10月16日(日)は、築地ブディストホールさんにて、スターズ★シアター舞台『雨音』の大千穐楽公演を観劇。

 



 【始まりは終わり、終わりは始まり…】

 仏教のブディストホールらしく、阿吽の映像から始まる物語。

 どこでも大千穐楽の雰囲気は特別なものがありますが、スターズさんの劇場版では、お祭りのように賑やかな空気に包まれます。

 生き物である舞台、先日観劇したときよりも、勢いが増していました。

 山本恒彦和国大統領役の渡辺恋さんやマキシマス・イヴァン役の原口勝さんが、イタズラ心たっぷりに、自由奔放に飛ばしまくります。

 



 恋さんの「レインボーブリッジ」というアドリブに、メイ・アーク役の田口千尋さんが「封鎖します!」と咄嗟に打ち返すくだりや勝さんの突然のミュージカルに大爆笑です。
 千尋さん、冷静に対応するところは、さすがです。
 ステージ上では、エリサ・J・アレキサンドラ役の春花きららさんが、笑いをこらえるのに必死です。

 

 舞台の第一幕ではコミカルな要素もあるのですが、休憩後の第二幕ではピリピリしたシリアスな展開に。

 2度目の観劇ということで、今回はセリフを発しているメインのキャスト以外にも着目。

 朝比奈・D・涼役の鳥居きららさんが、ちょいちょい色々な動きを入れており、観ていて、サイコーに面白いです。
 前回の感想にも書きましたが、鳥居さん、スターズで完全にキャラクターの立ち位置を確立されましたね。

 

(“Wきらら”さん。鳥居きららさんと春花きららさん)


 2060年の世界では、人類は産まれたときに頭にチップを埋め込まれており、チップを通して通信が出来るのですが、関口裕也さん演じる亜嵐・M・アークだけ、左に埋め込まれているのは、何らかの意図が込められているのかな?
 こんど演出の勝さんに聴いてみたいです。

 また、仲田大輔さん演じる抵抗組織メンバーの武藤・ジョン・義人は、死に際にある二文字の言葉を声に出さずに呟いています。
 これまでBARスターズ公演を観て来られている方には分かる、あの名前です。

 



 殺陣アクションが抜群に巧い紫水杏奈さん。抵抗組織のリーダー新城大河(片山知彦さん)を置いて去って行くときの希依の涙の表情に、心動かされます。

 抵抗組織メンバーの必殺技が、毎回、楽しみでしたが、レジスタンスのキメポーズ、格好良かったです。
 大千穐楽では、客席から拍手が湧き起こり、ノリノリでしたね。

 前回の感想には書きませんでしたが、ジュダの幹部マキシマス・イヴァンを演じる原口勝さんの鋭い瞳力にゾクッときます。

 ジュダの幹部ニイナ・メイソン役の青木ゆみかさんは、スタイル良く雰囲気もあり、カッコイイです。

 五月・K・光役の紫音さんの成長力には、毎公演、驚かされるものがあります。
 自信がついたのでしょう。役者としての貫禄が出て来ましたね。

 



 田口千尋さん演じるメイ・アークが、ジョージ・J・アレキサンドラ(正木慎也さん)を看取るときの穏やかな表情が胸を打ちます。
 今回は大人な雰囲気の千尋さん。重い役どころですが、そんな中でも千尋さんが、とってもチャーミングなのです。
 戦闘シーンのアクションも、力強かったです。

 亜嵐・M・アーク役の関口裕也さん。本編でも泣かせますが、ダブルカーテンコールでの挨拶に、もらい泣きです。
 活き活きとしたお芝居が抜群に素晴らしかったです。4日間、裕也さんの舞台でした。

 



 4日間、舞台のお手伝いに来られていた沼瞭那さん。次は瞭那さんが演じる番だね。アフターデイズでのお芝居、楽しみにしているね♪

 エリサ・J・アレキサンドリア役の春花きららさん。クローンと本人とのお芝居の切り換えが、表情や雰囲気からきっちりと分けられており、巧かったです。とっても可愛らしい方です。

 都市部に立つ原発に、「まるで国全体が大きな爆弾みたい」と吐露するエリサの言葉が深いです。

 劇中の世界情勢が、舞台に映写された地図で説明されるのは、なかなか分かりやすい工夫でした。
 オルメカはアメリカ、ロマノフはロシア、庸国は中国、和国は日本…と、名前は違えど実在の国家がモデルになっています。
 世界を裏で支配するジュダの総帥・ジョージが、庸国のワン・ジェン(春野恵さん)に、「領海水域を広げて油田の利権を持って行け」と指示するシーンに、おおっ!と唸ってしまいました。

 今回は、前衛的で実験的な要素もあったかもしれませんが、全体的に投影映像の解像度があがると、更に作品が良くなると想います。

 


 【アダムとイブが禁断の果実を食べてから数千年。人が人を産み、その子がまた子を産む。人が人を殺し、その子がまた子を殺す。星の数ほど生まれては消えて行く。脈々と受け継がれてきた大罪。それは戦いの歴史なのか?
 その歴史は永遠に続くのだろうか?
 何時の日か解放される日は来るのだろうか?
 人はノアの方舟に乗れた者だけが生き残るのか。それは宿命なのか、運命なのか?
 それは神のみぞ知る。人知を超えた行いに人間ごときがどう理解しえるのだろうか?
 野望という荒波で世界を洗い流したらどうなるのだろうか?
 大いなる富に恵まれ、大いなる幸福に包まれるのだろうか?
 もしかしたら何も無く、無に帰ってしまうのではないだろうか…】

 前作の『果てしない海』のラストは、“理想郷”。
 本作の『雨音』では、“希望”が残ります。

 物語は、10月28日(金)からBARスターズさんにて上演される『雨音アフターデイズ』に続きます。

 キャスト陣の皆さん、無事の完走、お疲れさまでした!

(りょう)