週刊ダイヤモンド2009年4月18日号には“日本の「発明力」”と題した特集があった。その特集ではエ藤ー郎国際特許事務所が開発したYKS手法によってYK値の高い登録特許のランキングが掲載されている(33頁)。

YKS手法とは特許の価値評価手法の一つであり、ある税理士法人のホームページに乗っている記事(www.hirakawa-tax.co.jp/expert/kudopatent.html )によると、特許の独占排他力を直接的に測定することを主眼としているそうである。このためにYKS手法では、特許の審査経過情報を知ることができる閲覧請求や、特許権を無効にするために請求される無効審判などの第三者(競合他社)によるアクションを、そのアクションを起こすために投じるコストの比で計算しているそうである。

週刊ダイヤモンド2009年4月18日号の特集では、特許第2662538号の「生海苔の異物分離除去装置」が、YK値として720.8を有するとして第5位の発明となっていた。なお、第1位は、特許第2751963号の「窒化インジウムガリウム半導体の成長方法」でYK値が981.1である。
特許第2662538号の「生海苔の異物分離除去装置」については、知的財産高等裁判所の平成20年7月14日の判決がある。その判決の事案の概要には、
平成10年 5月28日:特許第2662538号の請求項1と2の侵害について訴訟提起。
平成12年 3月23日:原告勝訴判決、その後、確定。
平成15年 6月16日:請求項1について無効審判請求。
平成16年 4月 6日:請求不成立。
平成17年 2月28日:審決取消。
平成17年 4月26日:請求項2について無効審判請求。
平成17年 5月12日:請求項1について無効審決。その後、確定。
平成18年 7月19日:請求項2についても無効審決。その後、確定。
があったことが書かれている。つまり、特許第2662538号について、請求項1と2に無効審判が請求され、請求項1と2は無効になったということである。特許電子図書館 で経過情報と審決公報DBを見ると、
[無効審判1] 無効2000-035411(請求項1と2に対する無効審判)は請求不成立。
[無効審判2] 無効2000-035675(請求項1と2に対する無効審判)は請求不成立。
[無効審判3] 無効2002-035475は審判請求取下。
[無効審判4] 無効2003-035052は審判請求取下。
[無効審判5] 無効2003-035204(請求項1と2に対する無効審判)は請求不成立。
[無効審判6] 無効2003-035247(請求項1に対する無効審判)は請求成立。
[無効審判7] 無効2005-080132(請求項2に対する無効審判)も請求成立。
のように無効審判が7回請求され、やはり、請求項1と2に無効審判が請求され、請求項1と2は無効となっていることがわかる。したがって、請求項1と請求項2に対して請求された無効審判1、無効審判2、無効審判5、無効審判6、無効審判7のコストは0になり、YK値の増大には寄与しないはずではないだろうか。

また、無効審判3と無効審判4は、請求項1と2以外の請求項を無効とすることを請求しているのかもしないが、取り下げられているので、一事不再理の効力も発生せず、特許の独占排他力を何ら示していないので、YK値も0になるのではないだろうか。

したがって、特許第2662538号について無効審判から得られるYK値は0となるべきで、無効審判の請求されていない特許は山ほどあり、なぜ、特許第2662538号のYK値が720.8となり、第5位の発明となるのか理解できない。もしかすると、無効になっていない請求項があるので、その請求項に無効審判1から無効審判7のコストが加算されたのかもしれないが、そのような計算は誤りであろう。

また、エ藤ー郎氏が出願している特開2009-003727「特許力算出装置及び特許力算出装置の動作方法」(www.kudopatent.com/PDF/JPA_2009003727.pdf )によると、YK値は、独立行政法人工業所有権情報・研修館が提供している整理標準化データ をプログラムに読ませて計算しているように思われるのだが、そのプログラムにバグがあるのではないだろうか?
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