愛犬家の宜しく想像し得る事と思ふからそうした事は省いて、只一言云ひ度いと思ふ事は、展覧會に性能テストをも加味なしたと云ふ事は軍用犬の展覧會としては確かに一大進歩と云ふべきでせう。
然し其間種々の事情はあつたにもせよ、軍用犬の性能の根幹たる捜索訓練を省いて、枝葉に等しい拒食等をテストすると云ふ事は一寸考へものであると思ふのであります。

ベルギーに居た頃、ドーベルのみを飼育なした時代もあつたが、日本へ帰つてからはシエパードの飼育訓練のみに没頭なし居て、他を顧慮する暇は無かつたのです。
處が三四年前、函館の林氏から牝牡二頭のドーベルの仔犬の恵贈を受けたのが動機となつて、又再びドーベルの飼育を始めたのですが、其のドーベルは體型的には(林氏には一寸済まないが)たいした代物ではないのです。
然し稟性と而して前躯の一部分に非常に宜しい處のある犬なので、之を土臺として一つ宜しいものを作出して見ようと私は決心したのであります。
で、それ以来あれこれと物色したのですが、結局古屋氏のジヨツクが最も自分の牝に對して宜しき配偶犬と思つたので、二回目の発情を待つて早速氏に御願ひしてジヨツクと交配させました。
そして期が来て牝牡二頭の仔犬を分娩しましたが、牝の方はたいした事がないので書生に任せて雄の育成に自分で全力を注いだのです。
然し私は能く所々で見受ける様な温室の草花式な飼育法は絶對に排して、極めて自然に又或點に於ては全くスパルタ式にやつたのであります。
ですから未成犬の身ながら五里や六里は自転車と一緒に走つて、尚ほ餘程綽々たる體躯の持ち主になつたのであり、又之が此度の栄冠を獲得した因となつたのであらうと思ひます。

浅田護馬「優勝して」より 昭和12年
生年月日 昭和10年12月25日生れ
犬種 エアデールテリア
性別 牡
地域 東京府
飼主 渡邊正一郎氏

犬

謹んで帝國軍用犬協會の五周年記念を御祝ひ申します。
記念大展覧會が不幸猛雨にもかゝわらず盛大且つなごやかに終了した事は協會の一會員として非常に喜びを感じて居ります。
のみならず不肖の愛犬が優勝の栄誉を得られました事は深く深く感激にたへない次第であります。
入會して一年足らず、犬を飼育する事二年餘にしてかたじけなくも総裁宮殿下(※久邇宮朝融王のこと)の御前にて、日本全國の名犬百餘頭の中、エアデール・テリア種の牡若犬組第一席の命をを得ました事は一家の名誉、喜びの感激は筆舌つくしあたはざることろであります。
此の感激を永劫に忘れずに益々軍犬報國のモツトーの前に努力せんことを期する次第であります。
終りに帝國軍用犬協會の発展を祈つてやまない次第であります。

渡邊正一郎「第一席の栄誉を得て」より 昭和12年
生年月日 不明
犬種 エアデールテリア
性別 牡
地域 神奈川縣
飼主 相澤晃氏

毎度おなじみ、あいざわ・あきら氏の愛犬です。
http://ameblo.jp/wa500/entry-10884381303.html

犬

大KV創立五周年記念展―と云へば吾々愛犬家が手グスネひいて待ちかまへてゐた檜舞臺だつたが、僕愛育するところのエアデール・テリア成犬牡ブラウン號も神奈川縣支部豫選を悠々パスして愈々五月一日、二日の本部展出場と決まると、さて気が気でない。
本部展へ出陳資格を獲得できただけで名誉この上もないと、自ら慰めて見たものゝ、出場する以上普段會誌で「相澤理論」を連載してゐる手前、落ちたら引つこみがつかないことになるので、流石の僕も少しばかりシヨゲてしまつたが、二日目審査終了後成績発表で成犬牡組一席、全エアでエール總合審査一席となつて、竹田宮賞拝受と決つた時は―、御想像におまかせします。それから某氏からこんな賛辞も頂戴しました。

「相澤理論が事實に依つて證明された譯ですから、この點からも貴重なものです。事實が理論で裏書きされる事は容易であるのみならずケンキヨウフカイの危険がありますが、理論が事實で證明される事はこれはもう動かすべからざるものです。この意味で―」
と、まあこんな端書を貰ひましたが、この某氏、僕のサクラでも何んでもなく、只少しほめ過ぎる悪癖はあるやうです。
とにかく今は過ぎ去つた労苦も忘れ、鎌倉の奥で五月の風にのんびり茛をふかしてゐます。
展覧會當時、僕トリミングもろくにしないでブラウンを出陳したので山出しの姿、仲間のスツキリしたお化粧姿と比較して少し悲しくなりましたが、筋金通つた鎌倉武士―、でも今はすつかりトリミングして日本のナイト。
日本のダンデイとなりました。

相澤晃「栄光燦として」より 昭和12年
生年月日 不明
犬種 ドーベルマン
性別 牡
地域 愛知縣
飼主 古屋千秋氏

帝國ドーベルマン倶楽部、古屋千秋さんの愛犬。
http://ameblo.jp/wa500/entry-11360980963.html

犬
帝國軍用犬協會創立満5周年記念展覧會にて、會長賞受賞。 昭和12年

今回創立満5周年記念全国支部争覇の大展覧會に於て、圖らずも帝國優勝犬の称號を得た事は非常に栄誉と思つて居る次第で有ります。
實を云ふと今回の展覧會に於ては、審査に訓練を加味すると云ふ事なれど、訓練大會は別に開催せられ居り、其の程度が判明せず多分は訓練素質に重點を置くのではなかろうかとは思ひながらも、何んだか気掛りになるから四月上旬より約一ケ月位東京の某訓練所に入所させ、泥縄式に少しでも訓練の豫習でもさせて置かうと思ひ居りし所、四月上旬頃より犬が急性の肺炎に罹り、今回の展覧會には出陳は不可能だとは思ひながらも毎日獣医師に来診を頼み置き、時々帰宅しては病犬を見ると云ふ有様にて、度々吸入器を掛けたり、湿布などしたり、餘程呼吸困難の様子に見受けられ、若犬なれば丁度犬瘟熱(ジステンパー)から肺炎になつたと云ふ所。
會期五日前より幾分快方に向く様に見受けられ、食欲もパン位なれば少しは喰ふ様になり、先づ此の分なれば生命は大丈夫と思ひながらも期日の段々と切迫するのには気が揉める事、何んだか毛艶もなくなり、平素の元気もなく迚も入賞などゝ云ふ事は問題にもせず、兎に角犬を連れて展覧會見学位の気分にて上京した。

併し今日まで愚犬ジヨツク號は昭和八年三月の第一回展より出陳し、昨年大阪甲子園に於ける本部展に審査を受ける事が出来なかつた事以外には引き続き出陳し居り、賞歴は第二席二回、第一席四回、今日までの展覧會には多少自信を以て出陳したけれど、今回の大展覧會には自信など微塵もなく、病後の犬が意外にも第一席となり其上自分の犬舎にて生れしものが帝國優勝犬の称號を獲得した事(※浅田護馬氏のキングダッシュ・オブ・アスターフィールズ號のこと)は幸運で有つたと思ふより外にない。

古屋千秋「昭和十二年度帝國優勝犬称號を獲得して」より 昭和12年